漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「缶フ・カン」<胴がふくれた器>と「匋トウ」<缶を窯で焼く>「陶トウ」「淘トウ」「掏トウ」「萄トウ」

2024年01月21日 | 漢字の音符
 フ・ほとぎ  缶部 fǒu
           
 
缶(ほとぎ)[搜狗(Sogou)百科]より  
解字 甲骨文字は土器の一般像で、意味は祭器、祭祀名、地名など[甲骨文字辞典]とする。中国ネットの検索エンジン「搜狗(Sogou)百科」の説明では「古代の酒漿(漉す前の酒)を盛る瓦器。腹が大きく口が小さい。有るものは蓋(ふた)有り。銅製も有り」とある。甲骨文のタテ線上部のᐱは蓋を表しているのかも知れない。金文は口の上が午(杵の原字)に誤ったとされる[甲骨文字辞典]。篆文は下が口⇒凵になり、現代字は「午+凵」の缶になっている。誤った字が現在まで続いているのは珍しい。なお、酒をいれた缶(ほとぎ)は、宴会中に酔った参加者が棒で缶を叩きながら歌をうたうことがあり、楽器としても使われのちに四角い打楽器となった。
意味 (1)ほとぎ(缶)。酒や水をいれた土製や青銅製のうつわ。「缶偏ほとぎへん」(部首・缶の名称) (2)楽器として使う。「撃缶ゲキフ」(缶ほとぎを楽器のかわりにうって拍子をとる)
参考 缶は、部首「缶ほとぎ」になる。漢字の左辺に付いて、ふくれた器の意を表す。しかし、この部に属する字は少なく主なものは、旧字の罐(=缶)・缺(=欠)の2字しかない。

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 「まるくふくれた器」
(缶・缶[罐])
音の変化  フ:缶  カン:缶[罐]

まるくふくれた器
[罐] カン・かま  缶部 guàn
解字 旧字は罐で「缶(まるくふくれた器)+雚(カン)」の形声。カンという名のまるい器。缶は、酒器・水器として用いられたが、罐カンは、甕(かめ)の類を指した。日本では、オランダ語でkanと発音する容器を表すために使われた。新字体は、旧字から雚を省略した。この結果、缶は本来の意味である「ほとぎ」以外にカンという発音と、土器以外の器という意味を獲得した。
意味 (1)かめ。水をいれる素焼きのかめ。(2)[国] かん(缶)。ブリキなどの金属製の容器。「缶詰カンづめ」「薬缶ヤカン」(もと薬を煎じるのに用いた容器。銅などで造った湯沸かし)(3)[国] かま(缶)。「汽缶キカン」(蒸気を発生させる缶。ボイラー)「缶焚(かまた)き」(ボイラーをたく人)「汽缶車キカンシャ」(蒸気機関車のこと)


    トウ <土器を作って窯で焼く>
 トウ  勹部 táo・yáo          

解字 金文は煙り出しのついたカマドに缶(ほとぎ)を入れた形で、窯で土器を焼くこと。篆文で「勹(つつむ)+缶(まるくふくれた土器)」の会意となった。勹は、ここではカマドを意味し、作った土器をカマドで焼くかたち。金文では人名および姓として用いられている(やき物を作る人や、その人々の姓の意か)。戦国期以降はやき物製作の意となっている。
意味 (1)やき物を焼く。 (2)やきもの(=陶)

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 「土器を窯で焼く」
(陶) 
 「形声字」(淘・掏・萄)
音の変化  トウ:陶・淘・掏・萄

土器を窯で焼く
 トウ・すえ  阝部 táo・yáo
解字 「阝(丘)+匋(土器を窯で焼く)」の会意形声。丘に作った窯(穴窯や登り窯)で土器を焼くこと。丘につくった窯は、炎が下から上に流れ高温で焼けるため、土器はかたく焼き締まる。
意味 (1)すえ(陶)。やきもの。「陶器トウキ」「陶芸トウゲイ」「陶物すえもの」 (2)(窯で焼くと土がかたく締まることから)人を教え育てる。「陶冶トウヤ」(才能・素質を引き出し人材を育てる)「薫陶クントウ」(立派な人の薫りが人を育てる) (3)たのしむ。うっとりする。「陶酔トウスイ」「陶然トウゼン

形声字
 トウ・よなげる  氵部 táo
解字 「氵(みず)+匋(トウ)」の形声。[正字通]に「米を淅(あら)うなり」とあり、米を淘(と)ぐことをいう。また砂金などを流し洗いしてより分けることを淘汰という。こまかい物を水中でゆり動かし良い物と悪い物を選び分けること。
意味 (1)よなげる(淘げる)。米をとぐ。すすぐ。よりわける。「淘金トウキン」(砂金を水でよりわける)「淘汰トウタ」(よりわけて不要のものを除く。汰も水で洗ってよりわける意)「自然淘汰シゼントウタ」(自然界で適応する生物は生き残り、しないものは滅びること)
 トウ・する  扌部 tāo
解字 「扌(手)+匋(=淘。よりわける)」の会意形声。手で大事なもの(財布など)を選り分けて抜き取ること。
意味 する(掏る)。すりとる。人が身につけているお金を手探りして抜き取ること。「する」の日本語は「擦る(こする)」に由来する。「財布を掏(す)る」「掏児すり
 ドウ・トウ  艸部 táo
解字 「艸(草木)+匋(トウ)」の形声。草木の名でトウ・ドウの音を表す字として用いられる。
意味 果樹の「葡萄ブドウ」に用いる字。葡萄は蔓性の落葉低木の果樹およびその果実をいう。西域から中国に伝わり、西域の言葉のbudawを音訳したもの。「葡萄酒ブドウシュ」「葡萄色ブドウいろ」(赤みがかった紫色)
<紫色は常用漢字>

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