至 シ・いたる 至部 zhì
解字 甲骨文字から篆文まで「矢が下方に進むさま+ 一 印(地面の線)」の会意。矢が地面に届いたさまで、いたる意。隷書(漢代)で上部が変形し下部は土になり、現代字はその流れをうけた至になった。矢が「届く・至る」意。至を音符に含む字は、「いたりとどまる」の他、「ぴったりつく」イメージを持つ。
意味 (1)いたる(至る)。とどく。「冬至トウジ」「夏至ゲシ」「必至ヒッシ」(必ずいたる)「開戦は必至だ」(2)このうえもない。きわめて。「至言シゲン」「至近シキン」「至急シキュウ」
イメージ
「いたりとどまる」(至・室・鰘・窒)
いたりて「ぴったりつく」(桎・蛭・姪)
「形声字」(膣・鵄)
音の変化 シ:至・鵄 シツ:室・桎・蛭 チツ:窒・膣 テツ:姪 むろあじ:鰘
いたりとどまる
室 シツ・むろ 宀部 shì
解字 「宀(たてもの)+至(いたりとどまる)」の会意形声。人が至りとどまる建物。通常は人のすむ住宅の家屋をいい、さらに家の各部屋の意味で用いる。また、大きな家屋に住む一族、その建物の宮殿などをいう。日本では、周囲を壁でかこんだ「むろ」の意味もある。
意味 (1)へや。「居室キョシツ」(居間)「教室キョウシツ」「温室オンシツ」(2)大きな家。宮殿。大きな家にすむ一族。「宮室キュウシツ」(宮殿)「皇室コウシツ」(天皇を中心とする一族)「王室オウシツ」(国王一家)(3)いえ。「室家シッカ」(いえ。家族)(4)(妻がすむ部屋から)つま。夫人。「正室セイシツ」(⇔側室ソクシツ)「令室レイシツ」(他人の妻の尊敬語)(5)[国]むろ(室)。周囲を壁でかこんだ部屋。山腹などの岩屋。「氷室ひむろ」(氷を夏まで貯蔵する部屋)
鰘 <国字> むろあじ 魚部 shì
解字 「魚(さかな)+室(むろ)」の会意。室津むろつ(兵庫県たつの市にあり播磨灘に面する港町・漁港)で多く漁獲される魚から名付けられたと言われる。
鰘(むろあじ)の干物(「沼津のひもの」より)
意味 むろあじ(鰘)。室鯵とも書く。アジ科の魚。マアジより少し大形。開き(干物)として賞味される。
榁<国字> むろ 木部 shǐ
解字 「木(き)++室(むろ)」の形声。「むろ」という名の木。ヒノキ科のビャクシン属常緑小・高木ネズ(杜松)の古名。樹脂が多く耐朽性が高いため、床柱のような装飾材に利用され、また盆栽として用いられる。
①②
①ネズ(杜松)の木(榁)。②榁(むろ)の変木
意味 (1)ヒノキ科の常緑小高木のネズ(杜松)の古名。ねず(杜松)。むろ(榁)。むろのき(榁木)。もろのき(榁木)とも。(2)地名。「榁木峠むろのきとうげ」(大阪から奈良に越える暗峠の延長線上にある奈良県の峠)(3)姓。「榁木むろき」
窒 チツ・ふさがる 穴部 zhì・dié
解字 「穴(あな)+至(いたりとどまる)」の会意形声。穴の奥で行きづまって先に進めないこと。
意味 (1)ふさがる(窒がる)。ふさぐ。「窒息チッソク」「窒欲チツヨク」(欲望をふさぐ)「窒塞チッソク」(ふさがること。ふさぐこと)(2)元素の名。「窒素チッソ」(空気の8割を占める気体元素。原子番号7、元素記号Nの元素。窒素だけでは窒息してしまうので付けられた)
耋 テツ・としより 老部 dié
解字 「老(としより)+至(いたる)」の会意形声。老年に至る意で、老人の意。
意味 (1)老人。八十歳の老人。また、七十・六十歳の老人。「耋艾テツガイ」(老人と若者)「孩耋ガイテツ」(若者と老人)(2)おいる。
ぴったりつく
桎 シツ・あしかせ 木部 zhì
解字 「木(き)+至(ぴったりつく)」の会意形声。身体にぴたりと付いて固定する木製の足かせ。[説文解字]に「足の械(かせ)也(なり)」とある。
桎(あしかせ)(ウィキペディア「足枷」より)
意味 (1)あしかせ(桎)。足枷とも書く。罪人の足にはめる刑具。2個の半円形の切り込みがある2枚の厚い板を組み合わせると足を拘束することが出来る器具。手にはめる刑具を梏コクという。「桎梏シッコク」(①足かせと手かせ、②自由を束縛するもの)(2)あしかせをはめる。「窮桎キュウシツ」(桎をはめられて窮(きわま)る)
蛭 シツ・テツ・ひる 虫部 zhì・dié
解字 「虫(むし)+至(ぴったりつく)」の会意形声。人の皮膚にぴったりと付いて血を吸うヒル。
意味 ひる(蛭)。他の動物に吸いついて血を吸うヒル類の総称。「肝蛭カンテツ」(山羊・牛などの草食獣と人の肝臓に寄生する吸虫)「蛭子ひるこ」(①日本神話でイザナギ・イザナミの間に生まれた子。3歳になっても脚が立たず海に流されたと伝える。②七福神の一人=恵比寿)
姪 テツ・めい 女部 zhí
解字 「女(おんな)+至(ぴったりつく)」の会意形声。ぴったりとつきそう女。もと、諸侯に嫁ぐ婦人にはその父の兄弟の子(女)がつきそう習慣があり、この女を意味した。転じて父の兄弟姉妹の子(娘)をいうようになった。また、女性からみた父の兄弟の子(娘)にも言う。
意味 (1)めい(姪)。兄弟姉妹の娘。「姪甥テツセイ」(めいとおい)「姪孫テッソン」(兄弟姉妹の孫)(2)つきそい。古代の嫁入りで正妻に従ってゆく女性。
形声字
膣 チツ 月部にく zhì
解字 「月(からだ)+窒(チツ)」の会意形声。女性の性器を膣チツという。
意味 ちつ(膣)。女性の性器。子宮から体外に通じる管。
鵄 シ・とび 鳥部 chī
解字 「鳥(とり)+至(シ)」の形声。シは鴟シ(とび)に通じ、「とび」をいう。鴟シの異体字。
意味 (1)とび(鵄)。海辺などにすみ、死んだ小動物などを食べる。はばたかないで輪をえがいて空中をとび餌をみつける。「鵄尾シビ」((瓦葺屋根の大棟の両端につけられる飾り。訓で「とびのお」と読むが、実際は魚の尾を象ったものといわれる。=鴟尾)(2)姓。「鵄崎とびさき」
東大寺大仏殿の鴟尾(鵄尾シビ)(ブログ「家の建人」より)
致 チ <いたらせる>
致 チ・いたす 至部 zhì
解字 金文は「人(ひと)+至シ(いたりとどまる)」の会意で、人をいたらせること。自動詞の至(いたる)に対して、他動詞(いたらせる)として用いる。篆文で、人⇒夂(下向きのあし)になり歩いていたらせる、さらに現代字で夂⇒攵ボク(=攴。うつ・たたく)に変化した致になった。[角川新字源]は、「夂を攵に書き誤った俗字」とするが、文字どおりに解釈すると、たたいて至らせるとなる。また、相手をこちらにいたらせる意も生じた。
意味 (1)いたす(致す)。いたらせる。「致死チシ」(死にいたらせる)「致命傷チメイショウ」(命を終わりにいたらせる傷)(2)いたす(致す)。こちらにいたらせる。まねきよせる。「誘致ユウチ」(誘いよせる)(3)きわめる。行きつく。「合致ガッチ」 (4)気持ちのいたるところ。おもむき。「風致フウチ」(自然のおもむき)「雅致ガチ」(風雅なおもむき)
イメージ
「いたらせる」(致・緻)
音の変化 チ:致・緻
いたらせる
緻 チ・こまかい 糸部 zhì
解字 「糸(いと)+致(いたらせる)」の会意形声。糸と糸の間を隙間なくつめて織ること。
意味 こまかい(緻かい)。目がつまって隙間がない。きめがこまかい。「緻密チミツ」「精緻セイチ」
<紫色は常用漢字>
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解字 甲骨文字から篆文まで「矢が下方に進むさま+ 一 印(地面の線)」の会意。矢が地面に届いたさまで、いたる意。隷書(漢代)で上部が変形し下部は土になり、現代字はその流れをうけた至になった。矢が「届く・至る」意。至を音符に含む字は、「いたりとどまる」の他、「ぴったりつく」イメージを持つ。
意味 (1)いたる(至る)。とどく。「冬至トウジ」「夏至ゲシ」「必至ヒッシ」(必ずいたる)「開戦は必至だ」(2)このうえもない。きわめて。「至言シゲン」「至近シキン」「至急シキュウ」
イメージ
「いたりとどまる」(至・室・鰘・窒)
いたりて「ぴったりつく」(桎・蛭・姪)
「形声字」(膣・鵄)
音の変化 シ:至・鵄 シツ:室・桎・蛭 チツ:窒・膣 テツ:姪 むろあじ:鰘
いたりとどまる
室 シツ・むろ 宀部 shì
解字 「宀(たてもの)+至(いたりとどまる)」の会意形声。人が至りとどまる建物。通常は人のすむ住宅の家屋をいい、さらに家の各部屋の意味で用いる。また、大きな家屋に住む一族、その建物の宮殿などをいう。日本では、周囲を壁でかこんだ「むろ」の意味もある。
意味 (1)へや。「居室キョシツ」(居間)「教室キョウシツ」「温室オンシツ」(2)大きな家。宮殿。大きな家にすむ一族。「宮室キュウシツ」(宮殿)「皇室コウシツ」(天皇を中心とする一族)「王室オウシツ」(国王一家)(3)いえ。「室家シッカ」(いえ。家族)(4)(妻がすむ部屋から)つま。夫人。「正室セイシツ」(⇔側室ソクシツ)「令室レイシツ」(他人の妻の尊敬語)(5)[国]むろ(室)。周囲を壁でかこんだ部屋。山腹などの岩屋。「氷室ひむろ」(氷を夏まで貯蔵する部屋)
鰘 <国字> むろあじ 魚部 shì
解字 「魚(さかな)+室(むろ)」の会意。室津むろつ(兵庫県たつの市にあり播磨灘に面する港町・漁港)で多く漁獲される魚から名付けられたと言われる。
鰘(むろあじ)の干物(「沼津のひもの」より)
意味 むろあじ(鰘)。室鯵とも書く。アジ科の魚。マアジより少し大形。開き(干物)として賞味される。
榁<国字> むろ 木部 shǐ
解字 「木(き)++室(むろ)」の形声。「むろ」という名の木。ヒノキ科のビャクシン属常緑小・高木ネズ(杜松)の古名。樹脂が多く耐朽性が高いため、床柱のような装飾材に利用され、また盆栽として用いられる。
①②
①ネズ(杜松)の木(榁)。②榁(むろ)の変木
意味 (1)ヒノキ科の常緑小高木のネズ(杜松)の古名。ねず(杜松)。むろ(榁)。むろのき(榁木)。もろのき(榁木)とも。(2)地名。「榁木峠むろのきとうげ」(大阪から奈良に越える暗峠の延長線上にある奈良県の峠)(3)姓。「榁木むろき」
窒 チツ・ふさがる 穴部 zhì・dié
解字 「穴(あな)+至(いたりとどまる)」の会意形声。穴の奥で行きづまって先に進めないこと。
意味 (1)ふさがる(窒がる)。ふさぐ。「窒息チッソク」「窒欲チツヨク」(欲望をふさぐ)「窒塞チッソク」(ふさがること。ふさぐこと)(2)元素の名。「窒素チッソ」(空気の8割を占める気体元素。原子番号7、元素記号Nの元素。窒素だけでは窒息してしまうので付けられた)
耋 テツ・としより 老部 dié
解字 「老(としより)+至(いたる)」の会意形声。老年に至る意で、老人の意。
意味 (1)老人。八十歳の老人。また、七十・六十歳の老人。「耋艾テツガイ」(老人と若者)「孩耋ガイテツ」(若者と老人)(2)おいる。
ぴったりつく
桎 シツ・あしかせ 木部 zhì
解字 「木(き)+至(ぴったりつく)」の会意形声。身体にぴたりと付いて固定する木製の足かせ。[説文解字]に「足の械(かせ)也(なり)」とある。
桎(あしかせ)(ウィキペディア「足枷」より)
意味 (1)あしかせ(桎)。足枷とも書く。罪人の足にはめる刑具。2個の半円形の切り込みがある2枚の厚い板を組み合わせると足を拘束することが出来る器具。手にはめる刑具を梏コクという。「桎梏シッコク」(①足かせと手かせ、②自由を束縛するもの)(2)あしかせをはめる。「窮桎キュウシツ」(桎をはめられて窮(きわま)る)
蛭 シツ・テツ・ひる 虫部 zhì・dié
解字 「虫(むし)+至(ぴったりつく)」の会意形声。人の皮膚にぴったりと付いて血を吸うヒル。
意味 ひる(蛭)。他の動物に吸いついて血を吸うヒル類の総称。「肝蛭カンテツ」(山羊・牛などの草食獣と人の肝臓に寄生する吸虫)「蛭子ひるこ」(①日本神話でイザナギ・イザナミの間に生まれた子。3歳になっても脚が立たず海に流されたと伝える。②七福神の一人=恵比寿)
姪 テツ・めい 女部 zhí
解字 「女(おんな)+至(ぴったりつく)」の会意形声。ぴったりとつきそう女。もと、諸侯に嫁ぐ婦人にはその父の兄弟の子(女)がつきそう習慣があり、この女を意味した。転じて父の兄弟姉妹の子(娘)をいうようになった。また、女性からみた父の兄弟の子(娘)にも言う。
意味 (1)めい(姪)。兄弟姉妹の娘。「姪甥テツセイ」(めいとおい)「姪孫テッソン」(兄弟姉妹の孫)(2)つきそい。古代の嫁入りで正妻に従ってゆく女性。
形声字
膣 チツ 月部にく zhì
解字 「月(からだ)+窒(チツ)」の会意形声。女性の性器を膣チツという。
意味 ちつ(膣)。女性の性器。子宮から体外に通じる管。
鵄 シ・とび 鳥部 chī
解字 「鳥(とり)+至(シ)」の形声。シは鴟シ(とび)に通じ、「とび」をいう。鴟シの異体字。
意味 (1)とび(鵄)。海辺などにすみ、死んだ小動物などを食べる。はばたかないで輪をえがいて空中をとび餌をみつける。「鵄尾シビ」((瓦葺屋根の大棟の両端につけられる飾り。訓で「とびのお」と読むが、実際は魚の尾を象ったものといわれる。=鴟尾)(2)姓。「鵄崎とびさき」
東大寺大仏殿の鴟尾(鵄尾シビ)(ブログ「家の建人」より)
致 チ <いたらせる>
致 チ・いたす 至部 zhì
解字 金文は「人(ひと)+至シ(いたりとどまる)」の会意で、人をいたらせること。自動詞の至(いたる)に対して、他動詞(いたらせる)として用いる。篆文で、人⇒夂(下向きのあし)になり歩いていたらせる、さらに現代字で夂⇒攵ボク(=攴。うつ・たたく)に変化した致になった。[角川新字源]は、「夂を攵に書き誤った俗字」とするが、文字どおりに解釈すると、たたいて至らせるとなる。また、相手をこちらにいたらせる意も生じた。
意味 (1)いたす(致す)。いたらせる。「致死チシ」(死にいたらせる)「致命傷チメイショウ」(命を終わりにいたらせる傷)(2)いたす(致す)。こちらにいたらせる。まねきよせる。「誘致ユウチ」(誘いよせる)(3)きわめる。行きつく。「合致ガッチ」 (4)気持ちのいたるところ。おもむき。「風致フウチ」(自然のおもむき)「雅致ガチ」(風雅なおもむき)
イメージ
「いたらせる」(致・緻)
音の変化 チ:致・緻
いたらせる
緻 チ・こまかい 糸部 zhì
解字 「糸(いと)+致(いたらせる)」の会意形声。糸と糸の間を隙間なくつめて織ること。
意味 こまかい(緻かい)。目がつまって隙間がない。きめがこまかい。「緻密チミツ」「精緻セイチ」
<紫色は常用漢字>
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