漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「埶ゲイ」<人が草木をそだてる> と「芸ゲイ」「勢セイ」「熱ネツ」「褻セツ」「芸ウン」

2024年01月08日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 ゲイ・セイ  土部

解字 甲骨文は両手で苗木をもってひざまずく人の形で、木を植え育てる様子を表す。金文は左辺が、木の下に土を加えた形。篆文は「坴(土の上に木がある形の変形字)+丮ケキ(人が両手を出した形)」の会意。ひざまずいた人が両手を出して土の上の木を手入れして育てている形。いずれも、「植物に手を加えて育てる」意となる。現代字は、篆文の右辺が、丮⇒丸に変化した。
※埶ゲイの左辺の「坴」は、陸の右辺と同じ形だが、成り立ちの違う字。 「陸リクを参照。
意味 (1)うえる。草木をうえる。 (2)いきおい。

イメージ 
 「草木を植え育てる」
(芸・熱・勢・褻)
 「形声字」(囈)
 「同体異字」(芸) 
音の変化  ゲイ:芸・囈  セイ:勢  セツ:褻  ネツ:熱  ウン:芸

草木を植え育てる
[藝] ゲイ・わざ・うえる  艸部
解字 旧字は藝で「艸(くさ)+埶(草木を植え育てる)+云(=耘ウン。雑草を取り除く)」の会意形声。人が植物を植え、雑草を取り除いて草木を育てる意。のち、園芸の意味から転じて、人が身につけたさまざまな「わざ」の意になった。新字体は旧字から埶を省いた芸。これにより、この字の基本となる音符部分がすっぽり抜けてしまった。おまけに出来上がった新字体は、以前からある芸ウンと同じ字体になってしまった。出来のよくない新字体である。「文藝春秋」がいまだに旧字体を使う意味がよく理解できる。私が新字体をつくるなら、甲骨文字に里帰りして、埶の部分を⇒「木丸」にする。因(ちな)みに、中国の簡体字は「艺yì」である。
意味 (1)わざ(芸)。身につけたわざ。技能。学問。「芸術ゲイジュツ」「芸能ゲイノウ」「芸苑ゲイエン」(学芸の世界) (2)うえる(芸える)。草木を植え育てる。「園芸エンゲイ」「農芸ノウゲイ
 セイ・いきおい  力部
解字 「力(ちから)+埶(草木を植え育てる)」の会意形声。埶(草木を植え育てる)には、植物が成長する「いきおい」の意味があり、そこに力(ちから)を加え、植物の「いきおい」に加え、状況を支配する盛んな力の意味を表す。
意味 (1)いきおい(勢い)。さかんな力。「勢力セイリョク」「優勢ユウセイ」 (2)ようす。ありさま。「形勢ケイセイ」「情勢ジョウセイ」 (3)むれ。人の集まり。「軍勢グンゼイ
 ネツ・あつい  灬部
解字 「灬(火)+埶(草木を植え育てる⇒育てて大きくする)」の会意。火を大きくしてゆくこと。草木を植え育てるように、たきぎに火をつけて火をおおきくしてゆくこと。火が発するネツ(温かさやあつさ)をいう。初期の火は温かく、大きくなった火は熱い。
意味 (1)ねつ(熱)。ほてる(熱る)。人の体温およびそれを超える温かさ。「平熱ヘイネツ」「微熱ビネツ」「発熱ハツネツ」「熱病ネツビョウ」「熱帯ネッタイ」 (2)あつい(熱い)。高温で手を触れられない。「熱湯ネットウ」「灼熱シャクネツ」(焼けて熱い) (3)あつい(熱い)。夢中になる。心をうちこむ。「熱心ネッシン」「熱意ネツイ」「熱狂ネッキョウ
 セツ・け  衣部
解字 「衣(ころも)+埶(=熱。体の熱)」の会意。体の熱がこもる衣。体に直接ふれる肌着のこと。肌着の意から、ふだん・つねの意に、夜のねまきの意から、男女がみだらな意となった。
意味 (1)はだぎ。ふだんぎ。ねまき。「褻衣セツイ」 (2)け(褻)。ふだん。常日ごろ。「晴れと褻」(晴々しい時と日常の時) (3)なれる。なれなれしい。「褻言セツゲン」(なれなれしい言葉) (4)けがれる。みだらな。「猥褻ワイセツ」(男女の関係がみだらなこと)

形声字
 ゲイ・うわごと・たわごと  口部
解字 「口(くち)+藝(ゲイ)」の形声。ゲイという音を口から出すこと。六朝時代の字書[玉篇]に「笑囈ゲイするなり。また眠りて語るなり」とし、わらう・たわごと・ねごと・うわごと、をいう。ゲイは口からでる擬声語。
意味 (1)わらう。「笑ショウゲイ」(笑、囈とも、わらう意) (2)たわごと(囈)。ねごと。うわごと。「ゲイゴ」(たわごと。うわごと)「夢ムゲイ」(ねごと)

同体異字
 ウン  艸部
解字 「艸(くさ)+云(たちのぼる・ただよう)」の会意形声。草の立ちのぼるように生い茂るさま。また、草から香りがただよう香草の意味で用いる。正式な字は草かんむりが「十十」の形(ネットではうまく出ない)。※ 芸術の「芸」とは別の字。 
意味 (1)香草の名。ミカン科の多年草。香草で書物の虫除けに用いる。ヘンルーダ。「芸香ウンコウ」(香草の名。転じて、蔵書・書斎)。「芸閣ウンカク」(書庫。書斎) (2)草木の生い茂るさま。「芸芸ウンウン」(①草木が生い茂る。②もやもやして数がおおいさま) 
 音符「云ウン」を参照。
<紫色は常用漢字>

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