語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【加賀野有理】大掃除の道具

2016年12月14日 | 生活
 師走には毎年恒例の大掃除をする。掃除道具がそろっているかどうかをチェックしたあとは、マスク、ゴーグル、バンダナなどを身に着け、ほこりを払う。特に高所を払うときは、目や頭にほこりをかぶってしまうのでしっかりガードする。
 軍手やゴム手袋は汚れや乾燥から手を守るだけでなく、重い物を移動させたり運んだりする時に便利だ。摩擦によって相当重いものでもかかえられるようになるので必須の道具である。また洗剤を溶かした水に軍手を浸して固く絞った後、手にはめると、ブラインドなどの掃除も楽にできる。
 使い古しのタオルやTシャツなども使える。適当な大きさに切って、水でぬらしたら絞って、使い捨ての雑巾にする。
 使用済みの歯ブラシや割りばし、綿棒などは、レール部分やお風呂のドア周り、トイレの便器の奧などの細かい部分を掃除する時に便利だ。割りばしに、雑巾やキッチンペーパーなどを巻きつけたものも使い勝手がいい。
 窓拭きに適しているのはぬらした新聞紙だ。驚くほど汚れが落ちるので、試してみてほしい。

□加賀野有理(サイエンスライター)「大掃除の道具 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2016年12月7日)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【加賀野有理】サザンカとツバキ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【加賀野有理】サザンカとツバキ

2016年12月13日 | 生活
 この季節、ピンクや白のサザンカが美しい。
 漢字では「山茶花」と書く。これは中国語のツバキ類を指す山茶に由来しているそうで、日本では元来「サンザカ」と読んでいた。それが音位換して「サザンカ」となったという。
 サザンカとツバキは一見似ている。しかし、散り方がまったく違う。サザンカは花びらがハラハラと落ちるが、ツバキは花ごとポトリと落ちる。その様子が首がもげたように見えることから、ツバキは不吉な花だと嫌う人もいる。
 わが家の庭にはサザンカとツバキが隣り合って生えている。いずれも毎年花をつけ、両方の花の落ちる様子を眺めることができる。
 サザンカは薄いピンクの花をつけ、ツバキは真っ白の花だ。この真っ白というのも縁起が悪く、お墓に植える花だという人もいるが、それは気にしていない。
 これからしばらくはテーブルの一輪差しとなったサザンカのピンク色が目を楽しませてくれるだろう。

 【参考】「サザンカ(山茶花)とツバキ(椿)の見分け方

□加賀野有理(サイエンスライター)「サザンカとツバキ ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2016年12月3日)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【食】「きょうの料理」60年を振り返って ~土井善晴(料理研究家)~

2016年12月13日 | 生活
 炊きあがったご飯の釜の蓋をとって、「銀シャリだ」と喜んだことも忘れてひさしく、いつでも、炊きたてのあたたかいご飯を、食べられるようになっていた。
 昭和30年代、炊飯器、冷蔵庫などが徐々に普及していき、華やかなものへの憧れを一つ一つと、誰もが手にいれたのだ。花嫁修業の料理教室を撮った当時の写真には、鈴なりになって調理台をかこむ希望に溢れる若い女性の笑顔がある。時を同じくして、日本人の栄養状態改善を目指し、油脂を摂るため広がったフライパン運動を手始めに、肉を使った中国や洋風料理が家庭の日常となっていった。
 そうして、昭和50年頃、栄養バランスのとれた日本型食事の完成としたが、以後は脂質エネルギー過多に傾き、食の乱れ、アレルギー、メタボなどを原因とする生活習慣病が、今、日本人の死因の6割を占める。
 まさに炊飯器が普及し、家庭料理が多様化しはじめた昭和32年から放送されているのがNHK「きょうの料理」だ。放送開始当時のラインナップを見ると、馴染みのコロッケに加え、シーフードピラフなど新しい洋風料理の名前がたくさん見られる。
 昭和の折り返しにスタートして、60年。この国の食の“今”を伝え、日本人の食にも影響を与えてきた「きょうの料理」には私も昭和62年から出演してきた。食事情が激しく変化していった時代を、世相を象徴する放送テーマで振り返ってみたい。

●『名人の料理』(放送開始~平成10年代)
 ・・・・飯田美雪、村上信夫、陳建民、辻嘉一、父・土井勝などいずれも一国一城の大家を招聘して「きょうの料理」は始まった。今も心に残る講師陣は、その料理哲学を披露し、常に真摯に向き合い日本の家庭料理の基礎を作った。

●『男の料理』(昭和40年代~)
 ・・・・自ら体験した外国の本格的料理などを一流の文化人や企業家が披露した。背景にある民俗や文化に敬意を払い、冒険心豊かに、素材、道具にもこだわった。女性の家庭料理の範疇を冒さない男の料理に徹する。

●『芸術的料理』(昭和50年代~)
 ・・・・フランス料理は偉大なシェフの登場で進化した。その立役者ポール・ボキューズ、ジョエル・ロビュッションなど三ツ星シェフが出演する。新しい独創的な料理がアートであること、料理はクリエイティブという新しいメッセージを与えた。

●『主婦の料理』(昭和と平成をつなぐ時代)
 ・・・・江戸時代以降、プロから学んできた料理を、等身大の家庭料理を担う主婦が講師となって伝えた。

●『グローバル料理』(昭和60年代)
 ・・・・日本在住の外国人が、それぞれの国の伝統料理を披露したことから始まり、旅先で学んだ女性料理家が、イタリアン、エスニック料理を分かりやすくお洒落なキッチングッズを使って、白い器に盛り込んだ。

●『時短・手抜き料理』(平成~)
 ・・・・仕事しながらの子育て、忙しいママを応援する機能的アイデアを持つ時短料理。一昔前なら叱られたであろう手抜き料理が共感を呼ぶ。皿を洗う枚数を少なくできるのが賢い主婦、女性が「料理なんて嫌い」と言える時代の始まり。料理離れを恐れて、料理の楽しさが言われ、「20分で晩ごはん」という、エンターテインメント性の高いテーマが人気を呼ぶ。

●『健康料理』(平成~)
 ・・・・栄養料理といえば美味しくないものとされたが、美味しく減塩するコツ、ダイエットの工夫などを紹介する。

 このように、文脈の異なる食文化が「きょうの料理」という番組の中で放送され、広がっていった。それは家庭料理に多様性を与え、豊かにしてくれるはずだった。
 しかし、エンターテインメント性や娯楽性までも家庭料理に求めたためだろうか、家庭料理における和食は基本を失い、食事作りはストレスとなった。和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたが、このまま持続維持できないなら、返上を余儀なくされると聞く。家庭料理は理想化され、あまりに多様になった果てに、何を作れば良いのかさえ、わからなくなっていた。
 これからも、「きょうの料理」は日本の家庭料理を象徴するだろう。私は和食を初期化することで、ストレスにならない持続可能な家庭料理を取り戻せると考えている。それが「一汁一菜」、汁飯香という和食の原点だ。

□土井善晴(料理研究家)「「きょうの料理」60年を振り返って」(「文藝春秋」2017年1月号)を引用
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】北方領土交渉に必要な反日ロビー活動の封印

2016年12月12日 | ●佐藤優
 (1)12月2日午後(日本時間同日夜)、ロシアのサンクトペテルブルクを訪問中の岸田文雄・外相が、プーチン大統領と会談した。会談で、岸田氏は安倍晋三・首相の親書をプーチン大統領に手渡した。
 <日本側の説明によると、会談は約30分間行われ、プーチン氏は「我々の接触が継続していることを歓迎する。双方が関心を持っているあらゆる問題を協議していきたい」と強調。3日にロシアのラブロフ外相と会談する岸田氏は、プーチン氏訪日に向けて平和条約締結交渉や経済協力について詰めの協議を行う考えを伝えた。
 また岸田氏は、プーチン氏が1日の年次教書演説で「日本との関係が質的に前進することを期待している」と述べたことを「歓迎する」と評価。安倍首相のメッセージを伝え、訪日に向けた準備状況を説明した。プーチン氏は「両国関係の回復をうれしく思う」と言及。経済協力を含めて「幅広い分野で協力していきたい」と語った。>【注1】
 プーチン代という量が述べる「双方が関心を持っているあらゆる問題」には、北方領土問題も含まれている。ただし、領土問題の具体的な解決に向けたシグナルをプーチン大統領は出さなかった。

 (2)翌3日にモスクワで岸田外相はロシアのラブロフ外相と約2時間40分にわたる会談をした。
 <共同記者会見で、岸田氏は「平和条約締結問題については時間をかけてじっくり議論した」と強調。これに対し、ラブロフ氏は「両国の立場を接近させることは簡単ではない」などと語り、北方領土問題をめぐる双方の溝をのぞかせた。
 会談は昼食も交えて行われ、北方領土問題を含む平和条約締結交渉や日本側が提案する8項目の経済協力プランなどが議論された。
 岸田氏は会見で、平和条約締結交渉について「日ロの国民から歓迎される成果を出したい」と意欲を示した。15、16両日に日本で予定される首脳会談時の成果としては、ビザの緩和で「公表できる準備が整った」と述べた。
 一方、ラブロフ氏は日ロが北方領土で合弁事業などを進める「共同経済活動」に言及。「今年に(首脳)行われた(首脳)会談で、首相は何ができるか検討することを提案した。プーチン大統領は合意し、検討が始まっている」と述べた。また、平和条約締結後の日本への歯舞、色丹2島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を取り上げて「変わらない点は、他の何にも先立って平和条約を締結しなければならないということだ」と強調した。>【注2】

 (3)ラブロフ外相の発言で興味深いのは、北方領土での「共同経済活動」について、安倍首相から提案があったという認識を示していることだ。これまでの日本での報道では、11月19日、ペルーのリマで行われた日ロ首脳会談で、
 <プーチン氏は、領土交渉とは別に北方領土にロシアの主権下で日本が投資を行う共同経済活動の必要性に言及した。ただ、日本が現状のまま経済活動を行えばロシアの領有権を認めることにつながりかねず、日本側はこれに返答はしなかった。>【注3】
 ということだった。
 ラブロフ外相の発言が事実ならば、日露双方の法的立場を毀損しない形での北方領土における共同経済活動が模索されていることになる。さらにラブロフ外相が「他の何にも先立って平和条約を締結しなければならない」と指摘したのは、日露平和条約が締結されれば1956年の日ソ共同宣言で約束された歯舞群島と色丹島の日本への引き渡しを(ソ連の継承国である)ロシアが行うという基本的なゲームのルールを確認している。
 所与の条件下で、プーチン大統領もラブロフ外相も日露関係改善の気運が失速しないように最大限の配慮をしている。

 (4)日本の報道を見ると、リマにおける日露首脳会談後、北方領土交渉に対する悲観的な見通しが強まっている。会談後、安倍首相は、
 <領土問題を含む平和条約締結交渉について記者団に「(条約締結が)70年間できなかったわけで、そう簡単な課題ではない。解決に向け道筋が見えてはきているが、一歩一歩、山を越えていく必要がある。大きな一歩を進めることはそう簡単ではないが、着実に前進していきたい」と語った。>【注4】
 「一歩一歩、山を越えていく必要がある」という表現に交渉の難しさが滲み出ている。首相官邸や外務省は秘匿しているが、この会談でプーチン大統領は、歯舞群島、色丹島が日本に引き渡された後に、これらの諸島に米軍基地が建設される可能性について質している。こういう交渉を複雑化する問題をこのタイミングでプーチン大統領が提案した背後には、ロシア権力中枢部での抗争がある。
 11月15日、日本との経済協力の窓口になっていたウリュカエフ・ロシア経済発展相が賄賂容疑で拘束された。この事件は日露関係と直接絡んでいる。
 歯舞群島と色丹島が日本に引き渡されれば、その周辺のEEZ(排他的経済水域)も日本のものになる。さらに日露両国が歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の「非軍事化」に合意する可能性もある。そうしないと日本に返還された後の歯舞群島、色丹島に日米安保条約に基づいて米軍が展開する可能性があるからだ。ロシアの漁業ロビーからすれば、歯舞群島、色丹島の引き渡しによってギョギョ利権を失う。さらに北方四島の非軍事化が実施されれば、軍も影響力が弱まる。これらの対日関係改善に反対する勢力が、ウリュカエフを標的にした工作をかけたらしい。この種の陰謀は、外部からはなかなかわからない。しかし、ロシアの権力構造を正確に把握しておけば、こういう陰謀がなぜ起きるかがわかる。プーチンが専制君主もしくは独裁者で自らが意図することならば、必ず実現できるという見方は間違いだ。ロシア情勢に通暁した米国人ジャーナリストのチャールズ・クローヴァー氏は、
 <彼(引用者註*プーチン)の権威は、信じがたいことを進んで受け入れるという上級エリートの意図的な自己欺瞞、つまり、完璧な専制的権力というスペクタクルにおける全般的な馴れ合いにますます依拠しているように見える。現実はもっと込み入っているはずだ--党派や血族・同郷集団が相互にぶつかり合う場合には自由自在とはいかないだろうし、ルールはほとんどなく、共同作業で書かれた台本で演じられる複雑で待ったなしの政治劇場でおたがいに挑戦し合い、境界線を押し合いへし合いしながらひしめき合う。「クレムリンは塔だらけ」とは言い古された言葉ながら、まさにその通りなのだ。>【注5】
 と指摘するが、ここで指摘されているような権力抗争がロシアの政権中枢で生じているために、プーチン大統領は北方領土に関する決断ができないような状態になっている。
 状況を改善させるためには、日本側がクレムリンの対日関係改善派と手を握って、反日ロビーの活動を封じ込めていく必要がある。「ロシア側の事情だから仕方ない」と言って事態を傍観しているならば、北方領土交渉は前進しない。

 【注1】記事「日ロ、首脳の親書を交換 岸田外相「領土問題、考え伝えた」」(朝日新聞デジタル 2016年12月3日)
 【注2】記事「北方領土問題「簡単ではない」 外相会談後、ラブロフ氏」(朝日新聞デジタル 2016年12月4日)
 【注3】記事「北方領土で「共同経済活動」 プーチン氏言及 日本側、返答せず 日ロ首脳会談」(朝日新聞デジタル 2016年11月21日)
 【注4】前掲朝日新聞デジタル記事
 【注5】『ユーラシアニズム』、NHK出版、2016、474頁

□佐藤優「北方領土交渉に必要な反日ロビー活動の封印 ~飛耳長目 第126回~」(「週刊金曜日」2016年12月9日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【佐藤優】沖縄に対する構造的差別 ~「土人」発言~
【佐藤優】尖閣諸島から米国が手を引く可能性 ~北方領土交渉と日米安保~
【佐藤優】ウズベキスタンにIS流入の危険 ~カリモフ大統領死去~
【佐藤優】国後島で日本人通訳拘束/首脳会談への影響は ~実践ニュース塾~
【佐藤優】モサド長官から学んだインテリジェンスの技術
【佐藤優】ロシア大統領府長官にワイノ氏就任の意味 ~北方領土交渉~
【佐藤優】西郷と大久保はなぜ決裂したのか ~征韓論争~
【佐藤優】開発独裁とは違う明治維新 ~目的は複数、リーダーも複数~
【佐藤優】岩倉使節団が使った費用、100億円 ~明治初期~
【佐藤優】反省より不快示すロシア ~五輪ドーピング問題~
【佐藤優】 改憲を語るリスクと語らないリスク ~改憲問題~
【佐藤優】+池上彰 エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】スコットランドの動静と沖縄の日本離れの加速
【佐藤優】沖縄の全基地閉鎖要求・・・・を待ち望む中央官僚の策謀
【佐藤優】ナチスドイツ・ロシア・中国・北朝鮮 ~世界の独裁者~
【佐藤優】急進展する日露関係 ~安倍首相が取り組むべき宿題~
【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~
【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~
【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~
【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~
【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~
【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ
【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~
【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~
【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~

【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~
【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~
【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方
【佐藤優】国内で育ったテロリストは潰せない ~米国の排外主義的気運~
【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~
【佐藤優】知を身につける ~行為から思考へ~
【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて
【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~
【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~
【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~
【佐藤優】分析力の鍛錬、事例、実践例 ~知の教室・抄(3)~
【佐藤優】武器としての教養、闘い方、対話の技術 ~知の教室・抄(2)~
【佐藤優】知的技術、情報を拾う・使う、知をビジネスに ~知の教室・抄(1)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~
【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~
【佐藤優】すべては国益のため--冷徹な「計算」 ~プーチン~
【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 ~ソ連の手口と酷似~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 ~昭和史(10)~
【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ミステリーの雑学】北極海の氷が解けて日本の漁業が終わる

2016年12月11日 | ミステリー・SF
 <「いえ、地球温暖化に関しては笑い話では済まなくなってきているのです」
 伊東が興味深そうに頷く。
「近い将来、大変なことになりますか」
「実は、北極海が危ないのです。昨年の夏、北極上空をノルウェーの政府関係者と一緒に調査飛行したのですが、何と、氷の半分近くが解けて海面がポツポツとため池のように現れているのです」
「北極海の氷が解けるって、しかし冬は凍るのでしょう」
「冬は確かに凍ります。しかし、夏にあのような状況になったのはこの数年ということで、年々、夏の解けている部分の面積は広がっているというのです」
「解けてもまた凍ればいいような気がしますが、違いますか」
「北極が凍っていれば白い氷原となって、太陽の光を80パーセント以上反射してくれるのだそうです。しかし、そうでなければ海は太陽光によって熱を吸収し、より北極圏の氷が解けるのです。そうなれば地球上の海面水位は上昇し、地球上で沈んでしまう国家や地域が増えてしまうことになりそうなのです」
 黒田は地理的、科学的な情報にも常に関心を払っている。
「なるほど。一旦解けて広がった氷水は元には戻らないのですね。あと何年くらいで北極海の氷は解けてしまいそうなのですか」
「15年持つかどうか」
「わりと近い未来ですね」
 伊東は静かにため息をついた。
「シロクマは絶滅するでしょうし、世界の海流が大きく変わる可能性があります。特に北半球の寒流は一気に弱くなり、暖流が北海道辺りまで勢力を保って上ってくることになるでしょう」
「日本の漁業が終わってしまいますね」
「そういうことですよ」
 伊東の読みは的確だった。
「実は今でも東京湾の魚が釣れなくなったと、常連の釣り師、中島師匠が言っているんですよ。最初は中国や台湾の船が日本近海で大量に獲っているからだと言っていたんですが、どうやら南の方から来た獰猛な魚が、元からいる魚を食い尽くしているからかも、という話もありましてね」
 カウンターから敏ちゃんが話に加わった。
「その可能性は否定できませんね。それにクジラが増えすぎています。ノルウェーはいまだに商業捕鯨を続けていますが、クジラをもっと減らさないとイワシやニシンが激減してしまうと漁師が嘆いているそうです。日本は立場上、大きな声では言えないようですが、水産資源を守るためにも誰かが言い出さなければならない時が来ているようです」>

□濱嘉之『ゴーストマネー』(講談社文庫、2016)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【ミステリーの雑学】中国式乾杯 ~白酒(パイチュウ)~
【ミステリーの雑学】外逃した汚職官僚の「キツネ狩り」 ~中国公安部~
【ミステリーの雑学】カードの個人情報漏洩 ~防止法は~
【ミステリーの雑学】EU崩壊の序章 ~フランスにおける次回のテロ~
【ミステリーの雑学】フランスの原発 ~テロのターゲット~
【ミステリーの雑学】紙幣が流通する期間は何年間か?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ミステリーの雑学】中国式乾杯 ~白酒(パイチュウ)~

2016年12月11日 | ミステリー・SF
 <白酒(パイチュウ)は、中国の穀物を原料とする蒸留酒である。主原料から高梁酒(カオリャンチュウ)ともされている。白酒のアルコール度数は50度以上が当たり前だったが、近年はアルコール濃度を下げた38度の白酒が主流になっている。(中略)
 中国の公式晩餐会で乾杯の酒と呼ばれた、五穀すなわち高梁・トウモロコシ・粳米・糯米・小麦から作られた五粮液(ウーリャンイェー)が最高の白酒といわれていた時代があった。
 (中略)ややとろみを感じる透明の液体が乾杯用に使われる小さいグラス、小酒杯に注がれた。
 黒田はグラスを鼻先に持っていくと香りを味わった。
「いい香り」
 主人が笑顔で黒田の仕草を眺めている。
 黒田はグラスに静かに口をつけ、ほんの少し含んだ。数秒の間味わうと、そのままおもむろにグラスの中身を咽喉(のど)に流し込んだ。その後大きく息を吸って息を止め、ゆっくりと鼻から息を吐いた。
「美味しいなあ」
 そう言うと黒田は主人に向けて杯を逆さにして、飲み干したことを示した。
「お客様は本当にお好きなんですね。でも最近はその仕草をする人は少なくなりましたよ」
「ほお、乾杯の時もやらなくなりましたか」
「そのようです。中国の乾杯が酒の強要と思われるのを避けるためかもしれませんが、白酒が乾杯に使われないようになってきましたね」
 時の流れというものか。>

□濱嘉之『ゴーストマネー』(講談社文庫、2016)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【ミステリーの雑学】外逃した汚職官僚の「キツネ狩り」 ~中国公安部~
【ミステリーの雑学】カードの個人情報漏洩 ~防止法は~
【ミステリーの雑学】EU崩壊の序章 ~フランスにおける次回のテロ~
【ミステリーの雑学】フランスの原発 ~テロのターゲット~
【ミステリーの雑学】紙幣が流通する期間は何年間か?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ミステリーの雑学】外逃した汚職官僚の「キツネ狩り」 ~中国公安部~

2016年12月11日 | ミステリー・SF
 <「中国もクレジットカード社会になりつつありますからね」
「とくに若い世代はカードのキャッシングをよく使う」
「ですか」
 中国銀聯(ぎんれい)カードは世界一発行枚数が多いクレジットカードと言われている。発行枚数は45億枚を超えているらしい。このカードは銀行のキャッシュカードを兼ねたデビットカードで、中国国内の銀行に口座を作れば自動的に発行される。中国人にとっては、本来クレジットカードを持つことができない低信用の者でもこれを手にすることができる。
「銀聯カードは日本のATMから現金を引き出せるのですか」
「一部のATMだけだが可能だ。今回被害にあったフレンドマートのATMでは、限度額が原則20万円なんだ」
 銀聯カードの暗証番号は6桁だから、銀聯カードによるキャッシングの場合には、世界のほとんどのクレジットカードが4桁で動作が止まるのに、ATMが銀聯カードを認識すると6桁を打ち込むまでは画面が変わらない。
「ATMマシーンも銀聯カードの使用を意識した作りになっているわけですか」
 今や世界中の先進国が、中国マネーを呼び込もうとしているのかもしれない。
「世界中で銀聯カードで金が引き出されているということですか」
 黒田は頷いた。
「今後、中国国内でATM不正引出しの犯罪が起こる可能性もありそうですが」
(中略)
 中国には、中国人民銀行の他に中国農業銀行、中国建設銀行、中国銀行、中国工商銀行の四大銀行がある。そしてこの四大銀行で中国全体の資産の8割を集めている。
「一般国民からすれば、どうせ損をするのは国家でしかないというところだろう」
「国家イコール共産党幹部、という図式なのでしょう」
 憎しみが極限まで達したときに何が起きるのか。
「それにさらに火を付けたのがパナマ文書の影響だ。今回のパナマ文書が出てきて、習近平の名前が取りざたされたことが大きな問題になりつつある」
(中略)
「中国当局は国内の報道だけでなく、海外メディアの報道についても神経をとがらせている様子で、すぐにインターネットの閲覧をできなくしたようですが」
「中国国内ではね」
 ただ、最近の標準的な富裕層の多くは子弟を海外に留学させているから、ネット情報を国内でいくら消しても、知ることができる者は確実に増えていた。
「情報の逆輸入は容易になりましたから」
「それを共産党幹部は一番恐れていると言って過言ではないな。おまけに愛人にはアメリカで子供を産ませているわけだから、その連中もまた賄賂社会の裏側を知り尽くしている」
「アメリカに愛人を置いている幹部はいつでも本国脱出ができるように準備しているわけですね」
「アメリカ国籍を持った子供の父親として居住権を獲得できるからな。そのための金も徐々に持ち出して周到に準備を進めているんだ」
「もし、中国国内で暴動と言うか、反政府活動が起こるとすればいつ頃なのでしょうか」
「それは何とも言えない。中国政府だって指をくわえて待っているわけではない。兆(きざ)しを見つけた段階で徹底的に潰していくだろうし、脱出を企てている幹部連中はトップを目指しているわけじゃないから、適当な時期に金を押さえてしまえばいいだけだ」
「なるほど。不正蓄財による財産の没収ということですね」
「そのために多くの公安要員をキツネ狩りと称して海外に送っているんだ」
 キツネ狩りとは、海外に逃亡した汚職官僚を追跡する作戦のことで、2013年に開始され、既に400人を超える汚職官吏が拘束されている。
 中国人民銀行によると、1990年代半ばから国外に逃亡した官僚や国有企業の職員は1万6千人を超え、持ち出した金額は15兆2,000億円にもなるという。中国政府は、フランス、オーストラリア、カナダなどの主な逃亡先相手国に、回収資産の一部を与えることを条件に、横領資産の回収で協力を得ている。2015年1月、国家公安部は2014年後半の「キツネ狩り成果」として、全世界69の地点から、689人のキツネを逮捕したと発表した。その際、10年以上の外逃生活を続けていたものが117人いたことを明らかにしている。>

□濱嘉之『ゴーストマネー』(講談社文庫、2016)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【ミステリーの雑学】カードの個人情報漏洩 ~防止法は~
【ミステリーの雑学】EU崩壊の序章 ~フランスにおける次回のテロ~
【ミステリーの雑学】フランスの原発 ~テロのターゲット~
【ミステリーの雑学】紙幣が流通する期間は何年間か?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ミステリーの雑学】カードの個人情報漏洩 ~防止法は~

2016年12月11日 | ミステリー・SF
 <「クレジットカード会社のデータにどのようなプロテクトをかけることができるかだな」
「EMV仕様のカードと、磁気ストライプ式のカードはどう違うのでしょうか」
「栗原、もっと勉強しないとな」
 EMV仕様とは、一般的な外部端子付ICカードの物理的・機能的条件等を規定した国際規格金融分野向けに必要なICカードと端末の仕様を規定したものである。
「磁気ストライプ式カードは、いわゆる普通のIDカードのようなキャッシュカードですよね」
 磁気ストライプは読み取り機の磁気ヘッドに接触させ、スライドさせることで読み取ることができる。磁気ストライプカードはクレジットカードやIDカード、交通機関の切符などによく使われている。
「そうそう」
「SuicaとかPASMOはどちらになりますか」
「あれは非接触式のICカードだ」
 非接触式カードとは、カード内部にアンテナを持ち、外部の端末が発信する弱い電波を利用してデータを送受信するICカードのことである。
 接触式ICカードと違って読み取り端末に接触させなくても処理が可能なため、振動やほこりが多い環境での運用に適している。また、カードを抜き差しする手間がないため、高速な処理が必要な鉄道やバスの決済処理には非接触式カードが使われている。
「非接触? 自動改札などを通過するとき1秒以上タッチするように案内していますよね」
「あれは非接触式カードであることを、あえて利用者に知らせないためのアナウンスなんだ」
「知りませんでした」
「以前、バッグの底に非接触式カードを入れたまま、自動改札を通過できるから便利だなんて言われた時期があった・しかし、そのICカードデータが電車内でスキミングされる被害が増えて、結果的にバッグメーカーがその生産を中止した」
「犯罪者は狙ってきますね」
 スキミングとは、カード犯罪で多く使われる手口の一つで、主に磁気ストライプカードに書き込まれている情報を抜き出し、全く同じ情報を持つクローンカードを複製する犯罪である。そして、ICカードでも非接触の場合には、そのカードの磁気に記録されている各種データを、カード情報を読み取る機能を持ったスキマーと呼ばれるスキミングマシンによって盗み取ることができた。
「非接触式ICカードの怖さがそこにあるんだ。だから入金金額の上限は2万円に制限されている」
「私のPASMOはクレジットカード機能も付いているんですが」
 ポケットからカードを取り出した栗原は心配顔だ。
「非接触式カードと併用されているクレジットカードは、クレジットカード部分には通常のEMV仕様が付けられているんだよ」>

□濱嘉之『ゴーストマネー』(講談社文庫、2016)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【ミステリーの雑学】EU崩壊の序章 ~フランスにおける次回のテロ~
【ミステリーの雑学】フランスの原発 ~テロのターゲット~
【ミステリーの雑学】紙幣が流通する期間は何年間か?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ミステリーの雑学】EU崩壊の序章 ~フランスにおける次回のテロ~

2016年12月11日 | ミステリー・SF
 <「ところで、海外研修中のレポートを幾つか見せてもらったよ。唸らされるものが多かったけれど、イギリスのEU離脱の観測はなるほどと思ったよ」
 小山田は何度も頷いてみせた。
「自分の目と足で現地をつぶさに見て回れば自ずと出てくる帰結でした。経済と教育レベルが低い東欧諸国がこぞって加盟し、トルコまで加盟しようとしている現状を考えればわかります。EUの理念である政治平等と経済統合は発展途上国にとっては都合が良いでしょうが、限られた先進国にとっては、まさに主権の喪失にほかなりません」
「主権の喪失ね。なかなかうまい表現だ」
「EUからはギリシャ、スペイン、イタリアが脱退する可能性が高いですが、意外とフランスもあり得るかもしれません」
「へえ、フランスかい」
 小山田が素っ頓狂な声をだした。
「フランス国内でこれ以上難民によるテロが発生した場合、必ずEU脱退の声が自然発生的に湧き上がってくると思います。この時がEU崩壊の序章となると思います」

□濱嘉之『ゴーストマネー』(講談社文庫、2016)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【ミステリーの雑学】フランスの原発 ~テロのターゲット~
【ミステリーの雑学】紙幣が流通する期間は何年間か?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ミステリーの雑学】フランスの原発 ~テロのターゲット~

2016年12月10日 | ミステリー・SF
 <「確かにフランスはドイツとイギリスの間にある国で、しかも農業国という点でアフリカのイスラム原理主義者の間ではターゲットになっているのだろう」
「食物を輸出できる国はヨーロッパではフランスだけだ」
「フランスのどこをターゲットにすると思う?」
「ターゲットとしては原発かフランス空軍か」
「ISILに最も多く参加している国がチェニジアと伝えられている。そしてフランスからの電力輸入なくしてドイツの工業は成り立たないんだ。ジュンはフランスという国をどう思っている?」
 クロアッハの質問に黒田が大きく溜息をつく。
「フランス革命によって自由を手に入れた国ではあるが、それ以前の王制当時の遺産で生きている国という感じかな」
 黒田の目にはフランスは大きな魅力のある国とは映っていなかった。
「なかなか鋭い見方だな。観光立国を謳っておいて未だ人種差別も根深い」
(中略)
「西側諸国が最も気を付けなければならないのは、ISILにフランスの原発をターゲットにさせないことだ。彼らは必ずそこを狙ってくる。それもドイツに一番近い原発を」
 悪夢のような話である。クロアッハは続けて言った。
「一番危ないのはカットノン原子力発電所。フランス第一の規模であるグラヴリーヌ原子力発電所に続く、フランス第二の原子力発電所だ」
「それがドイツ国境近くにあるのか」
「フランス北東部のモゼル県にある。施設はモゼル川の西あり、ドイツのペルルからわずか10キロの位置だ」
(中略)
「フランスは世界一原子力発電の割合が高い国で、全発電量の77パーセントを原発に頼っている」
「ウランスはウランの供給源を政情の安定したカナダやオーストラリアに頼っている。ウランは一度輸入すれば数年間使うことができるからな。原子力を準国産エネルギーと位置づけている」
「もともとフランスは優秀な核科学者を多数輩出していたな」
「そうだね。19世紀に初めて放射線を発見したアンリ・ベクレルをはじめ、放射性元素や放射線の研究で知られるキューリー夫妻などだ。戦前からフランスの原子力研究は、原子炉設計のみならず、半導体製造や医療応用など基礎研究から応用研究まで早い時期から原子力エネルギーの運用に貢献していたんだ」
「だから誰も文句を言えない。悪魔のエネルギーでありながら永遠のエネルギーでもあるからな」
「もし、カットノン原子力発電所か、フェッセンアイム原子力発電所で事故やテロが発生すれば、世界の経済は根底から揺らぐことになる」
 これはヨーロッパだけの危機ではなく、まさに世界経済に大打撃を与える悪夢なのだろう。黒田は思わず眉をひそめて聞いた。
「フェッセンアイム原子力発電所というのは」
「フランスのオー=ラン県フェッセンアイムにある原子力発電所だ。施設はアルザス大運河の西岸にあり、南へ40キロ行けばスイスのバーゼルがある」
「バーゼルはスイス唯一の“貿易港”だな」
「そう、バーゼルはスイス第三の都市で、ドイツとフランスとスイスの三国の国境が接する地点だ。大型船舶が通航できるライン川最上流の港を持つ最終遡行地であることまではあまり知られていないがね」
 クロアッハが笑いながら答えた。
「そのバーゼルまで影響を及ぼすとなると確かにヨーロッパ経済を揺るがすことになるな。ISILだけでなく、イスラム原理主義の狂気がそこまで進まないことを願うだけだよ」
「『狂気は個人にあっては希有なことである。しかし、集団・党派・民族・時代にあっては通例である』だな」
「ほう、ニーチェか」
「イスラムの下層市民が爆発するのを事前に阻止することが先進国の使命になってくるな」>

□濱嘉之『ゴーストマネー』(講談社文庫、2016)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【ミステリーの雑学】紙幣が流通する期間は何年間か?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ミステリーの雑学】紙幣が流通する期間は何年間か?

2016年12月10日 | ミステリー・SF
 <銀行をはじめとする各金融機関は、利用者から預かった紙幣のうち当面使用しないものを、日々日本銀行本支店に持ち込んでいる。日本銀行当座預金に預け入れるためだ。こうして銀行券が日銀に戻ってくることを、環収という。>

 <1万円札の寿命は、およそ4年から5年程度だという。銀行券が再流通に耐えられるか否かの判断は自動鑑査機が行う。廃棄となる銀行券は、自動鑑査機に組み込まれたシュレッダーにかけられ、1.5ミリ×11ミリの大きさにまで細かくされ、処分されるという。>

 <「そうだ、普段は100枚単位で裁断されるらしいが、(後略)」>

 <かつては回収した紙幣を溶解設備で溶かし、段ボールやティッシュペーパーの材料の一部などに再利用していた。古びた紙幣の最終処理はすべて本店で行っていたらしい」>

 <いや、現在では7割程度、住宅用の建材や固形燃料などにリサイクルされているんだよ。それ以外の裁断屑は、一般廃棄物として各地方自治体の焼却施設において焼却処分されている」>

 <「1万円紙幣1枚は約1グラムとして、(1,500億円の重量は)15トンだな。(後略)」>

 <「日本の紙幣には靱皮(じんぴ)繊維のミツマタや、天然繊維の中で最も強く弾力のあるマニラ麻の葉脈繊維など、特殊な原料が使われている。そのため特に普通紙にリサイクルするのは、なかなか難しいと聞いたことがあります。また、紙幣の塊を焼却するのは意外と大変だそうです。普通紙より紙幣は水分量が多いからと言われています」>

 <「(前略)世界の紙幣の中で物理的に最も強度があるのはアメリカドル紙幣。次が日本紙幣だということです」>

 <「シークレットサービスですが、設立時の本来の任務は、偽造通貨の取締り、様々な不正経理犯罪、個人情報窃盗の捜査、地域犯罪における科学捜査情報の提供だったのです。(後略)」>

 <寿命が過ぎたお札は、年間およそ3,000トンあると言われていますから、数にして30億枚が廃棄されていることになります。これがすべて1万円札とすれば、1年で30兆円相当の紙幣が棄てられているのですか・・・・」>

□濱嘉之『ゴーストマネー』(講談社文庫、2016)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【保健】身近な食品で今日から健康に(2) ~落花生~

2016年12月10日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)2013年1月、スペインの王立研究所が、約3,500人を対象に実施した追跡研究の結果を発表した。

 (2)この研究では、まず①エクストラバージンオリーブオイルを多く含んだ食事を摂ったグループの糖尿病発症リスクが抑制されたことに注目が集まった。さらに②約30グラムのナッツを加えた地中海食のグループも糖尿病発症リスクが約18%低下した。
 研究の発端は、長寿で知られるクレタ島だ。クレタ島民の心疾患リスクが極めて低いことに注目が集まり、研究が開始された。当初の研究では、オリーブオイルなどを多く含む地中海食は心血管系疾病リスクを約30%低下させることが報告された。それを受けて糖尿病に関してもサブ解析を行った結果、糖尿病にも効果があることがわかった。

 (3)「実践法」・・・・ナッツならどの種類でも構わないとされるので、落花生などが手軽。1日の消費量は実験結果と同じく30グラム程度が目安となる。
 落花生は1粒およそ1グラム。1日30粒ほど食べれば糖尿病の予防に繋がるわけだ。
 落花生は、予防だけでなく、すでに治療現場でも活用されている。糖尿病治療のため糖質制限食を実践している患者に落花生をおやつ代わりに食べることをすすめてている。腹持ちがよい上に糖質が少ないから、血糖値の上昇を最小限に抑えられる。

 (4)落花生は糖尿病の合併症予防にも効果があるという。
 落花生はオレイン酸という良質な脂肪を多く含んでいる。糖尿病の三大合併症とされるのは、腎障害、網膜症、神経障害だ。これらは血糖値を抑えればコントロールできる。問題はこれ以外の動脈硬化に由来する大血管合併症だ。これは血糖値を抑えるだけでは防げないが、オレイン酸は動脈硬化予防に効果的だ。

 (5)血糖値を低下させるインスリン合成に重要な役割を持つのが亜鉛だ。
 亜鉛はインスリン合成に不可欠だ。ところが糖尿病患者は、尿酸中の亜鉛の排泄量が増加するため、亜鉛が欠乏する傾向にある。そのため亜鉛を補給することが必要になる。牡蠣に多く含まれるほか、イカやカニなどの魚介類、牛肉などにも多く含まれている。

 (6)合成されたインスリンを正常に働かせるためにミカンが重要だという研究結果もある。三ヶ日ミカンの産地として知られる浜松市の三ヶ日町を舞台に研究を行っているのが、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門だ。
 2003年から三ヶ日町で約千人の住民を対象にした疫学調査を行っている。2006年には、温州ミカンをだいたい1日3、4個食べている人は1日1個以下の人に比べて、インスリン抵抗性リスクが半分程度という論文を発表した。現在、さらなる追跡調査で検証している。
 インスリン抵抗性とは、インスリンの効きが悪くなっている状態を指す。抵抗性が高くなれば、血糖値が下がりにくくなる。
 温州ミカンに特徴的に含まれるβ-クリプトキサンチンがポイントだ。ミカンをたくさん食べると肌を黄色くさえる物質で、インスリン抵抗性リスクを下げる効果を持つことが動物実験からもわかっている。
 三ヶ日町を含む浜松市は、健康寿命が全国で1位となったことでも知られる。

 (7)ただ、ミカンには注意すべき点もあるという。
 ミカンは予防効果があるかもしれないが、糖質が多く含まれているため要注意だ。既に糖尿病の人や予備軍は控えたほうがよいかもしれない。

□守屋浩司・編『人生を変える! 食の新常識/カラダにいい食事 決定版』(文春ムック、2016)の「身近な食品で今日から健康に!」(初出「週刊文春」2015年5月28日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【保健】身近な食品で今日から健康に(1) ~チョコレート~
【保健】意外や意外、卵で糖尿病は予防できる
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【保健】身近な食品で今日から健康に(1) ~チョコレート~

2016年12月09日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)愛知学院大学、愛知県蒲郡市、お菓子メーカー明治の共同研究。

 (2)2014年6月から7月にかけて、45歳から69歳までの347人の男女を対象とし、カカオポリフェノールを多く含むカカオ分72%のチョコレートを1日25グラム、4週間食べ続けてもらい、摂取前後の身体の変化を調べた。
  (a)顕著な結果が見られたのは血圧。被験者平均の血圧で、上(収縮期血圧)が2.6、下(拡張期血圧)が1.9下がった。注目すべきは血圧が高めな人ほど低下量が大きかったこと。正常血圧の人は1.6ほどの低下だったが、140以上の高血圧群では6程度の血圧低下が確認された。
  (b)認知機能に係る数値も改善された。脳由来神経栄養因子(BDNF)の値が増加した。これは近年の認知症研究で注目されている記憶力を向上させるタンパク質で、認知症や鬱病に罹ると減少する。チョコの摂取前は男女平均で6.07だったが、摂取後は7.39に改善した。男女別にみると、わずかだが女性の方が増加量が多かった。BDNFは、これまでも運動により増加することが知られていたが、チョコを食べるだけで増加したのは画期的なことだという。
 チョコを食べるだけで、なぜこうした効果が起きるのか。
 (a)については、チョコに含まれるカカオポリフェノールの抗炎症作用が、血流を妨げている血管内の炎症に対して働きかけたことが要因と考えられている。炎症を軽減し、血管を広げて血流を改善したことにより、結果として血圧を低下させた。余談ながら、肌のしわは炎症反応により発生する。カカオポリフェノールの抗炎症作用で、しわ予防も期待できる。
 (b)については、カカオポリフェノールの抗酸化作用により、BDNFが増加したものと見られる。体や脳の酸化を防ぐ作用で、アンチエイジングにも効果がある。

 (3)チョコは高カロリーだが、肥満リスクについては、1日25グラムはチョコ5粒で、150キロカロリー程度でしかないから、被験者の体重やBMIには変化が見られなかった。メタボリックシンドロームの心配はない。
 なお、食べるのはカカオ分を多く含むチョコがよい。目安は7割以上。それ以下だとたくさん食べる必要があるので、カロリー過多になる可能性がある。

□守屋浩司・編『人生を変える! 食の新常識/カラダにいい食事 決定版』(文春ムック、2016)の「身近な食品で今日から健康に!」(初出「週刊文春」2015年5月28日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【保健】意外や意外、卵で糖尿病は予防できる
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社会哲学】言語社会学の諸問題--ひとつの集約的報告 ~ベンヤミン~

2016年12月09日 | 批評・思想
 
 ベンヤミンが「社会研究誌」に発表した論文は5編だ(10編に及ぶ書評を除く)。
 そのうち「言語社会学の諸問題--ひとつの集約的報告」(1935年)は、ヘルダーの言語理論からはじまって、ゴルトシュタイン(神経生理学者・精神医学者)の最新の研究までを見渡したものだ。ジャン・ピアジェの発達心理学、さらには、間接的とはいえ、ソシュールの言語論にも触れられていて、ベンヤミンの特異な言語論の背景を考える上でも貴重な論考だ。そもそも、言語学と社会学の接点に焦点を置いた、言語社会学という発想自体が当時としては斬新だ。

□細見和之『フランクフルト学派 ホルクハイマー、アドルノから21世紀の「批判理論」へ』(中公新書、2014)の「第3章 亡命のなかで紡がれた思想--ベンヤミン」 
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【社会】格差社会における「承認の欠如」 ~第三世代のフランクフルト学派~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】トルキスタンの分割、変容する民族意識、ユーラシア主義の地政学

2016年12月08日 | ●佐藤優
 (1)収容所群島をつくったことによって政治的に断罪されたスターリンは、ジョージア(グルジア)人だ。
 グルジア人は不思議な言語をしゃべる。世界の言語はだいたい主格と対格がある。アラビア語も日本語も朝鮮語も中国語も全部一緒だ。ところが、ごく一部にだけ、主格・対格構造をとらない特殊な言語がある。能格・絶対格構造をとっている言語が世界のごく一部にあって、それがバスク語、グルジア語、チェチェン語、アディゲイ語などだ。これらの言語は動詞の変化表をつくるのがすごく難しい。グルジア語は一つの動詞が15,000ぐらい変化する。アディゲイ語になると12億らしい。
 言語の違いは思想の違いだから、珍しい言語をしゃべるスターリンはユニークな発想ができる人だ。しかも、スターリンはグルジアのゴリの町の出身で、このゴリの町にはグルジア人は少なかった。アルメニア人とユダヤ人の多い町で、オセチア人も多い。オセチア人は自称アラン人ということからもわかるように、アラン(=イラン)はすなわちイラン(ペルシア)系だ。自分たちは古代スキタイ民族の末裔だと信じている。
 スターリンの姓はジュガシビリというだが、この名前は生粋のグルジア人ではない。また、スターリンの父親は靴屋だった。コーカサス地域において靴屋はオセチア人のやる仕事だ。だから、名前と父親の職業から察するに、スターリンはおそらくジュガーエフという名前で、グルジアに帰化したオセチア人だ。
 スターリンは神学の基礎教育を受けている。彼は小さいとき天然痘に罹っている。母親が、この子がもし生き残れるなら神様に捧げます、と願をかけて、神学校へ入れた。しかし、高校生のとき飛び出してしまい、マルクス主義運動を始めた。
 スターリンは、ものすごく頭のいい男で、哲学者でもあり、経済学者でもあり、言語学者でもある。「ソ同盟における言語学上の諸問題」なぞすごくいい論文で、ソシュールを粗野にした感じだ。

 (2)スターリン全集には、あちこちに「回教徒共産主義者(ムスリム・コムニスト)という言葉が出てくる。
 ロシア革命は、マルクス主義によって行われたという建前になっている。しかし、マルクス主義の理論からすると、高度に資本主義が発達したところでしか革命が起きないはずだ。ロシアは遅れていた。だから、スターリンも、レーニンも、トロッキーも、ブハーリンも、みなドイツで革命が起きて、成功して、ドイツとロシアが連携して世界革命が始まると思ったわけだ。
 しかし、ドイツ革命がすぐにずっこけてしまう。次にハンガリーで革命が起きたが、これも頓挫してしまう。ロシアは遅れた社会のまま死んでしまうのか。これは早産だから死ぬしかないと考えたのがドイツ社会民主党の、第二インターナショナルの指導者だったカウッキーだ。ロシアにマルクス主義を導入したプレハーノフも、革命ロシアは生き残らないと考えていた。
 しかし、レーニンやスターリンにしれみれば、早産だから死ぬしかないというわけにはいかない。そこでジノヴィエフ、さらにスターリンが新しい仲間を見つけてきた。それがスルタンガリエフという人だ。スルタンガリエフはタタールスタンの共産主義者。共産主義者だが、イスラム教徒でもある人だ。彼は中央アジア・コーカサスに行ってこう言う。
 「われわれがやろうとしている階級闘争というのは、西方の異教徒に対する聖戦だ」
 で、赤旗と緑の旗を一緒に立てながら、革命を中央アジアでやる、だから回教徒共産主義という同盟軍がいるんだ、という理論を打ち立てていった。スターリンはそのうちの一人だ。

 (3)もともとコーカサス、中央アジアはトルキスタン(トルコ系の人たちが住んでいる土地)ということで一つのまとまりを持っていた。
 ところが共産主義よりイスラム革命のほうが強くなりすぎて、危なくなってきた。そこでスターリンは1920年代から30年代にかけて、そこに境界線を引き始めた。
 〈例〉今のカザフ人は当時キルギス人と言っていた。現在のキルギス人は当時カラキルギス人(黒いキルギス人)と言っていた。キルギス人とカラキルギス人だから親戚みたいなものだ。それにキルギス語とカザフ語は、Sの発音がちょっと違うぐらいのものだった。それなのに、「おまえらSの発音が違うから別民族だ」といって、そこに五つの新しい境界線を引いた。タジキスタン、ウズベキスタン、キルギスタン、カザフスタン、トルクメニスタンだ。これが民族境界線画定だ。
 もともと似たような人たちだったのに、上から民族というものをつくって、互いにいがみ合うようにした。その負の遺産が今でも残っている。サマルカンドはもともとタジク人の町で、みなペルシャ語をしゃべっていた。1910年代の終わりぐらいの統計では、8割がタジク人。しかし、30年代になると、8割がウズベク人になってしまった。
 ちなみに、今のウズベキスタン大統領のイスラム・カリモフはタジク系だ。大統領になったときはウズベク語をしゃべれなかったから、家庭教師についてウズベク語を勉強した。タジク語はペルシャ語に近いが、ウズベク語はトルコ語に近いから。そいういうふうに民族意識が変容していくわけだ。

 (4)スターリンは、マルクス主義から新しく創造的に発展したのがマルクス・レーニン主義だと言いながら、実際は別の思想を取り入れた。それがユーラシア主義という地政学思想だ。
 ユーラシア主義の原型は、どういうものか。
 1910年代の終わりから20年代にかけて、ロシア革命を嫌ってチェコ、ブルガリア、米国などに逃げていったユーラシア主義者がいる。このユーラシア主義者たちは、アジアとヨーロッパの双方にまたがるロシアには独特の法則があると信じている。しかし、このユーラシア空間のロシアというのは、ロシア正教の国ではない。ロシア正教徒もいるが、スラブ人、チュルク系、トルコ系、ペルシャ系のイスラム教徒もいるし、モンゴル系の仏教ともいる。日本の神道に近いようなシャーマニズムを信じているアルタイ人もいる。他にもアニミズムを信じているような人たちもいて、多種多様な人たちがモザイク状に入り混じって住んでいる場所だった。だから、そこには民族とか宗教などでは分けられない独自のタペストリー(織物)のようになっている、という考え方だ。
 ユーラシア主義者はマルクス主義は嫌いで、反共主義なのだが、ソビエトは支持する。ソビエトはユーラシア空間の中に事実として存在し、イスラム教徒を取り入れていた。それは宗教を分節化の基準としない、地政学の原理でできているからだ。だから、亡命者のほとんどがソ連に反対しているにもかかわらず、ユーラシア主義者はソ連を断固支持した。一部のユーラシア主義者は、1930年代にソ連に帰国し、だいたい銃殺されてしまった。

 (5)スターリンは、このユーラシア主義のドクトリン(教義)を密輸入して、それにマルクス・レーニン主義という衣をかぶせた形で、一種の「ソ連大国主義」をつくっていくが、それはロシア・ナショナリズムではない。
 なぜなら、スターリン自身がグルジア系で、ロシア人の血はたぶん殆ど入っていないからだ。オセチア系のグルジア人で、ロシア語もたどたどしい。スターリンのロシア語の文章はすごく読みやすい。なぜなら外国人が書いた文章だから。もしロシア・ナショナリズムがソ連の国家原理だったら、スターリンのような人がソ連の指導者となって、ロシア人を含む多くの人々に大弾圧を加えることはできなかった。だから、ソ連がナショナリズムだというのは間違った考えだ。ソ連はスターリニズムだ。しかし、このスターリニズムは普通の帝国主義とも違う。地政学に基づく帝国主義の特徴はここにある。
 帝国主義というのは、通常、宗主国と植民地から成る。中央アジア、コーカサスは決して普通の意味の植民地ではない。そこから登用されて、権力の中枢に行く人はたくさんいるわけだから。
 ということは植民地なき宗主国だ。あるいは、宗主国なき帝国、植民地なき帝国だ。
 しかし、中心はある。それはマルクス・レーニン主義(科学的共産主義)というイデオロギーによって結びついたとされるソ連共産党中央委員会だ。その中央委員会、イデオロギーに権力の中心があった。

□佐藤優「第一講 地政学とは何か」(『現代の地政学』、晶文社、2016)pp.65-70
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

【参考】
【佐藤優】トルキスタンの分割、変容する民族意識、ユーラシア主義の地政学
【佐藤優】地政学から見る第二次世界大戦前夜
【佐藤優】地政学とファシズムと難民
【佐藤優】最悪情勢分析 ~NPT体制の崩壊~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする