小高い丘の上に建つ庚申様は霊験あらたかで、地元の人々にも信仰されている。
その昔近くに住む小学校に上がる前の子供が、皿尾の庚申様の近くで遊んでいたとこのこと。庚申様の前で下駄の鼻緒が切れてしまったので手拭いを出して鼻緒をすげ変えようとしたがしゃがむのが面倒なので、庚申様の上に下駄をおいて鼻緒をすげかえた。
夕方になって仲間と別れて家に帰り、家の上りはなから座敷に上がろうとすると、急に腰が抜けてしまった。祖母が「どうしたんだ」と駆け寄って「どこかでいたずらしてケガでもしたんか」としつこく聞かれた。
そこで庚申様の庭で遊び鼻緒が切れたので、すげ変えたことを話すと、祖母はどこですげ変えたのかと聞くので、仕方なく庚申様の上に下駄をおいて変えたことを話すと、「この馬鹿、庚申様が怒ったんだ」というと動けない子をおぶさってすぐに庚申様のもとへ行き、「ご勘弁ください」と祈った。すると痛みが消えて歩けるようになったという。
また別の言い伝えによれば、その昔「子隠し」の話が信じられている頃、よく子供がいなくなった。近所中が手分けして探し出すと、庚申様の前でうずくまっていたという。
今でも鬱蒼と茂る藪の中に建つ庚申様は人々のの暮らしを小高い丘の上から見ているようで、今日でも霊験あらたかのようだ。