円の外へ

20070121開設/中学高校国語授業指導案/中学校学級経営案/発達症対応/生活指導/行事委員会指導

部活とおんなじ

2008-09-14 20:49:09 | 中学行事委員会指導
わかる目次
部活とおんなじ

「やればできる」
「信頼しろ」
「楽しんで一生懸命やろう」
「みんなのゴールを目指して」
「夢は目の前だ」


そして終われば、他の大人からは
「先生のお陰でした」
「さすが○○先生」


指導者本人大満足。

終わって泣いたりして。

「流した涙は、頑張ってくれたワンちゃんのために。
負けたのが悔しいいんじゃない。
いろんな人に応援してもらったのがうれしいからだ。」


ドッグレースの話だ。

今、テレビでやってた。
だが、ワンちゃんに
「自己意識」
はない。

素晴らしいことだ。
僕は、犬が大好きだし、
飼い犬が家族同様に、
飼い主の人生に大きな喜びを与えてくれることを知っているつもりだ。

だが、繰り返すがワンちゃんに
「自己意識」
はない。
飼い主の、自己実現のために、飼い主は訓練し勝手に感動する。

あまりにも部活とおんなじで笑えた。
犬ならいいよ。
動機が指導者の自己満足でもね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

35人の体育祭

2008-09-10 07:24:33 | 中学行事委員会指導
わかる目次
35人の体育祭
三年のA男は両手を握りしめた。

体育すわりのひざの上で、彼は十本の指を固く組み合わせる。
組み合わせた両手のこぶしを、彼は上下にぐいぐいと振る。
振りながら彼は何かを言っている。
くちびるで何かをとなえながら、彼はこぶしを振りつづける。

遠くの金網の得点板に向かって、彼のくちびるは何かをとなえつづけている。
得点板には点数が入ってゆく。
一の位。
十の位。
百の位の「2」が入った瞬間に、三年生の負けが決まった。

僕は、体育祭の閉会式のとき、生徒と得点板の間にすわる。
そうして、勝ち負けの瞬間の生徒の顔を見る。

十数年そうしてきて、今年初めてその瞬間を逃がした。
僕は生徒と同じように得点板を見ていた。
三年生の負けが決まったあと、赤と青の三桁の数字を呆けたように見つづけた。
何度も二つの数字を見比べた。

負けたのだとわかって我に返った。
生徒のすわる列を振り向いた。

A男がひざの間に首をうずめているのが見えた。

表彰の時、校長がトロフィーと賞状を手渡す間、
三年のカラー団長と応援団長はうなだれたままだった。

閉会式が終わると生徒は応援席へ戻った。
イスに座った21人の三年生を、担任は立たせて、グランドの中央につれて行った。

三年の応援席のすぐとなりで、一・二年生が歓声を上げていた。
僕は記録係だったので、写真屋さんに一、二年生の撮影を頼んだ。
「終わったら、三年生のほうに来てください」
と言って、三年生のほうへ歩き出した。

三年生の生徒は半円になって座っていた。
その真ん中に担任が立っていた。
21人の小さな、とても小さな半円の中で
大人の男が右手で顔を押さえつけ、うつむいていた。

担任のあとに、カラー団長の女子と、応援団長の女子が立って話した。
実行委員長の男子も話した。
世界中で、あの場所にいた三年生と、僕たち三年職員だけがその言葉を見て、聞いた。

よーくやった、よくやった、さんねんさんねん、よくやった、
よーくやった、よくやった…

応援団と担任の声に三年生は最後にもう一度泣き崩れた。

S中学の体育祭は、三年対一・二年で全校生徒は合わせて35人だ。
35人の体育祭がどんなものになるのか誰も想像がつかなかった。
35人のうち12人が特別支援学級の生徒である。

普通級の生徒が23人と、
特別支援学級の生徒が12人の中学校で、
エール交換をして、大縄跳びをして、騎馬戦をして、
女子の棒取りも男子の棒旗取りもした。

エール交換の生徒のカッコ良さに、大人がしびれた。

学年別の大縄跳びで全員が六分間へとへとになるまで跳んだ。

騎馬戦は白熱した。

棒取りも棒旗取りも、150人いたときの体育祭と何も変わりなかった。

僅差で進んだ競技は、男子棒旗で三年が負けて勝敗が少し見えた気がした。

生徒もそう感じたのだろう。
最後の二人三脚・三人四脚リレーを前に、三年は応援席に座り込んで音もなかった。
担任は三年を立たせた。
21人の肩を組ませて円陣を作った。
僕は
「おい! 弱まってんじゃねえ! 何のために練習してきたんだ!」
と怒鳴った。
カラー団長が
「みんな、勝ちたい~」
と尋ね、円陣は
「オス」
と応えた。

二人三脚・三人四脚リレーは、予行どおり二人三脚の一・二年が大差をつけた。
だが中盤で三年が逆転した。
目の前の三年を、一・二年が追いかけた。

三年のアンカーは走り出たとたん地面から浮いた。
六本の足は空を飛んだまま、美しくコーナーを回った。
三人は一羽の鳥のように、白いゴールテープを切った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする