第3章 僕らのネットの使い方 ~上級者のメディアをどう使いこなすか
【ネットの3大原則】の「ネットは「上級者」のメディア―玉石混淆のネット情報から「玉」だけ選び出すのは難しい」「ネットは「非常に効率が悪い」メディア―二次情報、三次情報が多い」「ネットには「プリズム効果」がある―自分の偏見が増長される仕組み(ネット空間の論説=世論ではない)」の以下、要旨。
(1)ネットは「「上級者」のメディア」
ネットの情報は玉石混淆で、そこから「玉」の情報だけ選ぶのは、かなりの知識とスキルが必要だ。
ネットは「速報性」に優れているし、誰でも発信できる素晴らしさを持つが、それだけに情報の真偽を見極めにくい。個人のサイトやSNSの投稿の中には、専門家が書いた優れものがある一方、デマや思いつき、偏見も数多く見受けられる。
誰でも発信できるとは、裏返しに見ると、新聞・雑誌が持つ「編集」「校閲」という重要な2つの機能が欠如しているということだ。他者の目を通さないと、自己中心的な意見や強い偏見を含んだ論説もそのまま載ってしまう。また、校閲機能もないので、誤字脱字どころか、明らかに事実関係を間違えている記事もネットにしばしば見受けられる。誰かが書いたことに対して「裏をとる」こともなく、そのままツイッターやフェイスブックなどで容易に拡散してしまう人も少なくない。
ネット空間は「ノイズ過多」なのだ。いい加減な情報=ノイズ情報をいかに除去するか。これがネットから「玉」の情報を得るポイントだ。
ネットは、うまく使えば便利で有益なツールになる反面、時間を浪費したりノイズ情報に惑わされる危険性もある「諸刃の剣」だということだ。
多くの人が誤解しているが、じつはネットは「上級者のメディア」なのだ。上手に活用すれば、マスメディアが報じない情報を広く深くとることもできるが、活用するスキルを持たないと、時間ばかり浪費してしまう極めて効率の悪いツールにしかならない。
(2)ネットは「非常に効率が悪い」メディア
ネットサーフィンの誘惑を含めて、費やす時間に対して得られる情報が少ないのがネットの特徴だ。
同じ時間をかけてニュースを読むにしても、①新聞社の無料サイトを見るのと、②新聞紙面で読むのとでは、とれる情報がまったく違う。①もカテゴリーごとに分かれているが、時系列順に新しい記事が並ぶため、記事の重要度がわかりにくいし、クリックしてみないと記事の概要がわからない。
新聞は、「どの記事を大きく載せるか」を編集デスクや整理部のベテラン記者が毎日会議を開いて決めている。一般のビジネスパーソンが自分で一つひとつ判断するより、まずは「プロのフィルター」に乗っかったほうが効率がいいのは間違いない。
無料のニュースサイトのように記事が並んでいるということは、「自分で記事の重要度を判断しなければならない」ということだ。多忙なビジネスパーソンにとって、その時間と労力をかけるメリットがあるか。
ネットを「効率の悪いメディア」にしているもう一つの要因は、そもそもネットで入手できる情報の多くが二次情報、三次情報だからだ。根っこになる一次情報は、新聞をはじめマスメディアの情報がほとんどだ。「ヤフーニュース」も含めて。
新聞雑誌できちんと精度の高い情報をチェックしたほうが、効率は何倍もいい。お金はかかるが、「時間は希少材」ということを考えると、ビジネスパーソンにはメリットのほうが大きい。
やはりネットは、付き合い方になかなか高度な技術のいるメディアであることは間違いない。
(3)ネットにある「プリズム効果」
ネットには特定のものだが大きく見えたり、別のものが見えなくなったりする「プリズム効果」がある。ネットを頻繁にチェックしているヘビーユーザーほど、その影響を受けやすい。
ネット空間では、自分でアクセスしなければ、見たくない情報には触れずに済む。逆に、自分が知りたいことや自分の考えを補強する情報が欲しければ、いくらでも見つけ出すことができる。
ツイッターやフェイスブックなどのSNSには特にその傾向が顕著だ。自分が選んだ人の言説しかフォローしないのだから。その人が自分の気に染まない意見を言い出したら、フォローを止めればいい。そうなると、自分と違う意見や考え方は、ネット上には存在しても、なかなか目に入ってこなくなる。
するとどうなるか。関心のあることについてはどんどん詳しくなる一方で、それ以外はまるで知らないまま、どんどん視野が狭くなる。
ここのところは、本当に誤解している人が多い。ネットには非常に多くの情報が溢れているので「視野が広くなる」と勘違いしている人がいるが、「知りたいことだけ知ることができる」というのが、ネットの長所であり短所でもあるわけだ。よほど気をつけて使わないと、視野を狭め、偏見を助長させてしまう。
ネットをよく使う人の中には、「ネットの論調=社会全体の論調」と思い込んでしまう人も少なくない。するとどうなるか。「メディアの報道には偏りがある」「真実を報道していない」と容易にマスコミ批判や陰謀論に走ってしまう。メディアが報道しないのは、ほとんどの場合「裏がとれない」からなのだが。
マスコミの仕事は「隠蔽」することではなく、「曝露」することなのだから。
また、ネットで支持が多い言説だからといって、国民的支持があるとは限らない。同じ人が「××反対」「〇〇は素晴らしい」と1日に3回書けば、その意見が強いように見えるが、社会全体で見ればそうとも限らない。ネットの論調が主流とは限らない。ネットで不特定多数に向けて情報発信している人は全体で見ればまだ少数派だ、くらいに考えておいたほうがバランスがいい。
□池上 彰×佐藤優『僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける77の極意』(東洋経済新聞社、2016)
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【参考】
「【佐藤優】ネットの使い方、情報の新しさを判断する目安 ~最強の読み方(5)~」
「【佐藤優】雑誌の読み方、『失敗の本質』 ~最強の読み方(4)~」
「【佐藤優】雑誌の読み方、「文藝春秋」は論壇カタログ ~最強の読み方(3)~」
「【佐藤優】新聞の読み方 ~最強の読み方(2)~」
「【佐藤優】新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける77の極意 ~最強の読み方~」
【ネットの3大原則】の「ネットは「上級者」のメディア―玉石混淆のネット情報から「玉」だけ選び出すのは難しい」「ネットは「非常に効率が悪い」メディア―二次情報、三次情報が多い」「ネットには「プリズム効果」がある―自分の偏見が増長される仕組み(ネット空間の論説=世論ではない)」の以下、要旨。
(1)ネットは「「上級者」のメディア」
ネットの情報は玉石混淆で、そこから「玉」の情報だけ選ぶのは、かなりの知識とスキルが必要だ。
ネットは「速報性」に優れているし、誰でも発信できる素晴らしさを持つが、それだけに情報の真偽を見極めにくい。個人のサイトやSNSの投稿の中には、専門家が書いた優れものがある一方、デマや思いつき、偏見も数多く見受けられる。
誰でも発信できるとは、裏返しに見ると、新聞・雑誌が持つ「編集」「校閲」という重要な2つの機能が欠如しているということだ。他者の目を通さないと、自己中心的な意見や強い偏見を含んだ論説もそのまま載ってしまう。また、校閲機能もないので、誤字脱字どころか、明らかに事実関係を間違えている記事もネットにしばしば見受けられる。誰かが書いたことに対して「裏をとる」こともなく、そのままツイッターやフェイスブックなどで容易に拡散してしまう人も少なくない。
ネット空間は「ノイズ過多」なのだ。いい加減な情報=ノイズ情報をいかに除去するか。これがネットから「玉」の情報を得るポイントだ。
ネットは、うまく使えば便利で有益なツールになる反面、時間を浪費したりノイズ情報に惑わされる危険性もある「諸刃の剣」だということだ。
多くの人が誤解しているが、じつはネットは「上級者のメディア」なのだ。上手に活用すれば、マスメディアが報じない情報を広く深くとることもできるが、活用するスキルを持たないと、時間ばかり浪費してしまう極めて効率の悪いツールにしかならない。
(2)ネットは「非常に効率が悪い」メディア
ネットサーフィンの誘惑を含めて、費やす時間に対して得られる情報が少ないのがネットの特徴だ。
同じ時間をかけてニュースを読むにしても、①新聞社の無料サイトを見るのと、②新聞紙面で読むのとでは、とれる情報がまったく違う。①もカテゴリーごとに分かれているが、時系列順に新しい記事が並ぶため、記事の重要度がわかりにくいし、クリックしてみないと記事の概要がわからない。
新聞は、「どの記事を大きく載せるか」を編集デスクや整理部のベテラン記者が毎日会議を開いて決めている。一般のビジネスパーソンが自分で一つひとつ判断するより、まずは「プロのフィルター」に乗っかったほうが効率がいいのは間違いない。
無料のニュースサイトのように記事が並んでいるということは、「自分で記事の重要度を判断しなければならない」ということだ。多忙なビジネスパーソンにとって、その時間と労力をかけるメリットがあるか。
ネットを「効率の悪いメディア」にしているもう一つの要因は、そもそもネットで入手できる情報の多くが二次情報、三次情報だからだ。根っこになる一次情報は、新聞をはじめマスメディアの情報がほとんどだ。「ヤフーニュース」も含めて。
新聞雑誌できちんと精度の高い情報をチェックしたほうが、効率は何倍もいい。お金はかかるが、「時間は希少材」ということを考えると、ビジネスパーソンにはメリットのほうが大きい。
やはりネットは、付き合い方になかなか高度な技術のいるメディアであることは間違いない。
(3)ネットにある「プリズム効果」
ネットには特定のものだが大きく見えたり、別のものが見えなくなったりする「プリズム効果」がある。ネットを頻繁にチェックしているヘビーユーザーほど、その影響を受けやすい。
ネット空間では、自分でアクセスしなければ、見たくない情報には触れずに済む。逆に、自分が知りたいことや自分の考えを補強する情報が欲しければ、いくらでも見つけ出すことができる。
ツイッターやフェイスブックなどのSNSには特にその傾向が顕著だ。自分が選んだ人の言説しかフォローしないのだから。その人が自分の気に染まない意見を言い出したら、フォローを止めればいい。そうなると、自分と違う意見や考え方は、ネット上には存在しても、なかなか目に入ってこなくなる。
するとどうなるか。関心のあることについてはどんどん詳しくなる一方で、それ以外はまるで知らないまま、どんどん視野が狭くなる。
ここのところは、本当に誤解している人が多い。ネットには非常に多くの情報が溢れているので「視野が広くなる」と勘違いしている人がいるが、「知りたいことだけ知ることができる」というのが、ネットの長所であり短所でもあるわけだ。よほど気をつけて使わないと、視野を狭め、偏見を助長させてしまう。
ネットをよく使う人の中には、「ネットの論調=社会全体の論調」と思い込んでしまう人も少なくない。するとどうなるか。「メディアの報道には偏りがある」「真実を報道していない」と容易にマスコミ批判や陰謀論に走ってしまう。メディアが報道しないのは、ほとんどの場合「裏がとれない」からなのだが。
マスコミの仕事は「隠蔽」することではなく、「曝露」することなのだから。
また、ネットで支持が多い言説だからといって、国民的支持があるとは限らない。同じ人が「××反対」「〇〇は素晴らしい」と1日に3回書けば、その意見が強いように見えるが、社会全体で見ればそうとも限らない。ネットの論調が主流とは限らない。ネットで不特定多数に向けて情報発信している人は全体で見ればまだ少数派だ、くらいに考えておいたほうがバランスがいい。
□池上 彰×佐藤優『僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける77の極意』(東洋経済新聞社、2016)
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【参考】
「【佐藤優】ネットの使い方、情報の新しさを判断する目安 ~最強の読み方(5)~」
「【佐藤優】雑誌の読み方、『失敗の本質』 ~最強の読み方(4)~」
「【佐藤優】雑誌の読み方、「文藝春秋」は論壇カタログ ~最強の読み方(3)~」
「【佐藤優】新聞の読み方 ~最強の読み方(2)~」
「【佐藤優】新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける77の極意 ~最強の読み方~」