DNA

さっき、うちの職場に田中さん（仮名）が始めて来た。

話を始めるなり

「うちの両親も昔、ひろ造さんにお世話になって」

「へっ？」

「ここでですか？」

「いえ、昔の職場でですよ」

「・・・・」

僕にはその田中さんが全然思い浮かばなかった

ましてや田中なんて苗字は世の中に溢れている

それに僕が前の職場に居たのは２０年近く前だ

話をはぐらかして僕は別の仕事に移った

ふたたび田中さんとの話になり田中さんの顔をふと見た

僕は他人と話をする時、相手の顔をよく見ない

「あっ！」

「田中のじぃさんだ」

そこに居たのはまぎれもなく昔、僕の関わった田中のじぃさんだった。

僕にはそこに居る始めて会った田中さんの顔を見て

田中さんのご両親の記憶が鮮明によみがえった

「確か、お母様の出身は神奈川の逗子でお父様は兵隊さんの時憲兵だったんですよね」

「よくご存知ですね」

と、田中さんは驚いた。

ご両親共とっくに亡くなられたそうだが

僕には昔会った田中のじぃさんが現在の息子さんとダブった

僕は田中さんにＤＮＡを感じた。

なんじゃ