増補改訂し、さらに兮ケイを追加しました。
益[益] エキ・ヤク・ます 皿部
解字 篆文は「皿(うつわ)+横向きの水」で、皿(うつわ)に水があふれる形。あふれる・みちる意。隷書(漢代)で、横向きの水がそれぞれ直線になった形をへて、旧字は益になり、新字体は簡略化された益になった。溢イツの原字。あふれる意は溢イツがうけもつので益の意味は、水が加わってあふれるので「ますます」の意となり、転義として「役に立つ・もうけ」の意となる。
意味(1)ます(益す)。加わる。みちあふれる。(=溢イツ) (2)役に立つ。ためになる。「実益ジツエキ」「益友エキユウ」(交わって有益な人)「益虫エキチュウ」 (3)もうけ。「利益リエキ」「損益ソンエキ」(4)[副詞]ますます(益々)。さらに。だんだん。
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「あふれる」(益・溢)
「形声字」(縊・搤・隘)
音の変化 エキ:益 アイ:隘 イ:縊 イツ:溢 ヤク:搤
あふれる
溢 イツ・あふれる・みちる 氵部
解字 「氵(水)+益(あふれる)」で、水が溢れる意。
意味 (1)あふれる(溢れる)。みちる(溢ちる)。こぼれる(溢れる)。「溢水イッスイ」(水があふれる)「脳溢血ノウイッケツ」(脳内血管が破綻して血があふれる疾患=脳出血)(2)あまりある。度をこす。「溢利イツリ」(利益をとりすぎること)
形声字
縊 イ・くびれる・くびる 糸部
解字 篆文第一字の右辺は、皿に水があふれる形。第二字(六書通)の右辺は、二つの糸を合せてくくる形で、「糸(ひも)+くくる形」の会意。ひもでくくる意となる。篆文の二つの字は発音がイで同じことから、両字とも「くくる」意で用いられ、楷書以降は第一字が使われる。縊は紐をくくる意だが、特に、首をくくる意に使われる。
意味 (1)くびれる(縊れる)。首をくくる。「縊死イシ」(首をくくって死ぬ)(2)くびる(縊る)。ひもで首をしめる。「縊殺イサツ」(首をしめて殺す)
搤 ヤク・アク 扌部
解字 「扌(手)+益(=縊。くびれる)」の会意。手でくびれる(首をしめる)ように、つかんでおさえること。
意味 (1)つかむ。おさえる。「搤腕ヤクワン」(自分で自分の腕を強く握りしめる。残念がったり意気込むこと。=扼腕) (2)しめる。「搤殺ヤクサツ」(首をしめて殺す。=扼殺)
隘 アイ・ヤク・せまい 阝部
解字 「阝(おか)+益(=縊。くびれる)」の会意。丘がくびれて狭くなること。
意味 (1)せまい(隘い)。「隘路アイロ」(せまくて通れない道。さまたげになること)「狭隘キョウアイ」(①面積がせまい。②度量がせまい)「隘巷アイコウ」(せまくきたない町)(2)ふさぐ。さまたげる。
謚 シ・おくりな 言部
諡シの異体字。兮ケイ(このページ)の最後に掲載している。
<紫色は常用漢字>
兮 ケイ <語末・句中の発語>
兮 ケイ・ゲ 八部
解字 甲骨文字は「丅(示の原字。祭卓)+タテ線2つ(切り分けた供物)」の会意で、神に供える物をのせる一本足の卓の上に、切り分けた供物の肉を置いた形。しかし意味は、①地名、②神名、となっている[甲骨文字辞典]。金文は卓の上がはっきりとハになり、下部のタテ線がやや左曲がり、篆文から丂に変化した兮ケイになった。意味は[説文解字]が「語のとどまる所なり」としており、語末において語の勢いを示すかたちとなった。
意味 (1)語末にそえ、よびかけ・詠嘆・疑問などを表す。「兮呀ケイガ」(悲しそうな声の発語) (2)句中にあって上の語を主格としてしめす。訓読では普通よまない。 (3)句中にあって「へい。ほい」という間拍子の声を表す。楚辞ソジ(中国古代の詩集)などに用いられた。訓読しない。「大風(は)起(こり)兮、飛揚ヒヨウ(す)」(漢高祖・大風歌)
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「語末・句中の発語」(兮)
「形声字」(盻・諡)
音の変化
ケイ:兮・盻 シ:諡
形声字
盻 ケイ・ゲ・にらむ 目部
解字 「目(め)+兮(ケイ)」の形声。目でにらむことを盻ケイという。[説文解字]は「恨(うら)み視(み)る也(なり)」とする。
意味 (1)にらむ(盻む)。うらみにらむ。「目を瞋(いから)して盻(にら)む」 (2)「盻盻ケイケイ」とは苦しんでうらみにらむさま。「民(たみ)をして盻盻然ケイケイゼンたら使(し)む」(孟子・滕上)
諡[謚] シ・おくりな 言部
解字 諡シは、異体字の謚シが変形した字とされる。謚シは「言(ことば)+益(ます)」の会意。益エキは益の旧字で、追加する・ます意がある。これに言がついた謚シは、言葉を追加する意で、帝王や貴人の生前の功績をたたえて死後に名前をおくる(追加する)こと。諡シは、謚が変形した字で、右辺の皿の上の「八一八」⇒兮ケイに変化した諡シとなった。
意味 おくりな(諡)。生前の功績をたたえて死者におくる名。「諡号シゴウ」(おくり名)「諡法シホウ」(死者につけるおくりなのつけ方)
<諡号の例> ( )内は姓名
前漢 初代皇帝 高祖(劉邦)
5代皇帝 文帝(劉恒)
7代皇帝 武帝(劉徹)
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益[益] エキ・ヤク・ます 皿部
解字 篆文は「皿(うつわ)+横向きの水」で、皿(うつわ)に水があふれる形。あふれる・みちる意。隷書(漢代)で、横向きの水がそれぞれ直線になった形をへて、旧字は益になり、新字体は簡略化された益になった。溢イツの原字。あふれる意は溢イツがうけもつので益の意味は、水が加わってあふれるので「ますます」の意となり、転義として「役に立つ・もうけ」の意となる。
意味(1)ます(益す)。加わる。みちあふれる。(=溢イツ) (2)役に立つ。ためになる。「実益ジツエキ」「益友エキユウ」(交わって有益な人)「益虫エキチュウ」 (3)もうけ。「利益リエキ」「損益ソンエキ」(4)[副詞]ますます(益々)。さらに。だんだん。
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「あふれる」(益・溢)
「形声字」(縊・搤・隘)
音の変化 エキ:益 アイ:隘 イ:縊 イツ:溢 ヤク:搤
あふれる
溢 イツ・あふれる・みちる 氵部
解字 「氵(水)+益(あふれる)」で、水が溢れる意。
意味 (1)あふれる(溢れる)。みちる(溢ちる)。こぼれる(溢れる)。「溢水イッスイ」(水があふれる)「脳溢血ノウイッケツ」(脳内血管が破綻して血があふれる疾患=脳出血)(2)あまりある。度をこす。「溢利イツリ」(利益をとりすぎること)
形声字
縊 イ・くびれる・くびる 糸部
解字 篆文第一字の右辺は、皿に水があふれる形。第二字(六書通)の右辺は、二つの糸を合せてくくる形で、「糸(ひも)+くくる形」の会意。ひもでくくる意となる。篆文の二つの字は発音がイで同じことから、両字とも「くくる」意で用いられ、楷書以降は第一字が使われる。縊は紐をくくる意だが、特に、首をくくる意に使われる。
意味 (1)くびれる(縊れる)。首をくくる。「縊死イシ」(首をくくって死ぬ)(2)くびる(縊る)。ひもで首をしめる。「縊殺イサツ」(首をしめて殺す)
搤 ヤク・アク 扌部
解字 「扌(手)+益(=縊。くびれる)」の会意。手でくびれる(首をしめる)ように、つかんでおさえること。
意味 (1)つかむ。おさえる。「搤腕ヤクワン」(自分で自分の腕を強く握りしめる。残念がったり意気込むこと。=扼腕) (2)しめる。「搤殺ヤクサツ」(首をしめて殺す。=扼殺)
隘 アイ・ヤク・せまい 阝部
解字 「阝(おか)+益(=縊。くびれる)」の会意。丘がくびれて狭くなること。
意味 (1)せまい(隘い)。「隘路アイロ」(せまくて通れない道。さまたげになること)「狭隘キョウアイ」(①面積がせまい。②度量がせまい)「隘巷アイコウ」(せまくきたない町)(2)ふさぐ。さまたげる。
謚 シ・おくりな 言部
諡シの異体字。兮ケイ(このページ)の最後に掲載している。
<紫色は常用漢字>
兮 ケイ <語末・句中の発語>
兮 ケイ・ゲ 八部
解字 甲骨文字は「丅(示の原字。祭卓)+タテ線2つ(切り分けた供物)」の会意で、神に供える物をのせる一本足の卓の上に、切り分けた供物の肉を置いた形。しかし意味は、①地名、②神名、となっている[甲骨文字辞典]。金文は卓の上がはっきりとハになり、下部のタテ線がやや左曲がり、篆文から丂に変化した兮ケイになった。意味は[説文解字]が「語のとどまる所なり」としており、語末において語の勢いを示すかたちとなった。
意味 (1)語末にそえ、よびかけ・詠嘆・疑問などを表す。「兮呀ケイガ」(悲しそうな声の発語) (2)句中にあって上の語を主格としてしめす。訓読では普通よまない。 (3)句中にあって「へい。ほい」という間拍子の声を表す。楚辞ソジ(中国古代の詩集)などに用いられた。訓読しない。「大風(は)起(こり)兮、飛揚ヒヨウ(す)」(漢高祖・大風歌)
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「語末・句中の発語」(兮)
「形声字」(盻・諡)
音の変化
ケイ:兮・盻 シ:諡
形声字
盻 ケイ・ゲ・にらむ 目部
解字 「目(め)+兮(ケイ)」の形声。目でにらむことを盻ケイという。[説文解字]は「恨(うら)み視(み)る也(なり)」とする。
意味 (1)にらむ(盻む)。うらみにらむ。「目を瞋(いから)して盻(にら)む」 (2)「盻盻ケイケイ」とは苦しんでうらみにらむさま。「民(たみ)をして盻盻然ケイケイゼンたら使(し)む」(孟子・滕上)
諡[謚] シ・おくりな 言部
解字 諡シは、異体字の謚シが変形した字とされる。謚シは「言(ことば)+益(ます)」の会意。益エキは益の旧字で、追加する・ます意がある。これに言がついた謚シは、言葉を追加する意で、帝王や貴人の生前の功績をたたえて死後に名前をおくる(追加する)こと。諡シは、謚が変形した字で、右辺の皿の上の「八一八」⇒兮ケイに変化した諡シとなった。
意味 おくりな(諡)。生前の功績をたたえて死者におくる名。「諡号シゴウ」(おくり名)「諡法シホウ」(死者につけるおくりなのつけ方)
<諡号の例> ( )内は姓名
前漢 初代皇帝 高祖(劉邦)
5代皇帝 文帝(劉恒)
7代皇帝 武帝(劉徹)
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。