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2023-10-29
頭髪四色中を立て直した話14
年末年始になり、卒業式の話になった。
僕はおずおずと、
「【群読】と合唱を組み合わせた、卒業式発表をしてみたいんですが」
と、学年会で言った。
学年教師は群読を知らなかった。
ということは、ものすごく小さな同じ市内でも、群読を経験しない中学校もあったのだ。
「それって、どういうこと? そういうこと? はいはいオーケー。」
学年が2クラスの職員は少人数で、仕切っているのは僕とほぼ同い年のベテラン女性教諭だった。
二人は生徒から信頼され、僕も初めて出会うタイプのできる人だった。
学級開きに始まり、連続する学校行事の成功のおかげで、群読の話はすっと10秒で通った。
頭髪学年の卒業式で、群読の途中、学年で中心になる男子がセリフで声を詰まらせた。
荒れ果てたはずの、合唱で声を出さないはずの学年が【群読の言葉】と【合唱の声】を張り上げた。
合唱用の壇上で、生徒はボロボロ泣いた。
卒業式のあと、最後のホームルームで、クラスの生徒が一人ひとり感想みたいのを言った。
そういう習わしらしかった。
みんなとても素敵なことを言った。
ひとりひとりとても長くしゃべった。
1、2年生のとき学年の先生に言われたひと言が自分を助けた、というのがいくつもあった。
ただ、僕に対する言葉はなかった。
僕はお客だったんだな。3年になるまで苦しかったんだな。
最後のさようならのあと、保護者が次々あいさつしてくれた。
クラスのほぼ全員の母親が、列をなして、僕にひと言、言うのを待ってくれた。
僕はいつも3年卒業のとき失敗するヘタレだった。
だから、いつまでも続く御礼の言葉に驚いた。
保護者でなくて、最も手がかかった生徒二人が、ずっと順番を待っていた。
そして、ありがと、だか、じゃあね、だったか。
笑顔で手を振り、帰っていった。