エルネスト・ゲバラは1928年アルゼンチンに生まれ、1967年ボリビアで政府軍と交戦中に負傷して俘虜となり、翌日射殺された。享年39歳。「チェ」は愛称である。
没後33年、世界的に新しいゲバラ・ブームだそうで、本書の復刊もその余波だろう(底本は1974年刊の文春文庫である)。
ゲバラが銃をとって闘った土地はキューバ、コンゴ、ボリビアである。いずれもゲバラにとっては外国だ。そして、志はキューバでは成就したが、他の二か国では挫折している。
キューバにはカストロがいた。卓越した政治感覚の持ち主で、ゲリラ戦では政治的効果を計算して攻撃目標を選択し、国民に与える効果をねらって米国のジャーナリズムさえ利用した。これらにゲバラは当初異論を唱え、成果を見て後、自説を撤回している。古来戦さと政治は一体なのだが、政治的リアリスムはゲバラと縁が薄かったらしい。そして、バチスタ独裁政権下で人権無視と餓えに苦しむ農民は、カストロたちの反乱を支持した。
他方、ゲバラが主役となったコンゴ、ボリビアでは、本書を読むかぎり、ゲリラを広く支持する農民(あるいは他の人民)の姿が見えてこない。本書のコンゴ時代を描いた補章に、ゲバラは失敗した理由を考えた、と書かれているが、考えた内容は書かれていない。言わずもがなということか。
とはいえ、人間的な魅力にみちた人だったらしい。質素、勤勉、献身的で、率先して困難を引き受けた。キューバで権力を得て後も、公用車を私用に使わず、贈り物は自宅に持ち帰らず、要するに自己に厳しくて、ちっともラテン的でなかった。非常な読書家で、パブル・ネルーダを愛し、文才があった。三好徹は、その「澄んだ目」を繰り返し語るが、ゲバラとは政治的意見の異なる者にも三好の思い入れは十分に伝わってくる。
□三好徹『チェ・ゲバラ伝』(原書房、2001)
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没後33年、世界的に新しいゲバラ・ブームだそうで、本書の復刊もその余波だろう(底本は1974年刊の文春文庫である)。
ゲバラが銃をとって闘った土地はキューバ、コンゴ、ボリビアである。いずれもゲバラにとっては外国だ。そして、志はキューバでは成就したが、他の二か国では挫折している。
キューバにはカストロがいた。卓越した政治感覚の持ち主で、ゲリラ戦では政治的効果を計算して攻撃目標を選択し、国民に与える効果をねらって米国のジャーナリズムさえ利用した。これらにゲバラは当初異論を唱え、成果を見て後、自説を撤回している。古来戦さと政治は一体なのだが、政治的リアリスムはゲバラと縁が薄かったらしい。そして、バチスタ独裁政権下で人権無視と餓えに苦しむ農民は、カストロたちの反乱を支持した。
他方、ゲバラが主役となったコンゴ、ボリビアでは、本書を読むかぎり、ゲリラを広く支持する農民(あるいは他の人民)の姿が見えてこない。本書のコンゴ時代を描いた補章に、ゲバラは失敗した理由を考えた、と書かれているが、考えた内容は書かれていない。言わずもがなということか。
とはいえ、人間的な魅力にみちた人だったらしい。質素、勤勉、献身的で、率先して困難を引き受けた。キューバで権力を得て後も、公用車を私用に使わず、贈り物は自宅に持ち帰らず、要するに自己に厳しくて、ちっともラテン的でなかった。非常な読書家で、パブル・ネルーダを愛し、文才があった。三好徹は、その「澄んだ目」を繰り返し語るが、ゲバラとは政治的意見の異なる者にも三好の思い入れは十分に伝わってくる。
□三好徹『チェ・ゲバラ伝』(原書房、2001)
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