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2019-05-05
高校授業も四年目だ。
だが、去る4月にやっと高校でも三流のはじに指をかけた。
一年目はコテンパンにやられた。
生徒は全員が喋るか寝ているかメシを食っていた。
四クラスすべてが、全員だ。
皆さんに経験してほしい。
面白いのは職場の二十、三十年選手でも一度もそのタイプのクラスを授業しない人もいることだ。
大人にもやられて、二年目にもひびいた。
これは退職後に書く。
三年目の去年は素敵な生徒に助けられ、育ててもらった。
なぜかすべて古典授業を割り当てられた。
今考えると、古典はいつ辞めてもいいヤツに割り当てる方針に思えた。
だが、大成功だった。
職場で最も幸せな一年を過ごしたのは僕だった。
今年は、すべて国語に割り当てられた。
今考えると、いつ辞めてもいいよというヤツで固めている。
つらくてつぶれたら非正規職員を雇う方針としか思えないのだ。
僕は学習能力だけはある。
「四年前のアレと同じ授業になったら辞めるか休むかしますから。学校じゃないんで」
数人の大人に言った。
本気だ。
そして、最善を尽くした。
結果は、最高だった。
ただ予測すれば「今年は誰でもうまくいったよ」と3月に言われる。
どうでもいい。大事なのは、もうすぐすべてが終わるということだ。
最初に、公立非常勤で勤めた年。
最初に、私学に非常勤で勤めた年。
そのとき、僕のしてきた授業の勉強が正しかったのがわかった。
授業で生徒はできるようになり、絶大な信頼を得て、別れは悲しかった。
今年も同じ様になるかもしれない。
今のGW前「高校デビュー。僕も高校3流プロ宣言」というタイトルだけ思いついた。
この4月は、さすがの小心の僕も自信がついた。
高校生相手に、中学生と同じ4月授業を完璧にやりとげた。
中味は、原則どおりのことだけだ。
それを、顔も知らない高校生に授業した。
だが、その毎日、毎時間の気力は、それほど多くの人には真似できないと思う。
空白は秒単位で作らず(いえ、作らないようにして)、完全に全員を参加させた。
書きたいことは多すぎた。
シリーズ物にしようとしたができないままGWが終わる。
もったいないので少し書き残そう。
つまりは、当たり前のことが、どんな生徒にもどこでも必要だということだ。
当たり前のことができる力を、身につけておくことだ。
1 授業クラスが決まり、それが一年間崩壊していたと知ったときの一気メモ
1 アンケート「広めたい言葉、なくしたい言葉」全クラス。(掲載済み・結果未公表)
各クラス。集計。ノートに貼る。
2 国語班四人。約10班。
3 ファイルは。自由。
4 のり。俺が10本用意。
5 コンビ+4人班両方。
6 なぞり書き4級。一日5語。全クラス共通。
7 1分音読。指名音読。個別評定。
8 「時間着席」・「話を聞く」二つだけ
9 4月は。視写。聴写。音読。なぞりを美しく。原稿使い方。
10 毎日授業結果を担任報告。
11 カルタ??? やるか?
12 黒板掃除。ゴミ。机。カバン。毎日。(黒板用ぞうきん持つ)(黒板拭いてみせる)
13 アンケート「どんな授業・クラスでしたか」全クラス。(掲載済み・結果未公表)
14 (去年のことには一切触れない。言わない。今日からがすべて)
15 チャイムで着席できないとき減点1。毎回。
16 教科書コピー、ノート、ボールペン、用意してすぐ貸す。
17 指名磁石作る(作った。中学生以来)
18 座席表。A6版。(毎時間1枚使用。一年間全授業分保存)
(以上。メモしたけどできていないことは除く)
2 いくつかの事前の準備
1 担任じゃない、前年授業してた若手に生徒全員の情報を聞いた。
2 情報を座席表にして眺め続けた。
3 終業式でその二クラスをずっと観察した。
4 クラス替え後の名簿はすばやく手に入れて読み方は若手に教わった。
5 4月の始業式後、廊下で二クラスのHRをこっそり聞き続けた。
6 授業開始の日、朝SHR前に廊下に行った。
一時間目の始め、廊下に立っていた。生徒とは一切喋らなかった。
授業者は二人とも、チャイムのあとにノコノコやってきた。
開始の日の、一時間目にだ。前年荒廃授業だったクラスにだ。
二時間目の始めも、廊下でうつむいて立っていた。
7 1より前に。
読み物としては、これがメインです。
学年が3月半ばに合唱コンをした。
課題曲と自由曲の二曲ある。無謀すぎる。
「今からでもやめたほうがいいですよ。合唱なめてますよ。荒れますよ」
と二つのうち一つの担任には言った。
案の定、そのクラスはまったく練習しなかった。有りがちな理由でできなかったのだ。
僕は聴きに行き■組後ろの中央壁沿いに座った。
あとから、僕の右に担任が座った。
■組男子はずっと喋っている。
◆組が前に並んで始まる。ピアニストも指揮もいる。
でも。しかし。◆組はものすごくうまかった。
公立中学校に行っても優勝にからむほどだった。
男女とも歌う口も顔も本気だ。
指揮もめちゃくちゃにかっこよくうまい。
びっくりして、途中から立って聞いて、爆発的に拍手した。
担任の女性教諭は優れている。それにしても、何でもできるんだなあ。
この感激で、黙って見るだけのつもりに火がついた。
あまりにうまくて生徒たちもびっくりして拍手もすごい。
でも、■組男子はずっと喋っている。
うしろから髪の毛をつかんで引き倒してやりたい。
次のクラスもとてもうまい。
が、だんだん輪切りの偏差値のように弱くなった。
この学級編制って、怖いね。可愛そうだね。
■組男子は自分の二つくらい前の合唱の途中、黙り始めた。
その時、突然僕は突然立ち上がった。
そんな気はまったくなかったが、今何かするしかないと思ったのだ。
知る大人にはわかるが、僕は度々そんなふうだった。
歌うクラスの入れ替わりのとき、僕はギューギューの椅子席の間に無理やり入った。
そして、■組男子5人かける5人位を、僕にできる最も恐ろしい顔でにらんだ。
それは、すごく怖い。しかも本当に火がついている。
「こらっ。お前ら。聞け。」
彼らは僕が教員かどうかさえ知らないほど接点がない。ポカンとしている。
「お前らがべちゃべちゃ喋ってるときな。
引っ張り出してぶん殴ろうとしたんだっ。
ふざけんなっ。
でもな。今の曲の聞き方は100点だっ。100点ですよっ。
練習しなかったんだろ? 不安で喋ってんだろ。わかるよっ(怖い顔キープ)
でもな、一生懸命やりゃいいんだよ。
今の聞き方みたいにしっかり立っていればいいんだよ。
わかったかっ」
男子は答えもできず、ボーッとしている。
僕が席に戻ると、間違いかもしれないが担任がメガネをずらして目をこすっている。
しばらくして、ありがとね、と彼は言った。
僕は、いえ、とだけ言った。息が上がっていたからだ。
■組は伴奏もいない。CDで歌うのだ。なんと担任が歌詞の紙を壇上で配り始める。
指揮もいなかったらしく、急に担任が振り始めた。
ものすごく大きく、でも四拍子なのに三拍子で三角に振っている。
女子が何人も笑ってしまう。でも、とてもかわいらしい素敵な笑い方だ。
一人が四拍子で小さく振って見せて直そうとするが、担任は変わらない。
彼はきっと急に振ることにしたのだ。
決まっていたらせめて四拍子の練習くらいしただろう。
突然、何とかしようと思ったのだ。
さっき僕が爆発するのを見たせいかもしれないと思った。
わからない。
できないとわかっていて、担任は二曲とにかく腕をブンブン振り続けた。
男子はほとんど歌えず、女子も蚊の鳴くような声で、でも真っすぐ立っていた。
みんな担任を好きなのがよくわかった。
次の▲組は離れた席で最後までずっと喋っていた。
▲組もCDで、下手な指揮で、ほとんど声が聞こえないまま二曲のあいだ立っていた。
職員室にもどったあと、担任が僕に言った。
「俺にできないことしてくれて。やつら相当ビビってたけど、良かった。ありがとね。
次、授業持ったらええやん」
「持つんですよ。だから、わざと行ったんです」
「あ、そうか」