HIROZOU

おっさんの夜明け

昔ばなし

2018-11-27 11:40:48 | 妄想

海から冷たい波風がビュービューと岩場に吹き寄せる

ガタガタと震えながら玉菊は対岸の港の灯りを恨めしく睨み付けた

もう3日以上食べ物も口にしていない

それに自分以外の人間は誰もいない

ただ目の前は陸地を隔てる海がある

雨風をしのぐような場所も無い小さな島に置き去りにされて

玉菊はひたすら今しも狂いだしそうな憎しみと絶望感に苛まれていた

江戸時代、対岸の小さな港町は大阪と土佐を結ぶ樽廻船が出ていて

この港を出て浪速の町で行商する商人も多く行き来していた

そんな商人の中に魚を扱う淡路屋がいた

淡路屋は浪速の町で一旗揚げて意気揚々と故郷の港町に錦を飾ろうと

色街で身請けした玉菊と言う名の遊女を女房にして玉菊を伴って船に乗った

船が浪速の港を出て幾日か経った頃

淡路屋は故郷の港町の掟を思い出した

この町に住む者はこの町以外の他所の土地から嫁を迎えてはいけない

淡路屋は船が港に近付くにつれ不安になって一計を案じた

港の入り口に葛島と言う無人の島があって

島がこの港を天然の防波堤のように荒波を防いでいた

葛島から港の岸までは大人の男だと泳いで渡れる距離だけれど

泳ぎを知らない女の身だととても泳ぎ切ることはできない

そこで淡路屋は船をその島に着けてもらい

「すぐ迎えに来るから」と玉菊を島に置き去りにした

置き去りにされたことに気づいた玉菊だがどうしようも出来ない

食べ物も無く磯に降りて海藻や貝を拾って口にした

しだいに着物は乱れ髪は解れ体は薄汚れ

何日か経つと乞食か狂人のように見えて来て

とうとう終いには島に近付く漁船の漁師に島の岩に立つ玉菊は幽霊に見えた

葛島に幽霊が出ると言う噂が漁村に流れ

玉菊が泣けど叫べども船は近付いてこなかった

何年かたってそんな噂も消え玉菊の姿は島に見かけなくなった

そしてある嵐の晩

港の近くの浜辺に玉菊が大蛇の姿となって現れたそうな


最近、テレビがつまらんからユーチューブでまんが日本昔話ばかり見ていたから

故郷の昔ばなしを私がアレンジしました

暇やな

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