語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【派遣】国民健康保険料の理不尽 ~中高年派遣社員物語11~

2017年03月29日 | ノンフィクション
 (1)筆者=森川氏は、月額約5万円の老齢厚生年金を60歳から受給していた。この2月に65歳になったので、フル年金の、「老齢基礎年金+老齢厚生年金」を受給する手続きをした。
 以前、年金相談を利用したとき、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上の人には、子どもが18歳になるまで年額約22万円の加給年金が、妻についても妻が65歳になるまで同額の年金に特別加算額を加えた合計39万円の加給年金(妻の年齢によって異なる)がもらえると説明を受けた。若い頃に勤めていた学校で加入していた私学共済も含めたら、月に20万円弱の年金がもらえることになった。

 (2)しかし、65歳になって届いた介護保険案内には仰天した。まだ体が丈夫なのに、介護保険を利用できる被保険者証が届いたのだ。保険料も今までの約1.5倍で、年金からの引き落としである。

 (3)定年退職後に入る国民健康保険にも保険料が高いという問題がある。それが如実にわかる体験をした。
 森川氏は、一昨年、3社に勤めた。最後の会社で、前の会社の源泉徴収票を出すように言われた。まとめて源泉徴収票を作るという。しかし、森川氏には、年金収入と給与収入の二つの収入があり、3社の源泉徴収票を税務署に持ち込み、確定申告した。その結果、所得税納付額は25,000円と出た。まあ年金収入もあり、こんなものかと思っていたら、昨年6月、市から国民健康保険料の通知が来た。年額約30万円とあって仰天。夜、寝ながら考えた。どうしてこんなに高額なのかと。
 最後の会社で作った3社を合計した源泉徴収票と、2社の源泉徴収票を二重に計算したため、年収が400万円となったのではないか。最後の会社が3社分をまとめて作った源泉徴収票に2社の額を明記していなかったため、気づかなかったのだ。
 大慌てで税務署に出かけ、修正申告をし、その足で市役所に出向いて減額の手続きをしたが、確定するまで2ヵ月以上もかかってしまった。

 (4)この間違えた年収額、実は森川氏が40代で民間研究所に勤めていた時の年収と同額なのだ。その時の給与明細書を持っていたので、保険料を比較することができる。当時1ヵ月の健康保険料が15,000円だった。
 つまり、国民健康保険料は、正社員の健康保険料の2倍くらい高い。
 収入によって額は異なるだろうが、正社員は企業が半額を負担してくれているので安いのだ。
 自営業や学生、非正規など裕福でない人の保険料の方が高くて、福祉国家といえるだろうか。
 そこで提案だが、国民健康保険料も政府が半額負担して、正社員の保険料と同額になるようにしてはどうか【注】。また、短期の仕事の多い非正規も、会社を辞めても同じ保険がそのまま使えるようにしてはどうか。将来的には、国民健康保険を健康保険に統合するよう提案したい。

 【注】森川氏は気づいてないが、実は市町村国保に対しては、国庫支出金、都道府県支出金、前期高齢者交付金、共同事業交付金などの施策が既にある。

□森川海守「国民健康保険料で感じた理不尽 ~中高年派遣社員物語11~」(「週刊金曜日」2017年3月24日号)
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【派遣】中高年の保険は医療保険で十分 ~中高年派遣社員物語10~

2017年03月29日 | ノンフィクション
 (1)森川氏は、3年間、損害保険の営業をしていたことがある。スキー保険という新保険を作ったこともある。これは事故があったら、保険会社の損害額が大きくなるが、通院日額を低くして会社の損害額を減らす設計にもなっている。だから森川氏は、生命保険にも詳しいと自負している。

 (2)60歳になると定年退職となるケースが多い。フルの年金がもらえる65歳まで、まだ5年もある。そこで問題になるのが生命保険だが、多くの人が退職後の保険で悩む。月給が高額だったために在職時は保険料を月1万円以上払っていたケースも多いのではないか。
 ところが退職すると年金額がそれに見合わないため、死んだら保険金が家族に支払われる死亡保険に疑問を呈する方が多い。平均寿命の男性約81歳、女性約87歳までも生きるとしたら、万一に備えるにしても、少ない年金から月1万円の保険料を20年以上も払い続けるのはどうかと思う。
 ここは、死亡保険は家族に理解してもらって解約、生きている間、病気・交通事故で入院した場合に備える掛け捨ての医療保険で十分ではないか。終身タイプが安全だが、死ぬまで保険料を払い続けなければならないため、月の保険料は5,000円以下が家計にやさしい。
 森川氏は、月保険料3,000円の一生保険料が変わらない終身タイプの医療保険に入っている。

 (3)若い時はまだ保険の知識がなく、10年満期の生命保険にしか加入していなかった。10年ごとに保険料が変わるので、若い時に終身保険に入っておくべきであったと後悔したのは後の祭りで、その時は入院日額5,000円の終身医療保険にしか加入していなかった。とはいえ、この医療保険には随分とお世話になった。気胸になったり、痔の手術をしたり。治療費等を賄うのに役立った。森川氏より若い中高年の方には、入院日額1万円の終身の医療保険に入るよう勧めたい。

 (4)家族に癌を患ったことのない森川氏には、癌保険はまったく役に立たなかった。たしかに「癌になった」と宣告されただけで保険金が下りる癌保険は手厚いが、その分保険料が高い。癌にならないと保険が下りないので、これほど役立たない保険はない。 
 しかも、公的健康保険に入っていれば、高額療養費制度があって、森川氏の収入程度であれば、月の医療費の自己負担額は上限44,000円。癌保険に入っていなくても困らない。
 メットライフやアフラック、オリックス等が扱っている医療保険だけで十分だ。
 癌で手術を受けても10万円なにがしかの手術代が補償されるし、2ヵ月分なにがしかの入院日額も補償される。
 通院日額が付いているものや、配当金付き生命保険は、保険料も高くなるので、勧められない。運用は自分でやると考え、保険とは切り離して考えるのがいい。

□森川海守「中高年の保険は医療保険で十分なのだ ~中高年派遣社員物語10~」(「週刊金曜日」2017年3月17日号)
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