漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「宣セン」<広く知らせる>と「喧ケン」「萱ケン」「諠ケン」「暄ケン」「鰚はらか」

2024年01月25日 | 漢字の音符
 セン・のたまう  宀部 xuān

解字 甲骨文は「宀(たてもの)+まわりこむ形」であるが、詳細な記述はなく施設名を表している[甲骨文字辞典]。金文・篆文は、宀の中の「まわりこむ」形が複雑になり、上や上下に横線がつき、現代字で「宀+亘セン」になった。亘センは垣(めぐらす)意で周囲を垣(土塀)で取り巻いた宮殿。特に天子が居住する正殿をさす。転じて、宮殿に住む天子から発せられるお触れをいう。
意味 (1)天子が居住する正殿。「宣室センシツ」(古代の宮殿の名) (2)のたまう(宣う)。天子が意向を知らせる。「宣旨センジ」(天皇の命を伝える公文書)「託宣タクセン」(神に祈って受けたおつげ) (3)告げ知らせる。ひろく知らせる。「宣言センゲン」(広く外に表明する)「宣伝センデン」(①広く述べ伝える。②商業的な知らせ。コマーシャル) 

イメージ 
 「広く知らせる」
(宣)  
 「形声字」(喧・諠・萱・暄)
 「その他」(鰚)
音の変化  セン:宣  ケン:喧・諠・萱・暄  はらか:鰚

形声字
 ケン・かまびすしい・やかましい  口部 xuān
解字 「口(くち)+宣(セン⇒ケン)」の形声。口からやかましい声をだすことを喧ケンという。
意味 かまびすしい(喧しい)。やかましい(喧しい)。さわがしい。「喧伝ケンデン」(やかましく世間にいいふらす)「喧騒ケンソウ」(やかましくさわがしい。=喧噪)「喧嘩ケンカ」(①やかましいこと。②いさかい・争い)
 ケン・かまびすしい  言部 xuān
解字 「言(はなす)+宣(=喧)」の会意形声。かまびすしい(喧しい)意味の口⇒言(はなす)に変えた異体字。
意味 (1)かまびすしい(諠しい)。やかましい(諠しい)。やかましく騒ぐ。「諠譟ケンソウ」(やかましいこと)「諠譁ケンカ」(やかましいこと。 いさかいをすること。)
 ケン・カン・かや  艸部 xuān
解字 「艸(草)+宣(ケン)」の形声。ケンはケン(わすれる)に通じ、人に憂いを忘れさせる草のワスレ草をいう。ケンは「艸(くさ)+諼ケン(わすれる)」の会意形声で、わすれ草をいい萱ケンの異体字。日本では、かやをいう。
意味 (1)わすれぐさ(萱草)。ヤブカンゾウ(藪萱草)の別称。身につけると憂いを忘れるという草。「萱堂ケンドウ」(①母親の部屋。②転じて母親。母は家の北堂におり、堂の庭に憂いを忘れるようにと萱草を植えていたのでいう) (2)[国]かや(萱)。ススキ・スゲなど屋根を葺く草の総称。「刈萱かるかや」(山野に自生するイネ科の多年草)「苅萱堂かるかやドウ」(高野山にある苅萱道心とその子・石童丸の伝説ゆかりのお堂)
暄[煊] ケン・カン・あたたかい  日部 xuān
解字 「日(太陽)+宣(ケン)」の形声。陽光のあたたかいさまを暄ケンという。煊ケンは異体字で、火であたたかいさまをいう。
意味 あたたかい(暄かい)。あたたかさ。「暄寒ケンカン」(あたたかさと寒さ)「暄暖ケンダン」(あたたかい)「暄和ケンワ」(あたたかくのどか)

その他
<国字> はらか  魚部 xuān
解字 「魚(さかな)+宣」。はらか(鰚)。はらか(腹赤)とも書き、「はらあか」の変化した語。ニベ(鮸)の異名、また、一説にはマス(鱒)の別称という。毎年正月に、大宰府から朝廷に献上した[日本国語大辞典]。鰚の解字は不明だが、大宰府から朝廷に献上したので、宣センを天子が居住する正殿=朝廷と解釈すると献上魚の意味がでる。
<紫色は常用漢字>

<参考音符>
 セン・カン・コウ   音符「亘セン・カン」へ
意味 (1)めぐる。めぐらす。 (2)わたる(亘)。人名に用いる。

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