カテゴリー別目次
2017-09-18up
小さき者よ 不幸なそして同時に幸福なおまえたちの父と母との
祝福を胸にしめて 人の世の旅に登れ 前途は遠いそして暗い
しかしおそれてはならぬ おそれない者の前に道は開ける
行け 勇んで 小さき者よ
有島武郎「小さき者へ」札幌大通公園 石碑より写 2017-09-14
2017-09-18up
小さき者よ 不幸なそして同時に幸福なおまえたちの父と母との
祝福を胸にしめて 人の世の旅に登れ 前途は遠いそして暗い
しかしおそれてはならぬ おそれない者の前に道は開ける
行け 勇んで 小さき者よ
有島武郎「小さき者へ」札幌大通公園 石碑より写 2017-09-14
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2017-9-02up
月給が増えてもろくなことはない。
酒の質と量が増えるだけだ。
土曜はたまらずデパートの伊レストランに行ってしまう。
庶民の食堂だ。
ここは骨付きの羊を出してくれる。
羊と生ビールとワイン1本とガーリックトースト。
これだけで、下等庶民の僕には恐るべき会計になる。
だが、我慢する理由が見つからない。
何のために一週間働いたのか。
今日、飲んでいると視線の前の窓際に親子が座った。
子どもは五歳くらいの男の子だ。
親はうまいパスタを味わう暇がない、いつもの光景だ。
食事が終わると男の子が僕に向かって何か言った。
「うんうん」
と聞いたふりをする。すると男の子は話し続ける。
「ぼく、あしたも来るんだよ」
「そう~?」
会計が済んで男の子は店を出た、と思うとまた走って入ってきた。
「あしたも来る?」
「ん? もしかしたら来るかも」
「あした来たら、またいる?」
「いるかもね! バイバイ!」
「バイバイ!」
僕が右手を振ると、男の子も手を振って出ていく。
気に入っていただいてうれしいな、と思うと彼はまた走って入ってきた。
「ぼくね、ガチャガチャやるんだよ」
「ふーん。そうなの~」
男の子は走って出て、それで本当に帰って行った。
こんな応対を、大きな声でする初老の男は少ない。
レストランのスタッフもお客さんも短くも、幸せな時間を味わっただろう。
2017-9-02up
月給が増えてもろくなことはない。
酒の質と量が増えるだけだ。
土曜はたまらずデパートの伊レストランに行ってしまう。
庶民の食堂だ。
ここは骨付きの羊を出してくれる。
羊と生ビールとワイン1本とガーリックトースト。
これだけで、下等庶民の僕には恐るべき会計になる。
だが、我慢する理由が見つからない。
何のために一週間働いたのか。
今日、飲んでいると視線の前の窓際に親子が座った。
子どもは五歳くらいの男の子だ。
親はうまいパスタを味わう暇がない、いつもの光景だ。
食事が終わると男の子が僕に向かって何か言った。
「うんうん」
と聞いたふりをする。すると男の子は話し続ける。
「ぼく、あしたも来るんだよ」
「そう~?」
会計が済んで男の子は店を出た、と思うとまた走って入ってきた。
「あしたも来る?」
「ん? もしかしたら来るかも」
「あした来たら、またいる?」
「いるかもね! バイバイ!」
「バイバイ!」
僕が右手を振ると、男の子も手を振って出ていく。
気に入っていただいてうれしいな、と思うと彼はまた走って入ってきた。
「ぼくね、ガチャガチャやるんだよ」
「ふーん。そうなの~」
男の子は走って出て、それで本当に帰って行った。
こんな応対を、大きな声でする初老の男は少ない。
レストランのスタッフもお客さんも短くも、幸せな時間を味わっただろう。