今年の春、森美術館で開催されていた「新・北斎展」を見てきました。作品資料がずらりと並び、とても見応えのある展覧会で、特に《弘法大師修法図》の大画面は圧巻。北斎が近代まで生きたら、どんな絵を描いたんだろう、と想像したくなりました。展覧会を立ち上げて下さった美術館の皆様に感謝です。さて、北斎展を見ていたとき、こんなお客様の会話を耳にしました。それは「浮世絵は北斎が全工程を手がけている」、「浮世絵は手で描いたもの」、(西洋版画に影響受けた作品を見て)「これは北斎の浮世絵ではない」などです。実は浮世絵版画は分業制で、北斎は絵師の役割を担い、彫師、摺師は別です。そして北斎は西洋版画の特徴を取り入れながら、新しい浮世絵に挑戦していたこと。作品の基本的なところを押さえながら、深いところまで掘り下げてお客様に楽しんでいただく。展覧会に関わる私にとっても永遠の課題です。私自身がお客様の会話や反応から学ぶべきことがたくさんあると感じました。