学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

『殴り合う貴族たち』を読む

2016-10-29 21:17:07 | 読書感想
10月も末。朝と夜の寒暖差が大きくて、体調の管理が難しい時期です。今日も日中は少し汗ばむくらいの陽気でしたが、日が落ちると案の定冷える冷える。寒さに弱い私には、つらい季節の到来です(笑)

今日の午後は自宅でゆっくりと本を読んで過ごしました。読んでいた本のタイトルは『殴り合う貴族たち 平安朝裏源氏物語』(繁田信一著 柏書房 2005年)です。

殴り合うといえば喧嘩ですね。私の子供の頃は…と思い返しても、あまり喧嘩をしたという覚えはありません。どちらかというと、学校のクラスで喧嘩が起きても、それをぼんやりと眺めていることが多かったかも。ましてや、社会人になるとなおさら喧嘩はいたしません。私の場合、わざわざ殴り合いまでしてエネルギーを浪費するのはもったいない、と思っているので、そうそう感情的にはならないのです。それ以外にも喧嘩をしたときのデメリットのほうが大きいですからねえ。

ところが、平安時代の貴族は結構殴り合いをしていたらしい(笑)私の、というより世間一般のイメージとして、平安時代の貴族は牛車でのんびり揺られて、好きな女性の元へ通って、たまに歌を詠んでみたりして、おっとりと暮らしている、というものではないでしょうか。こうしたイメージというのは、著書でも触れられていますが、この時代の文学作品から受けるもの。『源氏物語』に暴れまわる貴族は出てきませんよね。少なからず、そういうイメージを覆してくれるのが、この著書です。

著書は、右大臣藤原実資の日記『小右記』を中心にひもとき、どれだけ貴族が暴れていたのかを紹介しているのですが、まあ貴族の血の気の多いこと。殴り合いの喧嘩はするわ、私刑(リンチ)はあるわ、果ては喧嘩の相手の首を持ち去るわで…暴れ放題。さらに女性も負けずに、取っ組み合う。なかには三条天皇に殴りかかった女性(ただし怨霊に取り憑かれていたとされる)までいます。人間の有り余るエネルギーみたいなものを感じますねえ…。現在の日本人なんて、彼らから比べれば大人しいものなのかもしれません。でも、そんな彼らが人間臭いと思うのは、自分は若い頃にさんざん暴れまわったのに、自分の子供が同じことをやるとひどく落ち込む貴族もいること。そんな貴族たちをどうも憎めません。

平安時代の貴族たちや天皇の一族の名前がたくさん登場してきて、なかなか覚えにくいところもありますが、平安時代のまた別な一面を見ることのできる本でした。