徒然なるままに…建築家のボヤキ。。。

I・N設計スタジオ ブログ

自宅に茶室を作る方法-6

2016-03-08 09:09:37 | 茶室の作る為の間取り・広さ・約束事
 住宅における台所の役割を果たすのが水屋。お茶の準備と後片付けに使われる部屋で、道具などを置いておく場所です。水屋には「水屋流し」「水屋棚」などが必要になります。

 

 水屋流しは白竹をすのこ状にし、その下に銅板で深さ10cmほどの流しを造ります。蛇口は銅メッキを施したものがよく使われます。以前やらせていただいた茶室の水屋にも銅メッキの蛇口を設置しましたが、蛇口の栓(ひねるところ)の押さえ金物に英語で文字が書いてあり、その文字を消して取り付けたことも有りました。

 水屋棚は三段構成になっています。一番上から「上通り棚」「中通り棚」「下通り棚」と呼びます。四段目の半分の長さしかない棚は「茶碗棚」と言います。

 

 上通り棚は箱炭斗を置くので、高さ42cm以上、奥行き33cmくらい必要となります。中通り棚と下通り棚は上の棚から27cm下に設置し、奥行きはどちらも27cmくらいで赤杉を用いて作られます。

 茶碗棚も上の棚から27cm下に設置し、右端には香挟間透かしの入った「持ち送り板」を入れ込みます。

 水屋での器の配置は、水回りのものは下に、火のものは上、大きくて頻度が低いものは上、小さくて使用頻度が高いものは下というルール。

 設計上のポイントは、水屋が席から丸見えにならないことはもちろん、水作業時の音が聞こえないように水屋流しは茶室に接しないようにします。茶室の照明や空調のスイッチは全て水屋に設置することも大事。まさか茶室にあのスイッチプレートを取り付ける何でできませんよね。

 そういえば茶室のコンセントも工夫しました。畳寄せと言われる畳と壁の間のわずかなスペースに納まるようにコンセントを改良しました。一つ一つに決め細やかな対応が必要なんですね。

 

 茶室の設計をやらせて頂き、一番最初にしたこと…それは茶道の用語を覚え理解することでした。用語を覚えないとクライアントとの打合せも上手くできませんから…。

 これまで紹介してきたことはほんの一部です。自宅に茶室を作るために少しでも参考になればと思います。


 ~おわり~
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自宅に茶室を作る方法-5

2016-03-03 08:55:03 | 茶室の作る為の間取り・広さ・約束事
 床の間の周りには様々な釘を用います。軸や花入れを飾る為のもの、釣釜を掛ける為のものがあります。

 

 軸を掛ける為の釘に「軸釘(竹釘)」、「折釘」、「二重折釘」などが有ります。

 花入を掛ける為に床柱に打つのが「花釘」。床壁の中心に打つ釘を「無双釘(中釘)」、床の間の天井に打ち釣花入を掛ける為のものが「花蛭釘」、釜を吊り下げる為のものを「釜蛭釘」といいます。

 

 紹介した釘は種類によって形がほぼ決まっており、私が設計した茶室の場合は、クライアントに釘自体を支給して頂きました。

 釘を打つ場所(寸法)も決まっていて、一つ例を上げれば、花釘を設置する目安は、落掛から床框までの寸法の落掛より三分の一の高さが良いとされています。

 畳のサイズは京間畳を使用しますが、現在の住宅やマンションのサイズには必ずしもあってきませんので注意が必要です。以前の設計では、点前座の2枚だけ京間畳のサイズとしました。これだけでも大丈夫だそうです。

 畳縁の色は濃紺。畳の目は縁から半端な目を作らないこと。道具等の置く位置が、畳の目の数によって決まっているからだそうです。

 

 畳の敷き方は炉を基準にするのが通例で、「床差し」という敷き方で通常は嫌われる敷き方ですが茶室では正とされています。茶室の畳の敷き方は、炉と亭主、客の動線が何よりも優先されるのです。


 ~つづく~
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自宅に茶室を作る方法-4

2016-03-01 08:35:45 | 茶室の作る為の間取り・広さ・約束事
 「茶室の約束事」というタイトルで話してきましたが、ちょっと堅いタイトルだったので、「自宅に茶室を作る方法」に変更しました。

 

 茶室において床の間も重要な役割を持っています。軸、花、香合えお取り合わせ、飾り付けることでもてなしの空間を演出するのが床の間。

 床柱、落掛(おとしがけ)、床框(とこがまち)があり、床の間の床が畳敷きであること。これが正式とされる「本床(ほんどこ)」です。

 

 本床を設えられない場合は、壁を床に見立てる「壁床(かべどこ)」、壁の前に台を置いた「置床(おきどこ)」、壁床に落掛だけをつけた「釣床(つりどこ)」、壁床の天井際に幕板うを付ける「織部床(おりべどこ)」等が有ります。

 正式な床の位置は、点前座から見て正面右で、光が床の右側から差し込むようにします。この床を「上座床(じょうざとこ)」と呼びます。

 

 床の位置が点前座から見て背後にあるものを「下座床(げざどこ)」、点前座の亭主の背後にあるものを「亭主床(ていしゅどこ)」と言います。亭主床は、亭主と床が一体に見え客の目を楽しませる床です。

 床の大きさも色々有りますが、間口がおおよそ一間分の間口の床を「一間床(いっけんど)」といい「本床」とも言います。その他に大きさによる分類から、「桝床(ますどこ)」、「台目床(だいめどこ)」等が有ります。

 自宅に床の間がない場合でも、上述したように色んな方法が有りますが「本床」に勝るものは有りません。


 ~つづく~

 

 
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自宅に茶室を作る方法-3

2016-02-25 09:04:58 | 茶室の作る為の間取り・広さ・約束事
 炉には八通りの切り方がある、と言われます。その八通りの中から好き勝手に選んで切れば良いというものでも有りません。

 

 亭主から見て右手に炉が切られ、襖や壁が左手にある「本勝手切」が基本。その上で茶室の広さや点前座の位置に応じて、本勝手切、台目切、向切、隅炉の4つのパターンがあります。

 

 炉の寸法は、一尺四寸(≒42.5cm)角。深さは本炉壇で≒41cm、略式では30cmあればよしとされ、本炉壇は杉古材で作った箱組みに竹の下地を組み、土を塗り仕上げます。

 床下の深さが足りない場合は略式炉壇を採用します。特ににマンションでは、炉の深さが足りない場合が多いので略式炉壇がお勧め。

 

 炉を使用しない時は炉蓋畳という炉の形に作られた小さな畳を敷きこみます。炉蓋には桐材、松材が多く使用されます。真ん中に穴の開いた板蓋や、盛り上がった助炭(じょたん)といわれるものが有ります。

 機密性が高い現代の住宅事情では換気設備を設けたり、最近では炭をたかずに電気で炉を温める略式のものもあると聞きます。いずれにせよ酸欠には注意が必要ですね。


 ~つづく~
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自宅に茶室を作る方法-2

2016-02-23 08:39:55 | 茶室の作る為の間取り・広さ・約束事
 露地という茶室までのアプローチの庭には、寄合・待合がありそこに待機して茶室へと向かう。寄合待合は一般住宅の場合、住宅の中の一部屋を兼用する場合や、玄関に腰掛(ベンチ)などを置いて代用すること多々あります。

 

 露地の役割は、洗浄無垢な環境(心)作り出し、茶室を訪れた人を俗世間の喧騒から逃れさせる為です。

 予算が無い場合は庭に蹲(つくばい)だけ置いても立派な露地になります。

 露地には腰掛待合と言われる席入り前の合図を待つ空間が有りますが、これも先ほどの寄合・待合と一緒で玄関などを代用することが多く見受けられます。

 茶室への外部からの入り口は躙口(にじりぐち)と呼ばれます。誰もが自然に頭を下げた謙虚な姿勢で入らせる為、入口扉の高さは70cmに設定します。

 

 一般住宅でこの躙口を代用するのはブラインドやロールスクリーンを使います。

 縁側のサッシを躙口ととらえ、頭を低くする為にブランドやロールスクリーン、簾などを垂らして低い姿勢で入ってきてもらうようにします。

 以前やらせてもらった住宅にも、露地、待合、躙口等々設えました。


 ~つづく~
 
 
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