チベット佛教の最高指導者ダライ・ラマ14世は昨年、後継者は自分が生きている間に指名するか、いっそ選挙で選ぶことになるかもしれないと語った。本来は死後にその生まれ変わりと認定された者が後継者となるべきところだが、それを中国政府に選ばれてしまうのでは、チベット人の支持は得られないと懸念したからだ。
だが、中国政府は例によってダライ・ラマの考えに猛反発している。
チベット自治区トップの張共産党委書記は、ダライ・ラマに輪廻転生を廃止する権利はないと語り、チベット対する強硬姿勢を改めて鮮明にした。「そんなことは許されない。不可能だと思う」と、北京で開会中の全国人民代表大会の傍らで張は語った。
「われわれはチベット佛教の歴史的慣例と宗教儀式を尊重しなければならない」、「輪廻転生を失くすなど、人が決められることではない」と・・・。
後継者選びには活佛転生制度というのがあり、高僧が遺言で指定した地方に、49日間以内に誕生した乳児の中から、神畏の備わっている者=転生霊童を選び、転生者とするものである。
活佛とはダライ・ラマとパンチェン・ラマのことでその選びには次の4つのチェックによる。
1 先代ラマの遺体の観察
2 聖なる湖(中央チベットのラモイラツォ湖)の湖面の観察
3 神託・占い
4 本人に対するテスト
その前提として輪廻転生という考え方があるのだが、ダライ・ラマがその転生を重要視しない発言は大きいように思う。多分転生を自覚していない感覚があるのだろう。
一個体が個体性を維持しながら生まれ変わるはずもないのだから、全うな発言だと思うのだが、唯物論の共産主義者が輪廻転生をいうのはチベット人なるがゆえか。