日本漁船の放射能検査に係る旧厚生省の資料は、これまで、「無い」とされてきた。
それが、9月19日、公表された。
60年前、ビキニ環礁付近(北大西洋)で操業していたマグロ漁船「第五福竜丸」が、米国の核実験による死の灰を浴びた。当時、同じ海域で操業していた日本の漁船も多くが被爆していた。しかし、「第五福竜丸」以外の被爆調査はいっさい秘匿され、何も無かったことにされていたのだ。
9月20日付け東京新聞によれば、当時、
「国や自治体が検査を実施した延べ556隻(実数473隻)のうち、
魚の廃棄基準だった毎分100カウント以上の放射能が
乗組員から検出された船は延べ12隻(実数10隻)あり、
最も高かった人は同988カウントだった」
表面的な被曝量は「健康被害が生じるレベルを下回っている」としても、内部被曝の実態を詳しく調査していれば、おそらく大きな社会問題になっていたはずだ。
この資料を情報公開法によって開示させたのは、山下正寿・太平洋核被災支援センター事務局長/元高校教師(高知県在住)だ。
氏には、
<「ビキニ事件」から見た「福島原発被災」>
という論文がある。ビキニ水爆実験の被害が、日本よりも、米国のほうで深刻だった、ということを明かしている。
米国政府機関の報告書を引用した上で、
日本の土地に被曝をもたらした死の灰の5倍もの量が、ハワイや西海岸など米国本土に降りそそいでいた。
という事実を発掘した。
2013年、「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙が、米国の被曝実態について初めて大がかりな調査を行った。「Waste Lands」(「荒地-米国の忘れられた核の遺産」)がそれだ。
同紙は、米国原子力委員会や米国疾病予防管理センターなど、政府機関文書を収集し、独自に分析した結果、放射性物質が残存する全米の「核汚染地域マップ」をホームページに載せた。
このマップは、除染が完了した地域や除染中の地域だけでなく、除染の可能性があるのに何の措置もされていない地域の放射線量などを、政府が定めた基準に照らし合わせて示した。地図上のマークをクリックすると、その住所、歴史的背景に加え、現在の所有者が明示され、地域住民や読者と双方向で情報を共有できる設計になっている。
<例>ニューヨーク市マンハッタン西20丁目500番地・・・・第二次世界大戦中、マンハッタン計画で最初の核爆弾を製造するため、136トンの製品ウランを保管していた倉庫があった。その場所は今、「数十のオフィスやアートギャラリーとして利用されている。所有者の一人だとしながらも名前を明かしてくれなかったある女性は、過去の汚染については何も知らなかったと述べ、コメントを拒否した」【2013年10月31日付け日本版同紙】。
日本でも、原子炉から出た放射性廃棄物は、青森県六ヶ所村、茨城県東海村のほか、広範に点在して保管されている。
しかし、これらの保管情報や、その安全性については、ほとんど報じられていない。
<例>東芝は、1960年5月、住宅地が密集する浮島地区に原子炉を建設していて、その原子炉は現在、廃止措置中とある。核燃料は搬出済みだが、「廃棄物等」はいまだ保管中なのだ。【川崎市作成の資料】
このほかにも、民間企業や大学の研究核施設から出た「廃棄物等」の保管情報が、文科省や多くの自治体で公表されている。
しかし、その全体を鳥瞰できる「地図」はない。
核の保管状況は、日米ともに、まだ深い闇の中にある。
□岩瀬達哉「全体像の見えない「核汚染」の実態はいまも深い闇の中だ ~ジャーナリストの目 第222回~」(「週刊現代」2014年10月11日号)
↓クリック、プリーズ。↓
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それが、9月19日、公表された。
60年前、ビキニ環礁付近(北大西洋)で操業していたマグロ漁船「第五福竜丸」が、米国の核実験による死の灰を浴びた。当時、同じ海域で操業していた日本の漁船も多くが被爆していた。しかし、「第五福竜丸」以外の被爆調査はいっさい秘匿され、何も無かったことにされていたのだ。
9月20日付け東京新聞によれば、当時、
「国や自治体が検査を実施した延べ556隻(実数473隻)のうち、
魚の廃棄基準だった毎分100カウント以上の放射能が
乗組員から検出された船は延べ12隻(実数10隻)あり、
最も高かった人は同988カウントだった」
表面的な被曝量は「健康被害が生じるレベルを下回っている」としても、内部被曝の実態を詳しく調査していれば、おそらく大きな社会問題になっていたはずだ。
この資料を情報公開法によって開示させたのは、山下正寿・太平洋核被災支援センター事務局長/元高校教師(高知県在住)だ。
氏には、
<「ビキニ事件」から見た「福島原発被災」>
という論文がある。ビキニ水爆実験の被害が、日本よりも、米国のほうで深刻だった、ということを明かしている。
米国政府機関の報告書を引用した上で、
日本の土地に被曝をもたらした死の灰の5倍もの量が、ハワイや西海岸など米国本土に降りそそいでいた。
という事実を発掘した。
2013年、「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙が、米国の被曝実態について初めて大がかりな調査を行った。「Waste Lands」(「荒地-米国の忘れられた核の遺産」)がそれだ。
同紙は、米国原子力委員会や米国疾病予防管理センターなど、政府機関文書を収集し、独自に分析した結果、放射性物質が残存する全米の「核汚染地域マップ」をホームページに載せた。
このマップは、除染が完了した地域や除染中の地域だけでなく、除染の可能性があるのに何の措置もされていない地域の放射線量などを、政府が定めた基準に照らし合わせて示した。地図上のマークをクリックすると、その住所、歴史的背景に加え、現在の所有者が明示され、地域住民や読者と双方向で情報を共有できる設計になっている。
<例>ニューヨーク市マンハッタン西20丁目500番地・・・・第二次世界大戦中、マンハッタン計画で最初の核爆弾を製造するため、136トンの製品ウランを保管していた倉庫があった。その場所は今、「数十のオフィスやアートギャラリーとして利用されている。所有者の一人だとしながらも名前を明かしてくれなかったある女性は、過去の汚染については何も知らなかったと述べ、コメントを拒否した」【2013年10月31日付け日本版同紙】。
日本でも、原子炉から出た放射性廃棄物は、青森県六ヶ所村、茨城県東海村のほか、広範に点在して保管されている。
しかし、これらの保管情報や、その安全性については、ほとんど報じられていない。
<例>東芝は、1960年5月、住宅地が密集する浮島地区に原子炉を建設していて、その原子炉は現在、廃止措置中とある。核燃料は搬出済みだが、「廃棄物等」はいまだ保管中なのだ。【川崎市作成の資料】
このほかにも、民間企業や大学の研究核施設から出た「廃棄物等」の保管情報が、文科省や多くの自治体で公表されている。
しかし、その全体を鳥瞰できる「地図」はない。
核の保管状況は、日米ともに、まだ深い闇の中にある。
□岩瀬達哉「全体像の見えない「核汚染」の実態はいまも深い闇の中だ ~ジャーナリストの目 第222回~」(「週刊現代」2014年10月11日号)
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