肉 ニク・ジク 肉部 ròu
上は肉、下は月
解字 上図の肉は、切り取った獣肉の象形。甲骨文字からあるが、金文と篆文で月(下図)と似たかたちになる。現代字は肉となり、はっきり区別できるが、篆文で部首として使われた字は、現在も月で表されるので、この月は肉月(にくづき)とよばれる。
意味 (1)にく(肉)。み。しし。特に食用の獣肉。「肉食ニクショク」(2)生身のからだ。「肉体ニクタイ」「肉薄ニクハク」(身をもって迫る。薄は迫る意)(3)血のつながった。「肉親ニクシン」(4)じかに。器具などを使わない。「肉眼ニクガン」「肉声ニクセイ」(5)肉に似たやわらかく厚みのあるもの。「果肉カニク」「朱肉シュニク」
イメージ
「にく」(肉・炙)
「その他」(宍)
音の変化 ニク:肉・宍 シャ:炙
に く
炙 シャ・セキ・あぶる 火部 zhì
解字 「火+月(にく)」の会意。月は肉月のかたちで肉の意。炙は、肉を火であぶる形。
意味 (1)あぶる(炙る)。火にあてて軽く焼く。「炙(あぶ)り焼き」 (2)あぶり肉。「膾炙カイシャ」(膾は、なます(中国で細かく切った生の肉)、炙はあぶり肉、ともに美味で人が賞味するもの)「人口に膾炙カイシャする」(なますとあぶり肉が多くの人に好まれるように、人々の口にのぼり(話題になり)知れ渡ること) (3)薫陶をうける。親しく教えをうける。親しく交わる。「親炙シンシャ」(親しく接して感化をうける)
その他
宍 ニク・しし 宀部 ròu
解字 「宀(たてもの)+六(ニク)」の形声。ニクは肉ニクに通じ、宍は肉をうる店の意。転じて肉を表す。[学研漢和]は、六ロクは江南方言でニクと混同するとしている。また一説に、中国・六朝時代に肉の変形字として成立したとされ、肉の上部⇒宀、肉内部の仌⇒六、に変化したという。この説では、宍は肉の俗字になる。
意味 (1)しし(宍)。獣類の肉。肉の俗字。「宍人ししびと」(肉類を料理する人) (2)姓。「宍戸ししど」 (3)地名。「宍粟市しそうシ」(兵庫県宍粟郡の4町(山崎町、一宮町、波賀町、千種町)が合併して2005年4月1日誕生した市。
「宍粟郡しそうグン」(播磨はりま国(今の兵庫県南西部)の郡。もと宍禾(しさわ)の郡(こおり)と云った。郡名の禾カは漢代まで粟の意味であり(その後、稲の意)、宍禾の「しし・あわ」がなまって「しさわ」となり、その後、禾⇒粟に変化した宍粟(しさわ)になった。現在は宍粟しそうの発音。郡名の由来は、①山間の地であり、鹿ししと禾・粟(あわ)が多い土地。②鹿ししに遇あうことの多い土地。鹿⇒宍に、遇(あう⇒あわ)⇒禾・粟、になった、という2説がある。
「宍道湖しんじこ」(島根半島に南側にある汽水湖)
「宍道しんじ」は、宍しし(猪いのしし)+道みち(=路じ)」であり、猪が通った道の意。風土記の伝説に「当地で命(みこと)が狩をしたとき、犬に追いかけられた猪が逃げたところで、ここを宍道(ししじ⇒しんじ)という」とあり、松江市宍道町の「石宮(いしみや)神社」の神体石と鳥居の脇に鎮座する2つの巨石が猪石と犬石と名付けられている。「宍道湖しんじこ」は宍道の先にある湖の意。
<紫色は常用漢字>
参考 肉ニクは、部首「肉にく」になる。肉部は非常に少なく、主な字は腐フ(肉+音符「府フ」)しかない。部首「肉にく」が変形したかたちが「月にくづき」である。左辺や下部に付き、肉および人の身体の意味を表す。現在、月(つき)と同じ形になっているので、見分けるには個々の字にあたって判断が必要である。この他に舟のかたちが変化した舟月がある。
常用漢字
肉(にく)部 2字
肉ニク・ジク (部首)
腐フ・くさる(肉+音符「府フ」)
肉月(にくづき)部 43字 肉や肉体の一部分などを表す。
有ユウ・ある(月+音符「又ユウ」)
肌キ・はだ(月+音符「几キ」)
肖ショウ・にる(月+音符「小ショウ」)
肘チュウ・ひじ(月+音符「寸スン」)
肝カン・きも(月+音符「干カン」)
股コ・また(月+音符「殳シュ」)
肢シ(月+音符「支シ」)
肩ケン・かた(月+戸コの会意)
肪ホウ・あぶら(月+音符「方ホウ」)
肺ハイ(月+音符「市ハイ」)
胆タン(月+音符「旦タン」)
背ハイ・せ(月+音符「北ホク」)
胎タイ・はらむ(月+音符「台タイ」)
胞ホウ・えな(月+音符「包ホウ」)
胴ドウ(月+音符「同ドウ」)
胸キョウ・むね(月+音符「匈キョウ」)
脂シ・あぶら(月+音符「旨シ」)
脅キョウ・おびやかす(月+音符「劦キョウ」)
脇キョウ・わき(月+音符「劦キョウ」)
脚キャク・あし(月+音符「却キャク」)
脱ダツ・ぬぐ(月+音符「兌エツ」)
脳ノウ(月+音符「𡿺ノウ」)
腎ジン(月+音符「臤ケン」)
腕ワン・うで(月+音符「宛エン」)
腫シュ・はれる(月+音符「重ジュウ」)
腸チョウ・はらわた(月+音符「昜ヨウ」)
腹フク・はら(月+音符「复フク」)
腺セン・すじ(月+音符「泉セン」)
膜マク(月+音符「莫ボ」)
膝シツ・ひざ(月+音符「桼シツ」)
膨ボウ・ふくらむ(月+音符「彭ホウ」)
膳ゼン(月+音符「善ゼン」)
臆オク(月+音符「意イ」)
臓ゾウ(月+音符「蔵ゾウ」)
腰ヨウ・こし(月+音符「要ヨウ」)
肥ヒ・こえる(月+巴の会意)
肯コウ・うなずく(月+止の会意)
育イク・そだつ(月+𠫓(生まれ出た子)の会意)
胃イ(月+田の会意)
脈ミャク(月+𠂢ハイの会意)
脊セキ・せ(月を含む会意)
膚フ・はだ(月+盧ロの略体)
能ノウ・よく(月を含む象形)
※このうち会意の胃イ・脊セキ・能ノウは音符となる。
ふな月 2字 舟やうつわの意味を表す。
服フク・したがう(月(うつわ)+音符「𠬝フク」)
朕チン・われ(月(うつわ)+音符「关ソウ」)
<参考>
多 タ・おおい 夕部
解字 「夕(にく)+夕(にく)」の会意。肉をたくさん重ねたかたち。おおい意を表わす。夕は、夕がたの「夕」と同じ形であるが、ここでは肉の意。
意味 おおい(多い)。たくさん。「多額タガク」「多彩タサイ」「過多カタ」(多すぎる)「多寡タカ」(多い少ない)
イメージ
「多くの肉」(多・侈)
「形声字」(移)
音の変化 タ:多 イ:移 シ:侈
音符「多タ」を参照。
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上は肉、下は月
解字 上図の肉は、切り取った獣肉の象形。甲骨文字からあるが、金文と篆文で月(下図)と似たかたちになる。現代字は肉となり、はっきり区別できるが、篆文で部首として使われた字は、現在も月で表されるので、この月は肉月(にくづき)とよばれる。
意味 (1)にく(肉)。み。しし。特に食用の獣肉。「肉食ニクショク」(2)生身のからだ。「肉体ニクタイ」「肉薄ニクハク」(身をもって迫る。薄は迫る意)(3)血のつながった。「肉親ニクシン」(4)じかに。器具などを使わない。「肉眼ニクガン」「肉声ニクセイ」(5)肉に似たやわらかく厚みのあるもの。「果肉カニク」「朱肉シュニク」
イメージ
「にく」(肉・炙)
「その他」(宍)
音の変化 ニク:肉・宍 シャ:炙
に く
炙 シャ・セキ・あぶる 火部 zhì
解字 「火+月(にく)」の会意。月は肉月のかたちで肉の意。炙は、肉を火であぶる形。
意味 (1)あぶる(炙る)。火にあてて軽く焼く。「炙(あぶ)り焼き」 (2)あぶり肉。「膾炙カイシャ」(膾は、なます(中国で細かく切った生の肉)、炙はあぶり肉、ともに美味で人が賞味するもの)「人口に膾炙カイシャする」(なますとあぶり肉が多くの人に好まれるように、人々の口にのぼり(話題になり)知れ渡ること) (3)薫陶をうける。親しく教えをうける。親しく交わる。「親炙シンシャ」(親しく接して感化をうける)
その他
宍 ニク・しし 宀部 ròu
解字 「宀(たてもの)+六(ニク)」の形声。ニクは肉ニクに通じ、宍は肉をうる店の意。転じて肉を表す。[学研漢和]は、六ロクは江南方言でニクと混同するとしている。また一説に、中国・六朝時代に肉の変形字として成立したとされ、肉の上部⇒宀、肉内部の仌⇒六、に変化したという。この説では、宍は肉の俗字になる。
意味 (1)しし(宍)。獣類の肉。肉の俗字。「宍人ししびと」(肉類を料理する人) (2)姓。「宍戸ししど」 (3)地名。「宍粟市しそうシ」(兵庫県宍粟郡の4町(山崎町、一宮町、波賀町、千種町)が合併して2005年4月1日誕生した市。
「宍粟郡しそうグン」(播磨はりま国(今の兵庫県南西部)の郡。もと宍禾(しさわ)の郡(こおり)と云った。郡名の禾カは漢代まで粟の意味であり(その後、稲の意)、宍禾の「しし・あわ」がなまって「しさわ」となり、その後、禾⇒粟に変化した宍粟(しさわ)になった。現在は宍粟しそうの発音。郡名の由来は、①山間の地であり、鹿ししと禾・粟(あわ)が多い土地。②鹿ししに遇あうことの多い土地。鹿⇒宍に、遇(あう⇒あわ)⇒禾・粟、になった、という2説がある。
「宍道湖しんじこ」(島根半島に南側にある汽水湖)
「宍道しんじ」は、宍しし(猪いのしし)+道みち(=路じ)」であり、猪が通った道の意。風土記の伝説に「当地で命(みこと)が狩をしたとき、犬に追いかけられた猪が逃げたところで、ここを宍道(ししじ⇒しんじ)という」とあり、松江市宍道町の「石宮(いしみや)神社」の神体石と鳥居の脇に鎮座する2つの巨石が猪石と犬石と名付けられている。「宍道湖しんじこ」は宍道の先にある湖の意。
<紫色は常用漢字>
参考 肉ニクは、部首「肉にく」になる。肉部は非常に少なく、主な字は腐フ(肉+音符「府フ」)しかない。部首「肉にく」が変形したかたちが「月にくづき」である。左辺や下部に付き、肉および人の身体の意味を表す。現在、月(つき)と同じ形になっているので、見分けるには個々の字にあたって判断が必要である。この他に舟のかたちが変化した舟月がある。
常用漢字
肉(にく)部 2字
肉ニク・ジク (部首)
腐フ・くさる(肉+音符「府フ」)
肉月(にくづき)部 43字 肉や肉体の一部分などを表す。
有ユウ・ある(月+音符「又ユウ」)
肌キ・はだ(月+音符「几キ」)
肖ショウ・にる(月+音符「小ショウ」)
肘チュウ・ひじ(月+音符「寸スン」)
肝カン・きも(月+音符「干カン」)
股コ・また(月+音符「殳シュ」)
肢シ(月+音符「支シ」)
肩ケン・かた(月+戸コの会意)
肪ホウ・あぶら(月+音符「方ホウ」)
肺ハイ(月+音符「市ハイ」)
胆タン(月+音符「旦タン」)
背ハイ・せ(月+音符「北ホク」)
胎タイ・はらむ(月+音符「台タイ」)
胞ホウ・えな(月+音符「包ホウ」)
胴ドウ(月+音符「同ドウ」)
胸キョウ・むね(月+音符「匈キョウ」)
脂シ・あぶら(月+音符「旨シ」)
脅キョウ・おびやかす(月+音符「劦キョウ」)
脇キョウ・わき(月+音符「劦キョウ」)
脚キャク・あし(月+音符「却キャク」)
脱ダツ・ぬぐ(月+音符「兌エツ」)
脳ノウ(月+音符「𡿺ノウ」)
腎ジン(月+音符「臤ケン」)
腕ワン・うで(月+音符「宛エン」)
腫シュ・はれる(月+音符「重ジュウ」)
腸チョウ・はらわた(月+音符「昜ヨウ」)
腹フク・はら(月+音符「复フク」)
腺セン・すじ(月+音符「泉セン」)
膜マク(月+音符「莫ボ」)
膝シツ・ひざ(月+音符「桼シツ」)
膨ボウ・ふくらむ(月+音符「彭ホウ」)
膳ゼン(月+音符「善ゼン」)
臆オク(月+音符「意イ」)
臓ゾウ(月+音符「蔵ゾウ」)
腰ヨウ・こし(月+音符「要ヨウ」)
肥ヒ・こえる(月+巴の会意)
肯コウ・うなずく(月+止の会意)
育イク・そだつ(月+𠫓(生まれ出た子)の会意)
胃イ(月+田の会意)
脈ミャク(月+𠂢ハイの会意)
脊セキ・せ(月を含む会意)
膚フ・はだ(月+盧ロの略体)
能ノウ・よく(月を含む象形)
※このうち会意の胃イ・脊セキ・能ノウは音符となる。
ふな月 2字 舟やうつわの意味を表す。
服フク・したがう(月(うつわ)+音符「𠬝フク」)
朕チン・われ(月(うつわ)+音符「关ソウ」)
<参考>
多 タ・おおい 夕部
解字 「夕(にく)+夕(にく)」の会意。肉をたくさん重ねたかたち。おおい意を表わす。夕は、夕がたの「夕」と同じ形であるが、ここでは肉の意。
意味 おおい(多い)。たくさん。「多額タガク」「多彩タサイ」「過多カタ」(多すぎる)「多寡タカ」(多い少ない)
イメージ
「多くの肉」(多・侈)
「形声字」(移)
音の変化 タ:多 イ:移 シ:侈
音符「多タ」を参照。
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