大晦日の晩に実家に帰省する
実家の集落は大阪から徳島経由の高速バスの終点
バスの乗客は途中で皆降りてしまって終点で降りるはいつも僕一人
徳島から普通の路線バスでも高知からの路線バスもここが終点
おまけに汽車の駅も終着駅、
朝、東京駅を発って深夜にたどり着くのは最果ての、どん詰りだ
うら寂しいバス停は遠浅の砂浜に面した国道沿いにあり
たまに野宿の遍路さんが寝ている
最終バスの着く時間はヒューヒューと頬に海風が吹き寄せ
真っ暗な海からザザザザと潮騒の音がする
枯れ木の目立つ防風林にネギと芋だけ植わった、いかにも土地のやせた畑
昔は冬になると遠くの沖合に燃えるような漁火が見えたが
今ではほんのポツリポツリと侘びしい灯りが見える
海は闇夜に溶け込んで引きずり込まれそうな気がする
そして、この辺りからいつも背筋がぞっとするんだ
坂を上った太平洋を見渡す観光スポットに子供を抱いた観音像があって
素晴らしい景観と美しい観音像に見とれる旅人がいる
実はこの観音様はこの海に身を投げた若い魂を弔う像なんだ
国道沿いのわきに数体のお地蔵さんがそっと佇んでいて
四国88か所を巡る途中行き倒れたお遍路さんを供養している
(怖いな~、嫌やな~、まるで八墓村やんけ)とか思いながら
真っ暗な小さな川沿いの道を実家に向かう
この川は通称‘かめとり川,と言って
小さい頃、地元の年寄り連中が散々川沿いで‘たぬき,に騙された話を子供たちに話した
夕暮れに子供たち数人で遊んでいるといつの間にか子供が一人増えていて
そしていつの間にやら消えている
この川にはもののけがいる、ひとりで遊んでいる子に憑りつくんだ
(わし何かに憑りつかれたんやろな、)
どこにでもありそうな、そう言った類の話しだった
昔でさへ怖かったのに過疎地で人のいなくなった今
(たぬき、化けて出てこんやろか)と、足取り重く家路につく
続く
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