「特別付録1 「「人から情報を得る」7つの極意」の以下、要旨。
(1)「斜めの人間関係」を重視する
記者も官僚も、建前上はチームプレーを強調するが、実際は個人プレーの世界だ。先輩だろうが後輩だろうが、皆ライバルだ。
池上彰は、新人時代、自社の先輩が教えてくれず、困った。それでどうしたかというと、競合のほかの新聞社の先輩方のお世話になった。現場で新人記者がウロウロして困っているのを見ると、みんな昔の自分を思い出すわけだ。島根県警を担当していたとき、読売新聞と中国新聞の先輩記者に、いろいろ取材のコツを教えてもらった。「そういうものか」と思い、その後、自分も他者の若い記者にはずいぶんいろいろ教えたものだ。
新人のうちは、一緒に食事に行くとか、そういう機会を逃さないことだ。
いつも初々しく振る舞いながら、素直に「わからないことがあるので、教えてください」とついていく。自分に利害のない相手なら、「よしよし」と教えてくれる。
優秀な人ほど教える。中途半端に情報を出し渋っていたら、その人のところにも結局、情報は入ってこなくなるので。
ただ、直属の関係だと難しいかも。情報をくれるのは、「斜めの人間関係」だ。会社組織で言えば、自分の所属とは別の部署の先輩、とりあえず競合には当たらない先輩を狙うのがコツだ。
(2)「初々しさ」を出して「いい聞き手」になる
情報収集において「初々しさ」は非常に重要な要素だ。佐藤優は外交官時代、ロシア政府から発表されたばかりの公開文書がほしいとき、常に3人ぐらいに同時に電話していた。それで運よく、そのうち1人から情報を入手できたとする。その後、2番目、3番目から連絡が来たとき、どうするか。1人目と同じく「ありがとうございます。すぐに取りに伺います」と飛んでいく。ここで、もし「その情報はすでに手に入ったので結構です」とか「後ほど伺います」などと答えたら、二度と情報を教えてくれない。
どんな相手と話すときでも、情報を引き出そうと思ったら、「はじめて聞きました」という初々しさが大事だ。
インタビューにおいて、いつも「いい聞き手」になるように努力する。何でも興味を持って聞き、教えてくれたら「そうなんですか! さすがですね」と心底、感心する。そうすると相手は気持ちよくなって、もっといろいろ話してくれる。よき生徒は、誰にとっても可愛いものだから。
「こいつは、なかなかやる気があっていいやつだから、なんとか面倒を見てやろう」と味方になってくれる可能性も高い。人から情報や知識を得ようとすれば、「誰と付き合うか」だけでなく、「どう付き合うか」も大事な技法だ。
(3)数年先の先輩に「白い勉強」と「黒い勉強」を教えてもらう
(1)の「斜めの人間関係」の大切さは、トラブル処理についても言える。何かトラブルが発生したとき、一般的にはすぐに直属の上司に報告すべきだ。ただし、トラブルの種類によっては、上司に報告してはいけないものもある。
すべて正直に話せばよい、というものではない。
〈例〉オランダに出張し、ちょっとした出来心でハシシ(大麻)をやったとする。向こうでは合法だから。それで調子に乗ってヘロヘロになっているときに、所持金を全部すられてしまい、そこには会社の出張費も入っていたとする。そのとき上司に「どうしましょう?」とバカ正直にすべてを報告したら、上司も困る。かばいたくてもかばいきれないから。
聞いてしまったら、なかったことにできないから。もしかばって、隠していたことが露見したら、その上司の責任問題にも発展してしまう。
そんなとき、上司より先に相談できる相手、数年上の先輩がいるかどうかがポイントだ。「ハシシなんて正直に言うんじゃない。酔って寝ていたことにしろ」とアドバイスしてくれる先輩がいるかどうか。そういう「黒い勉強」を教えてくれるものいい先輩だ。ビジネスパーソンは真面目に「白い勉強」だけやっていればいいわけではないのだから。
トラブル処理に限らず、数年先に入社した先輩から学ぶことは本当にたくさんある。まだ新人の感覚を忘れていないから、つまずくポイントがわかるのでアドバイスが実践的なのだ。
むろん「白い勉強」についても、いろいろ教わることは多いはずだ。仕事に必要なメモのとり方や社内外の人との接し方、外交官だったら語学の勉強の仕方、電報の書き方など、参考になることは多々あるはずだ。
□池上 彰×佐藤優『僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける77の極意』(東洋経済新聞社、2016)
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【参考】
「【佐藤優】ネット利用の3大原則 ~最強の読み方(6)~」
「【佐藤優】ネットの使い方、情報の新しさを判断する目安 ~最強の読み方(5)~」
「【佐藤優】雑誌の読み方、『失敗の本質』 ~最強の読み方(4)~」
「【佐藤優】雑誌の読み方、「文藝春秋」は論壇カタログ ~最強の読み方(3)~」
「【佐藤優】新聞の読み方 ~最強の読み方(2)~」
「【佐藤優】新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける77の極意 ~最強の読み方~」

(1)「斜めの人間関係」を重視する
記者も官僚も、建前上はチームプレーを強調するが、実際は個人プレーの世界だ。先輩だろうが後輩だろうが、皆ライバルだ。
池上彰は、新人時代、自社の先輩が教えてくれず、困った。それでどうしたかというと、競合のほかの新聞社の先輩方のお世話になった。現場で新人記者がウロウロして困っているのを見ると、みんな昔の自分を思い出すわけだ。島根県警を担当していたとき、読売新聞と中国新聞の先輩記者に、いろいろ取材のコツを教えてもらった。「そういうものか」と思い、その後、自分も他者の若い記者にはずいぶんいろいろ教えたものだ。
新人のうちは、一緒に食事に行くとか、そういう機会を逃さないことだ。
いつも初々しく振る舞いながら、素直に「わからないことがあるので、教えてください」とついていく。自分に利害のない相手なら、「よしよし」と教えてくれる。
優秀な人ほど教える。中途半端に情報を出し渋っていたら、その人のところにも結局、情報は入ってこなくなるので。
ただ、直属の関係だと難しいかも。情報をくれるのは、「斜めの人間関係」だ。会社組織で言えば、自分の所属とは別の部署の先輩、とりあえず競合には当たらない先輩を狙うのがコツだ。
(2)「初々しさ」を出して「いい聞き手」になる
情報収集において「初々しさ」は非常に重要な要素だ。佐藤優は外交官時代、ロシア政府から発表されたばかりの公開文書がほしいとき、常に3人ぐらいに同時に電話していた。それで運よく、そのうち1人から情報を入手できたとする。その後、2番目、3番目から連絡が来たとき、どうするか。1人目と同じく「ありがとうございます。すぐに取りに伺います」と飛んでいく。ここで、もし「その情報はすでに手に入ったので結構です」とか「後ほど伺います」などと答えたら、二度と情報を教えてくれない。
どんな相手と話すときでも、情報を引き出そうと思ったら、「はじめて聞きました」という初々しさが大事だ。
インタビューにおいて、いつも「いい聞き手」になるように努力する。何でも興味を持って聞き、教えてくれたら「そうなんですか! さすがですね」と心底、感心する。そうすると相手は気持ちよくなって、もっといろいろ話してくれる。よき生徒は、誰にとっても可愛いものだから。
「こいつは、なかなかやる気があっていいやつだから、なんとか面倒を見てやろう」と味方になってくれる可能性も高い。人から情報や知識を得ようとすれば、「誰と付き合うか」だけでなく、「どう付き合うか」も大事な技法だ。
(3)数年先の先輩に「白い勉強」と「黒い勉強」を教えてもらう
(1)の「斜めの人間関係」の大切さは、トラブル処理についても言える。何かトラブルが発生したとき、一般的にはすぐに直属の上司に報告すべきだ。ただし、トラブルの種類によっては、上司に報告してはいけないものもある。
すべて正直に話せばよい、というものではない。
〈例〉オランダに出張し、ちょっとした出来心でハシシ(大麻)をやったとする。向こうでは合法だから。それで調子に乗ってヘロヘロになっているときに、所持金を全部すられてしまい、そこには会社の出張費も入っていたとする。そのとき上司に「どうしましょう?」とバカ正直にすべてを報告したら、上司も困る。かばいたくてもかばいきれないから。
聞いてしまったら、なかったことにできないから。もしかばって、隠していたことが露見したら、その上司の責任問題にも発展してしまう。
そんなとき、上司より先に相談できる相手、数年上の先輩がいるかどうかがポイントだ。「ハシシなんて正直に言うんじゃない。酔って寝ていたことにしろ」とアドバイスしてくれる先輩がいるかどうか。そういう「黒い勉強」を教えてくれるものいい先輩だ。ビジネスパーソンは真面目に「白い勉強」だけやっていればいいわけではないのだから。
トラブル処理に限らず、数年先に入社した先輩から学ぶことは本当にたくさんある。まだ新人の感覚を忘れていないから、つまずくポイントがわかるのでアドバイスが実践的なのだ。
むろん「白い勉強」についても、いろいろ教わることは多いはずだ。仕事に必要なメモのとり方や社内外の人との接し方、外交官だったら語学の勉強の仕方、電報の書き方など、参考になることは多々あるはずだ。
□池上 彰×佐藤優『僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける77の極意』(東洋経済新聞社、2016)
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【参考】
「【佐藤優】ネット利用の3大原則 ~最強の読み方(6)~」
「【佐藤優】ネットの使い方、情報の新しさを判断する目安 ~最強の読み方(5)~」
「【佐藤優】雑誌の読み方、『失敗の本質』 ~最強の読み方(4)~」
「【佐藤優】雑誌の読み方、「文藝春秋」は論壇カタログ ~最強の読み方(3)~」
「【佐藤優】新聞の読み方 ~最強の読み方(2)~」
「【佐藤優】新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける77の極意 ~最強の読み方~」
