漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「舌カツ」と「刮カツ」「筈カツ」「活カツ」「闊カツ」「括カツ」「憩ケイ」「話ワ」

2024年07月20日 | 漢字の音符
  カツ<小刀で穴をあける>
<関連文字>
 ケツ  氏部
 
 カツ
 
  上は氒ケツ、下は舌カツ
解字 上の関連文字・氒ケツの金文第1字は彫刻刀など先の丸い刃に柄がついた形の象形。第2字は柄に横線が入ったかたち。篆文は丸刃⇒氏、横線の入った柄⇒十に変化し、現代字で氒ケツとなった。意味は彫刻刀で「ほる」。また、仮借(当て字)で、「その」の意がある。字形の変遷はネット「漢典」の氒より。
 下の舌カツの篆文は「氏(氒ケツの略体)+口(あな)」の会意形声(ケツ⇒カツに転音)で、𠯑カツ(上が氏、下が口)。意味は「氒の略体(丸刃の彫刻刀)」で口(あな)をあけること。すなわち、小刀でけずって穴をあけること。漢代の隷書で、氏が千に変化して口と一体化した舌カツになり、現代字へと続く。同形の舌(ゼツ・した)とは別字。舌カツを音符に含む字は、小刀で「けずる」、あけた穴の中を「すらすら通る」イメージを持つ。

イメージ  
 小刀で「けずる」(刮・筈)
 あけた穴を「すらすら通る」(活・闊・話・憩)
 「形声字」(括)

音の変化  カツ:刮・筈・活・闊・括  ケイ:憩  ワ:話

けずる
 カツ・けずる・こそげる  刂部
解字 「刂(かたな)+舌(けずる)」の会意形声。舌カツは、小刀でけずるかたち。そこに刂(刀)をつけて、けずる意を強めた字。
意味 (1)けずる(刮る)。こそげる(刮げる)。けずり除く。かきとる。そぐ。「刮刷カツサツ」(けずり取る。こすり取る。=刮削カツサク)(2)こする。「刮目カツモク」(目をこすってよく見る)
 カツ・やはず・はず  竹部
解字 「竹(竹の矢)+舌(=刮。けずる)」の会意形声。矢の矢羽側にある弦をうけるけずり込みをいう。また、弓の両端の弦をかける所もいう。
意味 (1)はず(筈)。やはず(筈)。矢筈とも書く。矢羽側に弦を受ける切り込みがある。(2)茶道具のやはず(筈)。茶道で掛け軸を床の間にかけるのに用いられる道具。

①②とも茶道具の筈(やはず)だが、①は竹の矢端を削りこんだ本来の矢筈のおもかげをとどめている。(ネットの古道具販売広告から)
(3)[国]ゆはず(弓筈)。弓の両端の弦をかける所。本来の字は「弭(ゆはず)」(4)[国](筈と弦はいつも合うことから)当然そうなること。道理。「そんな筈はない」「手筈てはず」(前もって決める手順)

すらすら通る
 カツ・いきる  氵部
解字 「氵(水)+舌(すらすら通る)」の会意形声。水が穴からすらすら通り流れること。[説文解字]は、「水の流るる聲(声)なり」とする。転じて、勢いがよい。いきいきとしていること。
意味 (1)勢いよく動く。いきいきとしている。「活気カッキ」「活発カッパツ」 (2)いきる(活きる)。いかす(活かす)。「活用カツヨウ」「生活セイカツ
 カツ・ひろい  門部
解字 「門(もん)+活(勢いよく通る)」の会意形声。門が広くて通りやすいこと。転じて、人の心にも言う。
意味 (1)ひろい(闊い)。「闊葉樹カツヨウジュ」(広く平たい葉を付ける樹木=広葉樹)(2)心がひろい。のびのびと。「闊達カッタツ」(心が広く物事にこだわらない)「闊歩カッポ」(大またで堂々と歩く)(3)(気が大きすぎて)うっかりする。注意がたりない。おろそか。「迂闊ウカツ」(うっかりする)
 ワ・カ(ク)・カイ(クイ)・はなす・はなし  言部
解字 「言(ことば)+舌(すらすら通る)」の会意形声。言葉がすらすらと続くこと。発音のワは、カ(ク)からクが取れた形の唐音。
意味 (1)はなす(話す)。語る。「会話カイワ」「講話コウワ」(2)はなし(話)。ものがたり。「実話ジツワ」「民話ミンワ
 ケイ・いこい・いこう  心部
解字 「息(いき)+舌(すらすら通る)」の会意形声。息がつまる状態から、呼吸がなめらかに通るようになること。おちつくこと。
意味 いこう(憩う)。くつろぐ。いこい(憩い)。「休憩キュウケイ」「小憩ショウケイ

形声字
 カツ・くくる  扌部
解字 「扌(て)+舌(カツ)」の形声。手でまるく束(たば)ねることを括カツという。[説文解字注]は「絜ケツ也。絜者(は)麻一耑タン也(なり)。引申して絜束ケッソク(麻紐で束ねる)と爲す之(これ)を絜ケツ、凡そ物を圍(かこ)う度(とき)之(これ)を絜ケツと曰う」とし、くくる意とする。
意味 くくる(括る)。まとめる。くびる。くびれる(括れる)。「一括イッカツ」(ひとまとめ)「包括ホウカツ」(ひとつに包んでまとめる)「概括ガイカツ」(ひっくるめてまとめる)「括弧カッコ」(弧状のもので括る)「括カツノウ」(①ふくろの口をくくる。②くくりまとめる。③口をつぐむ。知能をかくす)
<紫色は常用漢字>

<参考音符>
 ゼツ・した  舌部
解字 口の中から舌が出ている形の象形。舌カツとは同形異義の別字。
意味 (1)した(舌)。べろ。したの形をしたもの。「舌根ゼッコン」(舌のねもと)(2)いう。しゃべる。ことば。「舌禍ゼッカ」(自分の口から起こる災い)「毒舌ドクゼツ」(意地の悪い言葉)
イメージ  「した」(舌・甜・恬・銛)
音の変化 ゼツ:舌  セン;銛  テン:甜・恬
音符「舌ゼツ」へ

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。





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