語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】地政学から見る第二次世界大戦前夜

2016年12月08日 | ●佐藤優
 (1)日本は軍縮会議(ワシントン平和会議)で米国に騙された。米国が、日英同盟を発展的に解消して地域の集団的安全保障をやろうと言って、それで全然関係のないフランスを形だけ持ってきて、4ヵ国で条約をつくるろうと持ちかけた。フランスは太平洋での海洋権益はないのに。この4ヵ国で互いに安全保障をすれば大丈夫だといって日英同盟を解消させた。それで米英が接近していった。となると日本は海洋国家であるにもかかわらず、同じ海洋国家である米国とイギリスの両方を敵に回すという選択を採った。それによって、あの無謀な戦争に飛び込んでいったわけだ。

 (2)改めて戦争の整理をすると、日本の陸軍は地政学をちゃんと勉強していたから米国と戦を構える気はなかった。それに日本の陸軍の中で強いのは、常に英米可分論。ちなみに真珠湾奇襲よりも、イギリス領マーレ半島上陸のほうが数時間早かった。真珠湾の6時間ぐらい前にマレー半島に上陸している。つまりあの戦争は本質においてはイギリスとの戦争だ。それはイギリスが海洋覇権ではなくて、東南アジアの資源を握っていて、そこに日本は関心があったのだ。
 だから、裏返すと、イギリスがアジアから手を引いて、それで折り合いがつくならあの戦争は避けることができた。だから基本的にはあの戦争を日本のほうから見ると、日英戦争だ。陸軍のほうは日英戦争ですあら二次的に考えていたぐらいで、日米戦争なんて全然考えていなかった。陸軍が第一義的に考えていたのは日ソ戦だ。日本が大陸国家として進出すべきと考えていたから。

 (3)しかし、陸軍はある時期から極めて慎重になった。張鼓峰事件(1938年)と翌年のノモンハン事件(1939年)からだ。ちなみに、日本では「事件」という扱いだが、今、国際的にはノモンハン(ハルヒンゴル)事件の研究が進んでいて、ノモンハン「戦争」という言い方のほうが主流になっている。
 第二次世界大戦でドイツ軍を破ったときのソ連の軍事最高司令官はゲオルギー・ジューコフだが、ジューコフはノモンハン事件のときのソ連軍の司令官でもあった。彼は回想録の中で、これまで最も苦しい戦いはどこだったかというと、ハルヒンゴル事件だったと言っている。「ハルヒンゴルでの日本との戦いは、今までの戦いの中では最も苦しかった」と。
 それは日本にとっても同じだ。日本が地政学的に海洋国家の方針を採って大陸に出ていかなければ満州国なんかつくらなかったし、朝鮮半島も植民地支配しなかった。朝鮮半島は支配ではなく保護国みたいな形で、少なくとも神社参拝を強要して、そこでアトム的な価値観を押しつけるようなことはしなかったはずだ。

 (4)朝鮮半島はもともと檀君信仰がある。今、北朝鮮は檀君信仰をそのまま金日成神話に転換している。ピョンヤンの郊外に、檀君の夫妻の骨が見つかったといって、それを祀ってあるピラミッドがある。もし日本がアマテラスではなく、檀君を祖神とする形での宗教をつくらせていたら、朝鮮半島に土着化できた可能性はある。しかし大東亜共栄圏の内部というのはモナドロジー的な発想を持たない、すごくアトム的で均質な、ベタな発想だったわけだ。それでものすごい軋轢が出てきてしまった

 (5)軍事的に見れば、日本で近代戦をやったのは1905年の日露戦争が最後だ。ちなみに、日露戦争では、大量のコンクリートを使って、トーチカ(要塞)をつくって、そこに機関銃を据えて戦った。トーチカとはロシア語で「点」という意味だ。
 機関銃から派生してできた、われわれが日常的に使っている文房具がある。ヒントはマックス。マックスは機関銃メーカーの名前だ。答えはホチキス。ホチキスのあの玉送りは、機関銃の弾送りの仕組みを使っている。弾をそのままホチキスの針に代えただけ。あの順番で弾を送っていくという技術を民間に転用するとホチキスになる。
 そういうわけで日露戦争は大量の機関銃を使って物量戦をやったという、第一次世界大戦の先駆けとしての意味がある。でもその後の第一次世界大戦は、日本にとっては日英同盟を口実に、後から入ってきたという話だ。

□佐藤優「第一講 地政学とは何か」(『現代の地政学』、晶文社、2016)pp.59-61
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【参考】
【佐藤優】トルキスタンの分割、変容する民族意識、ユーラシア主義の地政学
【佐藤優】地政学から見る第二次世界大戦前夜
【佐藤優】地政学とファシズムと難民
【佐藤優】最悪情勢分析 ~NPT体制の崩壊~
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【佐藤優】地政学とファシズムと難民

2016年12月08日 | ●佐藤優
 (1)地政学との関係において、すごく重要なのがファシズムだ。地政学とファシズムは重なる部分もあれば、重ならない部分もある。
 ファシズムは、「ナチズムの仲間」くらいで片付けられるものではない。ナチズムは確かに広義のファシズムの一部ではあるが、あの「血と土地の神話」のようなものを信じて、そこからユダヤ人絶滅政策が出てきて、それで全世界を敵に回して戦うなどという異常な思想が出てくるのは、これはドイツの極めて特殊な事情に基づく。ナチズムに普遍性はない。ドイツの病理現象にすぎない。
 ちなみに、今ネオナチが活発に活動している。ドイツでネオナチに関する報道は多い。外国人排斥に関する報道も多い。その二つに関する報道は、ドイツがシリア難民受け入れを決めてから増えている印象がある。

 (2)今、ヨーロッパは競争している。うちの国は怖いんだぞ、居心地が悪いぞ、来ないほうがいいよ、とアピールする競争。今、世界中で難民の問題を心配しなくていい国はどこか。
 日本は、すぐ難民が来る可能性がある。難民の問題も地政学と関係してくるから、地政学的なことを無視した外交政策のツケが来たということなのだが。
 安倍首相が2015年1月17日にエジプトで表明した中東に対する支援金25億ドルは、何のためのお金か。人道難民支援だろう。難民はなぜ発生するのか。米国が「イスラム国」を空爆し、空爆されて殺されてはかなわないし、「イスラム国」の圧政やアサド政権の支配下にいたくないから国を出る。その出てきた人の難民キャンプをつくって、そこに住まわせる。それで「イスラム国」の仲をガタガタにしていくというのが西側の戦略だった。日本はその意味において、難民部門を担当すると表明していたわけだ。ところが、彼らはその枠を超えてヨーロッパに出てきてしまった。ヨーロッパはもう難民を受け入れたくないのだ。
 ヨーロッパの中でもアルバニアなどは地理的にシリアから近い。イスラム教徒も多い。だが、難民はそこへ行かない。国家が破綻していて危険だからだ。だからアルバニアは難民が来るのを心配しなくていい。
 ほかにも難民が来るのを心配しなくていい国がある。アジアでは北朝鮮だ。北朝鮮は人権関係の国際条約に署名して、批准している。憲法で難民を受け入れる権利をちゃんと保証しているし、迫害されている人は受け入れなければいけないという規定もある。その意味では人権優等国だ。ただ、彼らは国際法と国内法はまったく別ものという二元主義に立っているから、国際法で何を約束しても実際は無関係なのだ。

 (3)では、日本はどうか。日本は970億円出した。それは難民支援でヨーロッパへいく。すると、ヨーロッパの情報機関はきっと、NPOの連中をそそのかして、LCCチケットを難民に渡す。成田経由で中南米のどこかに行くチケットを。最終目的地がよその国の航空券を持っていれば、乗り継ぎの空港に降りるのに査証も何もいらない。それでチケットを難民に渡して、因果を含めるのだ。「成田空港の国際線エリアに滞留しろ」と。あそこは飛行機の乗り継ぎの関係で2,000人ぐらいなら受け入れられるようになっている。シャワーもあるし、食事もある。だからトム・ハンクス主演の映画「ターミナル」みたいに、何ヶ月もその中で暮らせる。映画ではトム・ハンクス一人が空港で生活するわけだが、そういう人が300人から500人ぐらいたとして、CNNとBBCで毎日それを映し出す。
 「現在、成田空港の国際線ロビーにシリア難民が300人いて、日本への入国を求めています。ちなみに日本は国際社会の中で難民に対する協力を表明しています。日本は数千人の割り当てがあるにもかかわらず、それを受け入れていません」
 こんな報道をされたら、日本政府はこういう国際圧力に耐えられない。それで結局難民は入ってくることになる。こういう感じだ。
 だから難民法を整えて、何が難民か、難民じゃないかということをきちんと仕分けしないといけないのだが、この政府はそういったことには全然対応していない。
 それから難民の中には一定数のテロリストも紛れ込んで入ってくる。そういうリスクもある。こういうことも地政学のことがわかっていないと、ピンとこない。

□佐藤優「第一講 地政学とは何か」(『現代の地政学』、晶文社、2016)pp.46-50
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【参考】
【佐藤優】トルキスタンの分割、変容する民族意識、ユーラシア主義の地政学
【佐藤優】地政学から見る第二次世界大戦前夜
【佐藤優】地政学とファシズムと難民
【佐藤優】最悪情勢分析 ~NPT体制の崩壊~
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【佐藤優】最悪情勢分析 ~NPT体制の崩壊~

2016年12月08日 | ●佐藤優
 

 (1)副島隆彦は米国のインテリジェンスに強いシンクタンクとすごくいい関係を持っている。シンクタンクでは、最悪情勢分析をやる。これはロシアでもイスラエルのインテリジェンス機関でもそうだ。荒唐無稽な話ではなく、現実的に、今、最悪の事態としてどういうことが想定し得るかを徹底的に予見する。
 〈例〉イランのロウハニ政権が国際原子力機関(IAEA)との合意を無視して、核開発に走るとする。米国はそれを阻止できないので、イランは10ヵ月後に広島型原爆を持ってしまい、その小型化作業に入るかもしれない。
 これはあり得るシナリオだ。

 (2)(1)-〈例〉の場合、その状況をサウジアラビアが見て、サウジアラビア=パキスタン秘密協定を発動させ、パキスタン領内にある核弾頭のいくつかをサウジアラビアの領内に移すとする。
 サウジアラビアの領域に核弾頭が移ったことによって、核不拡散(NPT)体制が崩壊する。
 その結果、アラブ首長国連邦、カタール、クウェート、オマーンが核兵器をパキスタンから購入する。エジプトは自力で核を開発する。ヨルダンも自力で核を開発するようになるかもしれない。
 核を購入する国と核を開発する国に分けたが、基礎的な学術水準の違いがあるので、核をつくれる国とつくれない国があるからだ。

 (3)そうやって、核拡散が起きる。そこでNPT体制が崩壊する。
 NPT体制が崩壊すると、ブラジルやアルゼンチンも核を持つようになる。
 その影響は極東に現れてきて、北朝鮮のみならず、韓国と台湾が核兵器を持つようになるかもしれない。

 (4)そうなったとき、どうなるか。それでも恐らく日本は核兵器を持てない。なぜなら米国の核の傘の下にあるから、その傘を外すことに対しては、米国も周辺国も反対するはずだからだ。
 何でそういうことになるかというと、日本は第二次世界大戦で全世界を敵に回して戦った実績があるからだ。そういう国は核を持てないのだ。だから日本とドイツは最後まで核を持てない。
 それで他の国が核を持つような時代になると、竹島問題にしても、慰安婦問題にしても、第二次世界大戦中の徴用工問題にしても、核を持った韓国と日本は外交で交渉していかないといけないなら、これは相当押し込まれるようになる。
 こういうのが最悪情勢分析だ。

□佐藤優「第一講 地政学とは何か」(『現代の地政学』、晶文社、2016)pp.28-29
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【参考】
【佐藤優】トルキスタンの分割、変容する民族意識、ユーラシア主義の地政学
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【幕内秀夫】太りすぎた子どもたち ~「お菓子」が主食~

2016年12月08日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)保育園や幼稚園の子どもに、これまでとは違うタイプの肥満児がいる。
 子どもの体型にも生まれつき個性がある。これまでにもぽっちゃりしたお子さんはいたはずだ。しかし、これまでとは違う肥満の子どもが登場している。
 肥満大国、米国やメキシコ、オーストラリアの肥満児のような体型の子どもが登場してきたのだ。

 (2)原因は何か?
 真っ先に考えられるのは運動不足と甘いお菓子や清涼飲料水だ。
 それらの影響も無視できないが、しょせんは「間食」の問題だ。これまでも、「間食」に甘いお菓子やジュースを摂っていた子どもはたくさんいただろう。しかし、一目でわかるほどの肥満児は多くはなかった。
 これまでと明らかに違うのは、「主食」さえもお菓子になったことだ。具体的に言えば、パンを常食するようになったことにある。
 もともと、欧米人たちが食べてきたパンに「砂糖」は入っていなかった。原材料は「小麦(ライ麦)・食塩・イースト(酵母)」。せいぜいこんなものだ。
 30年以上前、中国の最奥地、新疆ウイグル自治区では、イーストも使わないパン無発酵のパン、ナンが食べられていた。もちろん、砂糖は使われていない。焼いてから数日経ったものはカチカチだ。そのままでは食べにくいので、スープなどに浸して食べた。
 今でも欧米にはそのようなパンを焼く小さな店が残っている地域もある。
 しかし、今や世界の多くの国では大規模工場で大量生産され、長距離輸送されたパンが主流だ。長期保存のための食品添加物、また、品質を低下させないためになくてはならないのが、「砂糖」だ。
 わかりやすい例は、しっとり感が命のカステラだ。食べるとジャリジャリと砂糖の粒をかんでいることがわかることさえある。

 (3)砂糖が入ってないパンは少し置くだけで硬くなり、包丁で切るとぼろぼろになり、さらには食味が落ちる。
 現在の日本ではよほどのこだわりの店に行かなければ、砂糖の入っていないパンは販売されていない。
 もはや「食パン」も菓子パンになった。しかも、柔らかさやしっとり感を売り物にする食パンが増えているので、含まれる砂糖の量はどんどん増えているのだ。

 (4)そのパンの生地から、菓子パン、ハンバーガー、ホットドッグ、ピザ、ドーナツなど、無数の食品が製造されている。それらを常食するようになり、その間に、お菓子や清涼飲料を摂るようになった。
 朝から晩までお菓子を食事にする子どもが登場するようになったのだ。
 それらの影響がどれほど大きいかは、すでに欧米の肥満大国が教えてくれる。

□幕内秀夫(フーズ&ヘルス研究所代表/学校給食と子どもの健康を考える会代表)「 ~口は災いのもと 2」(「週刊金曜日」2016年10月14日号)
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 【参考】
【食】味噌汁をめぐる妻vs.夫 ~「塩味」が伝える大切なメッセージ~
【保健】世紀のデタラメ健康法 ~「糖質制限」ダイエット~


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【後藤謙次】政府与党内の二つの見方 ~北方領土交渉は頓挫?~

2016年12月07日 | 社会
 (1)「トランプをTPPに引き戻すとなると、相当の代償を求められるのは確実だ」(政府高官)
 日米同盟を基本に組み上げる日本外交の戦略見直しは必至。トランプという予期せぬ“触媒”による“化学変化”の兆しが他の外交でも見え始めた。わけても注目されるのは、オバマ米大統領との確執を続けたプーチン露大統領が北方領土交渉をめぐってどう出てくるのか、だ。
 政府与党内に二つの見方がある。
  (a)米露対立を背景に日露関係の前進に難色を示してきた米国の圧力がなくなり、交渉がやりやすい環境が生まれる。長く北方領土問題に関わってきた鈴木宗男・新党大地代表も、そう見る。「ヒラリー・クリントンが当選していたら相当圧力をかけてきたはず。その障害がなくなるので交渉は円滑に進む」
  (b)米露関係が厳しいからこそ日本が介在する余地があり、トランプとプーチンによる英露関係の改善が進めば日本の価値が低下する。

 (2)(1)の二つの見方が交錯する中で行われた安倍・プーチン会談、於ペルー・リマ。
 12月15日には山口県長門市(安倍の地元)で安倍・プーチン会談が予定されており、ここで大きく交渉を進展させるのが当面の日本外交の基本戦略だった。しかし、トランプの登場を契機に、ロシア側が次々と否定的なシグナルを送り始めた。
 世耕弘成・経済産業相がまとめつつある対露経済協力プランのロシア側カンターパートだったウリュカエフ・露経済発展担当相がリマ会談の直前に巨額賄賂容疑で刑事訴追された。ロシア国内の、領土交渉の進展に反対する勢力の存在をうかがわせる。
 こうした予兆が示したとおり、リマ会談ではこれまでの友好ムードから一転して、プーチンは日本側に厳しいボールを投げ込んできた。プーチンは、自らこの提案の中身を記者会見で明らかにした。リマ発の共同通信電はこう伝える。
 「北方四島での共同の経済、人道面の活動について協議した」
 「クリール諸島(北方領土を含む千島列島)は今、ロシアの主権がある領土だ。(北方四島)全てが交渉の対象だ」
 この意味するところは、北方四島では日露間の「共同経済活動」を行うが、それはロシアの法制度下で領土の帰属を決めるというものだ。
 この考えは、日本で共有されている領土交渉をめぐる最大公約数とは大きく懸け離れている。「2島プラスアルファ」が交渉の出発点という日本側の認識への“挑戦状”ともいえる。日本側が危惧する経済協力を“食い逃げ”される懸念が、早くも浮上した。

 (3)プーチンとの会談後、安倍は表情を曇らせながら「(領土交渉は)そう簡単ではない」と述べた上で、「一歩一歩」を4回繰り返した。
 もはや「長門会談」で交渉が劇的に進展する可能性は消えたと見ていい。
 ただし、政府関係者は「プーチンが手ぶらで来ることは考えにくい。そんなことをすれば安倍総理との信頼関係が瓦解する」とも指摘する。
 順風満帆の航海を続けてきた安倍が得意とする外交で、大きな試練に直面した。トランプとプーチン、そして習近平・中国国家主席のそれぞれの立ち位置を見極めるまで、安倍は迂闊には動けない。

□後藤謙次「プーチンが突き付けた“挑戦状” 日本外交の戦略見直しは必至 ~永田町ライブ!No.317」(「週刊ダイヤモンド」2016年12月3日号)
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 【参考】
【後藤謙次】トランプの地滑り的勝利で始まった未知なる対米外交
【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク
【後藤謙次】幹事長の入院が人事に波及、「ポスト安倍」めぐり早くも火花
【後藤謙次】参院選大勝も激戦12県で大敗 ~劣る「勝利の質」~
【後藤謙次】都知事選で与党分裂の理由 ~自民党内の反安倍勢力~
【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~
【後藤謙次】甘利大臣辞任をめぐる二つのなぜ ~後任人事と直後のマイナス金利~
【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~
【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~
【政治】安倍が描いた解散戦略の全内幕 ~周到な準備~
【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~
【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~
【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~
【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問
【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~
【政治】国会議員はヤジの質も落ちた

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【保健】痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨

2016年12月06日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)俗に、疾病の三大激痛の一つと言われる痛風発作。後の二つは、尿路結石だ、心筋梗塞だ、胆石だ、急性膵炎だ、との諸説があるが、痛風の地位は揺るがない。
 痛風は、血液中の尿酸が、長い間に結晶化して関節にたまる「尿酸塩沈着症」が本態だ。沈着した結晶を排除すべく免疫反応が起こり、炎症と発熱、腫れや痛みが生じる。
 初発作のほぼ7割は、足の親指の付け根で発生する。時には靴も履けず、真冬にサンダルで出勤する羽目になる。

 (2)日本の診療ガイドラインでは、血中尿酸値が7.0mg/dL超のケースを高尿酸血症と定義し、生活習慣の是正などで6.0mg/dL以下以下に管理するよう推奨している。
 一方、先に米国内科学会(ACP)から出された診療ガイドラインでは、血清尿酸値の治療目標そのものを撤廃。一律に境界線を引けるだけの根拠がないからだ。尿酸値のコントロールは大切だが、どこまで下げるかの目標値は、個々人で設定する必要がある。

 (3)痛風発作の治療には、日本でもおなじみの薬が推奨されている。すなわち、痛みの前兆~痛み始めにはコルヒチンを、激痛真っ只中ではノン・ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)か副腎皮質ホルモンだ。
 注意したいのは、コルヒチンの服薬量だ。ACPは、高用量と比較し「効果に差がない」ことを理由に、1日1.8mgまでの低用量処方を推奨。コルヒチンは過量投与で激烈な下痢症状など胃腸障害が強く出ることがあり、効果が同じであるならば低用量に越したことはない。

 (4)一方、日本の添付文書を見ると、1日3~4mgが標準用量だ。ただ、予防的には1日0.5~1.0mgとされているので、処方時に医師とよく相談するとよい。
 高尿酸血症発症リスクは、肥満、高血圧、暴飲暴食など。プリン体豊富な肉・魚もだが、実は果糖(フルクトース)が危ない。
 果糖は加工食品や清涼飲料の甘味料としてよく利用される。知らずに大量摂取しかねない。
 まず、日々のジュースや缶コーヒー、コーラの消費量を振り返ってみること。飲み会の「最初の一杯」を制限するのは、その後でいい。

□井出ゆきえ(医学ライター)「痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.328~」(「週刊ダイヤモンド」2016年12月10日号)
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 【参考】
【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~
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【佐藤優】プーチン政権の本質、2017年の論点、ロシアと欧州

2016年12月05日 | ●佐藤優
 ①手嶋龍一『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師』(マガジンハウス 1,500円)
 ②『文藝春秋オピニオン2017年の論点100』(文藝春秋 1,450円)
 ③岡部伸『イギリス解体、EU崩落、ロシア台頭/EU離脱の深層を読む』(PHP新書 780円)

 (1)①は、国際政治の舞台裏を解剖した傑作だ。「パナマ文書」が暴露され、プーチン・ロシア大統領の友人であるロルドゥギンがタックスヘイブンに多額の資産を持っていた事案について手塚氏はこう解析する。
 <なぜかアメリカ財務省はロルドゥギン個人を制裁の対象リストに加えていない。ロルドゥギンという「プーチンの財布」を封じてしまうことは見送っている。プーチン大統領に痛打を浴びせるのは当面差し控えたのだろう。
 ロルドゥギンというチェロ奏者こそ、16年の永きにわたるプーチン宮廷における廷臣のなかの廷臣なのである。プーチンはそうした旧友を、旧KGBの仲間たちとともに周辺に配し、封建諸侯のように遇して、堅牢な「フレンドクラシー」を敷いている。現代ロシアの新しい皇帝なのである>
 プーチン政権の本質が王朝で、制度化された枠組みの外側にいるロルドゥギンのような「友達」が国家意思形成にも関与していることがうかがわれる。外交とインテリジェンスに通暁した手嶋氏にしかできない分析だ。

 (2)②を読むと、各分野の第一人者による高度な分析に触れることができる。
 〈例〉バチカン(カトリック教会)の世界戦略について、松本佐保氏は次のように指摘する。
 <教皇フランシスコの決意は固い。米国がどう出ようとも、2017年に向けた彼の戦略はシリア内戦に確実な休戦合意をもたらすことである。それは武力以外の方法で最終的にISISを解体するという野心も含まれるであろう>
 近代的な国際政治のシステムが崩れつつある中、プレモダン(前近代)な世界観を持つバチカンの影響力が高まっている。バチカンの世界戦略について詳しい松本氏のような専門家がいることは、日本の誇りだ。

 (3)③は、ロシアとヨーロッパの双方に土地鑑と人脈を持つ人にしか書けない作品だ。
 <実際にロシアのプーチン政権は、英国のEU離脱決定後、離脱の混乱で欧州の結束が崩れると踏んで欧州に対して攻勢をかけてきた。EUは7月1日にウクライナ問題を巡る対露制裁を来年1月まで延長することを正式に決めたが、プーチン大統領は欧州各国と個別外交を展開、ウクライナへの軍事介入は継続しながら譲歩はせず、制裁包囲網切り崩しに躍起だ>
 との指摘は事柄の本質を突いている。
 19世紀にロシアと英国は、インド、イランでグレートゲームを展開した。現在、ウクライナで展開されている外交的、軍事的な駆け引きでもロシアと英国は、小さなゲームを展開している。

□佐藤優「プーチン政権の本質 ~知を磨く読書 第177回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年12月10日号)
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 【参考】
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【佐藤優】ロシアでも愛された知識人の必読書 ~安部公房『砂の女』~
【佐藤優】トランプ当選予言の根拠、猫の絵本の哲学、人間関係で認知症を予防
【佐藤優】モンロー主義とトランプ次期大統領、官僚は二流の社会学者、プロのスパイの手口
【佐藤優】トランプを包括的に扱う好著、現代日本外交史、独自の民間外交
【佐藤優】デモや抗議活動のサブカルチャー化、グローバル化に対する反発を日露が共有、グローバル化に対する反発が国家機能を強化
【佐藤優】国際社会で日本が生き抜く条件、ルネサンスを準備したもの、理系情報の伝え方
【佐藤優】人生を豊かにする本、猫も人もカロリー過剰、度外れなロシア的天性
【佐藤優】テロリズム思想の変遷を学ぶ ~沢木耕太郎『テロルの決算』~
【佐藤優】住所格差と人生格差、人材育成で企業復活、教科書レベルの知識が必要
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【沖縄】障害を持つ学生への「情報保障」から“見えるラジオ”へ

2016年12月04日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)9月24、25日に沖縄県で開催された第14回市民メディア全国交流集会(通称メディフェス)の会場では、一つの意欲的な試みが2日間の全プログラムを通じて行われていた。
 壇上でのトークなどが、設置されたモニターで即座に文字化されて伝えられたのだ。
 しかも初日と2日目とで、それぞれ別のシステムが使われていた。
  (a)初日の読谷村(よみたんそん)会場(地元ラジオ局FMよみたんも入る地域振興センター)では「ノートテーク」という、いわば人力での変換・入力方法が採られ、壇上すぐ横のブースにいる沖縄国際大学の福祉・ボランティア支援室の学生たちがトークを聴きながらキーボードで文章化。
  (b)2日目の那覇市会場(なは市民活動センター)では「UDトーク」という自動的に音声を聴き取って文章に変換する専用アプリが使われ、多少の音声認識ミスはあるが、かなりの精度でトーク内容を正しく伝えていた。

 (2)前述の沖縄国際大学の福祉・ボランティア支援室には2013年11月よりFMよみたんの特設スタジオが設置され、同支援室の学生たちによる生放送番組が、ノートテイクによる字幕を掲載したネット配信と一緒に行われてきた。いわば“見えるラジオ”だ。
 同大学経済環境研究所のほか、なは市民活動支援センターやFMよみたんのメンバーでもある稲垣暁(いながきさとる)さん(社会福祉士・防災士)は次のように説明する。「聴覚に障害を持つ学生は講義を音声で聴き取れません。別の学生が彼、彼女らの耳代わりになり、情報保障を行う必要があると考えました」

 (3)学生たちは約1年間の研修を受けて厚労省による資格を取得のうえ作業に入るのだそうだ。
 会場でノートテークを担当した同大学生の渡嘉敷初音(とかしきはつね)さんは大学に入って初めてノートテイクの存在と、同時に「この大学にも聴覚障害者がいる」ことを知ったそうだ。

 (4)聴覚障害も含め、同大学には他にも多くの障害を持つ学生が通う。そうした学生たちへ情報保障を行うという発想がラジオ番組の放送にもつながった。
 脳性麻痺による障害を抱える同大学3年生の上間祥之介(うえましょうのすけ)さんは「ラジオが始まったことで学内に僕のような車椅子の学生がいることを知ってもらえ、理解が深まった」と話す。
 まさに“見える”形でラジオが学内におけるコミュニケーションの潤滑剤として機能しているのだ。

□岩本太郎(ライター)「障害を持つ学生への「情報保障」から“見えるラジオ”へ ~草の根www.第322回~」(「週刊金曜日」2016年10月28日号)を引用
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【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~

2016年12月03日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)世界各国の祝祭日の過ごし方はそれぞれだが、一つ共通点がある。
 それは、家族で美味しい物をたくさん食べること。

 (2)過日、米マサチューセッツ内科外科学会発行の「MEJM」にユニークな研究結果が報告された。
 米コーネル大学の研究チームによるそれは、米国、ドイツ、そして日本の国民の祝日と体重の変化率の関係を調べたものだ。
 方法・・・・いたってシンプル。2012年8月~13年7月の調査期間中、約3,000人の参加者は毎日ネットワーク対応の体重計に乗り、研究者が送られてくる体重の変化を記録し続けた。
 日本の参加者は383人。
   平均年齢41.6歳
   平均体格指数:BMI24.7(11%がBMI25以上の肥満)
 結果・・・・各国とも体重増のピークは
   クリスマス~新年
の家族や友人とともに過ごす時期。クリスマスを挟んだ10日後と10日前で体重を比較したところ、3ヵ国ともクリスマス後に有意に増加。新年のピークを挟んで、元の水準に戻るまで、約5ヵ月を要することがわかった。

 (3)年間の体重変化をよくよく見ると、体重の増減にも社会文化的影響があることがわかる。
  (a)年末年始が体重増のピークであるのは各国共通だ。
  (b)GW近辺に体重増の山があるのは日本だけ。
  (c)米国の第二のピークは、感謝祭が始まる11月末頃から。
  (d)ドイツの第二のピークは、復活祭(イースター)近辺。

 (4)感謝祭は、北米の大事な行事で、毎年この時期には家路を急ぐ人びとで各交通機関が大渋滞に陥る。この研究が、今時期に発表されたのは、このためだろう。
 ドイツの復活祭も、家族が集まる大切な休日だ。

 (5)実は、日本には独特の山がもう一つある。
 それは、3月末~4月にかけて。新年度の歓送迎会で、飲食機会が増えるためだ。
 つまり、日本人は、年始年末の体重増を消化しきれないまま、新年度の歓送迎会、GWの「太りやすい時期」に突入するわけだ。
 健康管理のうえでは、ほどほどに。

□井出ゆきえ(医学ライター)「社会文化的伝統は肥満のもと/年末~春は危険だらけ ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.324~」(「週刊ダイヤモンド」2016年12月3日号)
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 【参考】
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~
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【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~

2016年12月02日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)国民健康・栄養調査(2012年)によると、
   ・糖尿病が強く疑われる成人男女:950万人
   ・糖尿病予備群:1,100万人
にものぼる。糖尿病かその予備群は、
   ・男性の4人に1人
   ・女性の5人に1人
といったありさまだ。

 (2)最近、2型糖尿病の発症リスクとして
   「サルコペニア肥満」
という概念が注目されている。
 サルコペニア肥満は、BMI(体格指数)にかかわらず、筋肉量が標準より低下し、体脂肪率が高い状態だ。さしずめ、「筋肉霜降り状態」といったところ。

 (3)大阪医科大学の研究グループは、
  (a)筋肉量
  (b)2型糖尿病の発症要因であるインスリン分泌能
の関連を検討した。インスリンは血糖の消費を促すホルモンだ。分泌量が低下したり、インスリン抵抗性・・・・働きが鈍くなると、2型糖尿病の発症リスクがぐんと跳ね上がる。
 検討対象は、同大学クリニックの健康診断の受診者。2型糖尿病の既往や治療歴のない40~79歳の成人1,098人(男性538人、女性560人)で、平均BMIは男性23.4、女性21.5だった。
 受診時に手足の筋肉量を測定し、血液検査からインスリンの分泌能、抵抗性を計算している。
 その結果、(a)と(b)の2つの発症要因とは、きれいな正の相関を示した。つまり、(a)が減少するほど、2型糖尿病発症リスクが上がるわけだ。
 また、対象を①健康な人と②糖尿病前症(空腹時血糖値100mg/dL以上、or HbA1c5.7以上)の人に分けて解析した結果、男性は①と②の両群とも、女性は②で、(a)の低下と(b)の低下が関連した。

 (4)若年者がサルコペニアになる要因は、
   ①不活発な生活スタイル
   ②腎不全や癌など重い病気によるもの
   ③食欲不振を起こす薬物による栄養失調、タンパク質不足、etc.
 もともと日本人は遺伝的に欧米人よりインスリン分泌能が低い。病気はともかく、怠惰な生活で健康を損なうのはもったいない。
 サルコペニア肥満の予防は、タンパク質とビタミンDが豊富な食事で。そして、むろん、筋トレだ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「サルコペニア肥満で糖尿病!?/筋肉減でインスリン分泌低下 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.323~」(「週刊ダイヤモンド」2016年11月5日号)
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【佐藤優】国際人になるための教科書、ストレスが人間を強くする、日本に易姓革命はない

2016年12月01日 | ●佐藤優
   
 ①寺西千代子『世界に通用する公式マナープロトコールとは何か』(文春新書 840円)
 ②エリック・ワイナー(関根光宏・訳)『世界天才紀行 ソクラテスからスティーブ・ジョブスまで』(早川書房 2,600円)
 ③大澤真幸『日本史のなぞ なぜこの国で一度だけ革命が成功したのか』(朝日新書 720円)

 (1)①は、プロトコール(国際儀礼)の分野において日本のトップである著者による優れた実用書だ。一段階上の国際人になるための必読書だ。それだけでなく。上級レベルの外国語学習についてもヒントがたくさん記されている。
 <海外で生活しなくとも、私が語学学習で最も役立つと感じているのは、NHKの語学番組のストリーミングです。特に「実践ビジネス英語」はプロトコールを学ぶ上でも必須だと考えています。語彙や文法中心だった昔の語学番組と異なり、今の語学番組は(英語のみならず、フランス語、ドイツ語でも・・・・その他の言語はフォローしていないのでわかりませんが)生活習慣の話題が豊富に取り上げられています。長らく米国の生活から離れている私は「実践ビジネス英語」で、最近の米国エチケット事情を知り、開眼させられることがしばしばです>
 寺西氏のような底力のある外交官がもっと増えてほしい。

 (2)②は、天才が成功するには地道な努力が必要であることを説く。
 <シリコンバレーの模倣が失敗に終わる最大の理由は、単純かもしれないが、あまりにも結果を急ぎすぎるからだ。政治家はまだ在任中に、最高経営責任者は向こう四半期までに成果を求めたがる。そう簡単にものごとは運ばない。アテナイ、杭州、フィレンツェ、エディンバラ。それらはすべて、長い時間をかけて形成された結果であり、幾多の苦難(黒死病やペルシア戦争など)を乗り越えてきた。シリコンバレーの再現をめざす都市や国は、摩擦のない街を創る必要があると考えているが、実際には、天才の地を形成する過程で、ある程度の摩擦や緊張は不可欠なのである>
 ストレスによって人間は強くなっていくのだ。

 (3)③を読むと、皇統(天皇制)の本質がよくわかる。
 <日本に易姓革命はない。その端的な現れは、天皇が姓を持たない、ということである。現在でも、天皇には、睦仁(明治天皇)、裕仁(昭和天皇)、明仁(今上天皇)などの名前はあるが、姓をもたない。民間人も、結婚して、皇室に入ると、姓を失う(小和田雅子さんは雅子様になる)。したがって、当然、天皇制には、王朝の観念はない。現在のイギリスの王室はウインザー朝だが、日本の皇室は何朝でもない>
 という大澤氏の説明は簡潔だが、事柄の本質を正しく説明している。
 他方、沖縄には易姓革命の伝統がある。沖縄は天皇制に包摂されていない領域であるということを認識すれば、政府ももう少しまともな沖縄政策を展開することができるようになる。

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【佐藤優】数学嫌いのための数学入門、西欧的思考にわかりやすい浄土思想解釈、非共産主義的なロシア帝国
【佐藤優】ウラジオストク日本人居留民、辺野古移設反対を掲げる公明党沖縄県本部、偶然歴史に登場した労働力の商品化
【佐藤優】「21世紀の優生学」の危険、闇金ウシジマくんvs.ホリエモン、仔猫の救い方
【佐藤優】大学にも外務省にもいる「サンカク人間」 ~『文学部唯野教授』~
【佐藤優】訳・解説『貧乏物語 現代語訳』の目次
【佐藤優】「イスラム国」をつくった米大統領、強制収容所文学、「空気」による支配を脱構築
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【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
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【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
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