学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

柳宗悦著『時計のない暮し」を読む

2009-06-18 16:35:54 | 読書感想
私たちは「時間」というものを、絶えず意識しながら生きています。何時までに出社すべし、あるいは何時までにここで待ち合わせなど、「時間」を決めることで、秩序ある毎日を送っている。その「時間」を知るために、時計はなくてはならないものです。では、もし時計をなくしてしまったら?

思想家で「民藝」の発見者、柳宗悦の随筆に『時計のない暮し』があります。時計が「合理的な暮し」を営むためには必要であると認めながら、あまりこだわりすぎて「時計の奴隷になるのは馬鹿らしい」と述べ、時間にしばられない寒山拾得のような生活は参考になると述べています。

本著がいつ頃書かれたのかは明記されていませんが、病で薬が云々の話、また目が悪くなったとの文章が見られることから、柳の晩年なのでしょう。今日、「スローライフ」なる言葉がさかんに取り上げられていますが、何気ない随筆のなかに柳の先見性が感じられます。日々生活するうえで、時計はなくてはならないものですが、上手に付き合うことが豊かな暮しをする1つの手段となるのかもしれません。


○参考文献『柳宗悦随筆集』岩波文庫 水尾比呂志編 1996年

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