漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「散サン」<葉がちる> と 「霰サン」「繖サン」「撒サツ」

2024年05月13日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 サン・ちる・ちらす・ちらかす・ちらかる  攵部

解字 甲骨文は手にもった棒で木々をたたく形。木の葉を表す二点を加えて、葉が散る形。しかし、意味は地名またはその長[甲骨文字辞典]。金文は木々⇒竹に、木の葉の二つの点⇒月(肉月)、手にもった棒⇒攴に変化した。意味は国名で周代に陝西省にあった小国。篆文は、木木⇒𣏟(木木の変形)になり[説文解字注]は「雑然とちぎれた肉。分離なり」などと肉がちぎれたさまとする。現代字はさらに、𣏟⇒龷に、攴⇒攵に変化した散になった。意味の源流は甲骨文にあり、木々を棒でたたいて、葉が「散る」意。葉が散る意から、ちる・ちらかる。散った葉が、あてもない・とりとめない意となる。
意味 (1)ちる(散る)。ちらす(散らす)。ちらかす(散らかす)。「散乱サンラン」「解散カイサン」(2)こなぐすり。「散薬サンヤク」(3)自由な。とりとめない。「散文サンブン」「散歩サンポ」(4)ひまな。「閑散カンサン」(5)ばら(散)。ばらまく(散蒔く)。「散銭ばらせん」(こぜに。はした銭)(6)地名。「散関サンカン」(陝西省の西部・大散嶺(山岳地帯で交通の要地)にある関所。金文で陝西省の小国とされた地域)

イメージ 
 「ちる・ちらす」
(散・撒・霰)
 「形声字」(繖)
音の変化  サン:散・霰・繖  サツ:撒

ちる・ちらす
 サツ・サン・まく  扌部
解字 「扌(手)+散(ちらす)」の会意形声。手で散らす、すなわち、撒(ま)くこと。サンの発音は散に影響を受けた慣用音。
意味 まく(撒く)。まきちらす。「撒布サツフ・サンプ」(=散布)「撒水サツスイ・サンスイ」(=散水)「撒き餌まきえ
 サン・セン・あられ  雨部
解字 「雨(あめ)+散(ちる)」の会意形声。雨が雲の中で冷やされて氷粒となり、ぱらぱらと散って降るもの。
意味 (1)あられ(霰)。雲から降る直径5mm未満の氷粒。5mm以上のものは雹(ひょう)として区別される。「雪霰ゆきあられ」(雪の周りに水滴がついたもの)「氷霰こおりあられ」(霰の外側に氷の層ができたもの)(2)霰のかたちをしたもの。「霰餅あられもち」(①賽サイの目(さいころのような小立方体)に切って干した餅。②小さく切って煎った餅に味付けした焼菓子)

形声字
 サン・きぬがさ  糸部
解字 「糸(=絹・きぬ)+散(サン)」の形声。サンは傘サンに通じ、絹を張った傘(かさ)をいう。後漢の[説文解字]は「蓋ガイ(おおい)也(なり)。糸に従い散サンの聲(声)」。北宋の字書[類篇]は「亦(また)傘サン(かさ)に作る」としている。

銅車馬上の繖蓋(きぬがさ)(「始皇帝と大兵馬俑展」より)
意味 (1)きぬがさ(繖)。かさ。衣笠。絹張りの長柄の傘。貴人の行列にさしかざす。「蓋繖ガイサン」(蓋も繖も、傘の意。=繖蓋サンガイ)「繖幄サンアク」(きぬがさ。きぬがさ状のとばり)「紫繖シサン」(紫色のきぬがさ)
「繖形花序サンケイカジョ」(多数の花が密集して傘の開いた形に咲くもの。ニンジンなど)

繖形花序・ニンジンの花「植物豆知識の頁 №45」

<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする