朿 シ・セキ 木部
解字 甲骨文は矢の形が含まれているものがあり、武器の一種の象形。先が尖った武器であろう。[甲骨文字辞典]によると、意味は①武人、②軍事攻撃や狩猟、③軍事駐屯地など。金文もほぼ同じ形だが、篆文で木が含まれる形に変化したので、後漢の[説文解字]は、木のトゲと解釈した。武器の意味は、古代文字が「朿シ(武器の一種)+貝(財貨)」である責セキに含まれるが、音符「朿シ」のイメージは「とげ」で解釈できるので(同音代替をのぞく)、意味も「とげ」であることから、刺(さす・とげ)の原字としてさしつかえないと思う。部首は木部。
意味 とげ。草木のとげ。のぎ(芒)。
イメージ
「とげ」(朿・刺・棘・棗)
「同音代替(サク)」(策)
音の変化 シ:朿・刺 キョク:棘 サク:策 ソウ:棗
と げ
刺 シ・さす・ささる・とげ 刂部
解字 「刂(刀)+朿(とげ)」の会意形声。とげのようにとがった刀。この刀でさすこと。また、トゲの意味で用いられる。
意味 (1)さす(刺す)。つきさす。ささる(刺さる)「刺客シカク」(暗殺をおこなう人)「刺激シゲキ」「刺繍シシュウ」「刺青シセイ・いれずみ」 (2)相手の弱みをつく。そしる。なじる。「風刺フウシ」(3)とげ(刺)。とがったもの。はり。「有刺鉄線ユウシテッセン」(4)(刺して)様子をさぐる。「刺探シタン」(漢方で針を刺して病気の所在を探る)「名刺メイシ」(①名前や来訪目的を木竹簡に書いて玄関で渡し面会を探るもの。②姓名・住所・職業などを印刷した紙片)「刺シを通ず」(名刺を渡して面会を求める)「刺謁シエツ」(名刺を渡して目上の人に会う)
棘 キョク・いばら・とげ 木部
棘のあるタラノキ(「植木図鑑・植木ペディア」より)
解字 「朿(とげ)+朿(とげ)」の会意。とげが横に並ぶことから、とげのある低木の意。
意味 (1)いばら(棘)。とげのある低木の総称。「茨棘シキョク」(茨も棘も、いばらの意)「棘矢キョクシ」(いばらの木の矢。魔除けに用いる)「桃弧棘矢トウコキョクシ」(桃の木の弓といばらの矢。魔除けの道具) (2)とげ(棘)。はり。「棘皮キョクヒ」(とげのある皮膚)「棘皮動物キョクヒドウブツ」(ヒトデ・ウニ・ナマコなど、とげのように突き出たものが多い動物)
棗 ソウ・なつめ 木部
サネブトナツメの枝・武田薬品京都薬用植物園
解字 「朿(とげ)+朿(とげ)」の会意。とげが上下にならぶことから、とげのある高木の意。とげの多いなつめの木をいう。原種のナツメは幹や枝に鋭いとげがあった。現在のナツメは品種改良され、とげはないか、あっても小さい。
意味 (1)なつめ(棗)。クロウメモドキ科の落葉小高木。長楕円形の実がなり種子は食用となるほか、「酸棗仁サンソウニン」と称する生薬となる。「棗椰子なつめヤシ」(なつめに似た液果をつけるヤシ) (2)抹茶の茶入れ。形がなつめの実に似ていることから。「利休棗りきゅうなつめ」(茶道で最も広く用いられている形の棗)
同音代替
策 サク ・むち・ふだ・はかりごと 竹部
解字 「竹(たけ)+朿(サク)」の形声。サクは、A 責サク・セキ、B 冊サク・サツ、に通じる。
A「竹+サク(責サク・セキ:せめる)」で、竹の細い棒で馬を責める。むちの意。また、竹の細い棒が転じて、つえの意ともなる。
B「竹+サク(冊サク・サツ:ふだ)」で、竹のふだ、竹簡・文書の意。
意味 A(1)むち(策)。むちうつ。「策馬サクバ」(馬をむちうつ) (2)つえ。つえをつく。「散策サンサク」(杖をついて散歩するようにぶらぶら歩く) B(3)ふだ(策)。ふみ。書きつけ。「簡策カンサク」(手紙)「対策タイサク」(相手の策(ふみ)に対応する。転じて、相手や事件の状況に応じてとる方法) (4)はかりごと(策)。「策略サクリャク」
<紫色は常用漢字>
<参考>
責 セキ・シャク・せめる 貝部
解字 甲骨文から篆文まで「朿シ(武器の一種)+貝(財貨)」 の会意形声。朿は、先の尖った武器の一種。この武器で財貨を力づくで求めること。また転じて、とがめる意となる。現代字は、篆文の上部・朿⇒龶 に変化した責になった。なお、甲骨文では、財貨を集積する意があるが、これは音符にあらわれる。
意味 (1)せめる(責める)。力づくで求める。とがめる。「叱責シッセキ」「自責ジセキ」「呵責カシャク」(呵は、しかる意。しかって責めること)(2)なすべき仕事。つとめ。せめ。「責務セキム」「責任セキニン」「重責ジュウセキ」
イメージ
「財貨を求める」(責・債)
出された財貨を 「つみかさねる」(積・癪・績・漬・簀・蹟)
音の変化 セキ:責・積・績・蹟 サイ:債 サク:簀 シ:漬 シャク:癪
音符「責セキ」を参照。
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
解字 甲骨文は矢の形が含まれているものがあり、武器の一種の象形。先が尖った武器であろう。[甲骨文字辞典]によると、意味は①武人、②軍事攻撃や狩猟、③軍事駐屯地など。金文もほぼ同じ形だが、篆文で木が含まれる形に変化したので、後漢の[説文解字]は、木のトゲと解釈した。武器の意味は、古代文字が「朿シ(武器の一種)+貝(財貨)」である責セキに含まれるが、音符「朿シ」のイメージは「とげ」で解釈できるので(同音代替をのぞく)、意味も「とげ」であることから、刺(さす・とげ)の原字としてさしつかえないと思う。部首は木部。
意味 とげ。草木のとげ。のぎ(芒)。
イメージ
「とげ」(朿・刺・棘・棗)
「同音代替(サク)」(策)
音の変化 シ:朿・刺 キョク:棘 サク:策 ソウ:棗
と げ
刺 シ・さす・ささる・とげ 刂部
解字 「刂(刀)+朿(とげ)」の会意形声。とげのようにとがった刀。この刀でさすこと。また、トゲの意味で用いられる。
意味 (1)さす(刺す)。つきさす。ささる(刺さる)「刺客シカク」(暗殺をおこなう人)「刺激シゲキ」「刺繍シシュウ」「刺青シセイ・いれずみ」 (2)相手の弱みをつく。そしる。なじる。「風刺フウシ」(3)とげ(刺)。とがったもの。はり。「有刺鉄線ユウシテッセン」(4)(刺して)様子をさぐる。「刺探シタン」(漢方で針を刺して病気の所在を探る)「名刺メイシ」(①名前や来訪目的を木竹簡に書いて玄関で渡し面会を探るもの。②姓名・住所・職業などを印刷した紙片)「刺シを通ず」(名刺を渡して面会を求める)「刺謁シエツ」(名刺を渡して目上の人に会う)
棘 キョク・いばら・とげ 木部
棘のあるタラノキ(「植木図鑑・植木ペディア」より)
解字 「朿(とげ)+朿(とげ)」の会意。とげが横に並ぶことから、とげのある低木の意。
意味 (1)いばら(棘)。とげのある低木の総称。「茨棘シキョク」(茨も棘も、いばらの意)「棘矢キョクシ」(いばらの木の矢。魔除けに用いる)「桃弧棘矢トウコキョクシ」(桃の木の弓といばらの矢。魔除けの道具) (2)とげ(棘)。はり。「棘皮キョクヒ」(とげのある皮膚)「棘皮動物キョクヒドウブツ」(ヒトデ・ウニ・ナマコなど、とげのように突き出たものが多い動物)
棗 ソウ・なつめ 木部
サネブトナツメの枝・武田薬品京都薬用植物園
解字 「朿(とげ)+朿(とげ)」の会意。とげが上下にならぶことから、とげのある高木の意。とげの多いなつめの木をいう。原種のナツメは幹や枝に鋭いとげがあった。現在のナツメは品種改良され、とげはないか、あっても小さい。
意味 (1)なつめ(棗)。クロウメモドキ科の落葉小高木。長楕円形の実がなり種子は食用となるほか、「酸棗仁サンソウニン」と称する生薬となる。「棗椰子なつめヤシ」(なつめに似た液果をつけるヤシ) (2)抹茶の茶入れ。形がなつめの実に似ていることから。「利休棗りきゅうなつめ」(茶道で最も広く用いられている形の棗)
同音代替
策 サク ・むち・ふだ・はかりごと 竹部
解字 「竹(たけ)+朿(サク)」の形声。サクは、A 責サク・セキ、B 冊サク・サツ、に通じる。
A「竹+サク(責サク・セキ:せめる)」で、竹の細い棒で馬を責める。むちの意。また、竹の細い棒が転じて、つえの意ともなる。
B「竹+サク(冊サク・サツ:ふだ)」で、竹のふだ、竹簡・文書の意。
意味 A(1)むち(策)。むちうつ。「策馬サクバ」(馬をむちうつ) (2)つえ。つえをつく。「散策サンサク」(杖をついて散歩するようにぶらぶら歩く) B(3)ふだ(策)。ふみ。書きつけ。「簡策カンサク」(手紙)「対策タイサク」(相手の策(ふみ)に対応する。転じて、相手や事件の状況に応じてとる方法) (4)はかりごと(策)。「策略サクリャク」
<紫色は常用漢字>
<参考>
責 セキ・シャク・せめる 貝部
解字 甲骨文から篆文まで「朿シ(武器の一種)+貝(財貨)」 の会意形声。朿は、先の尖った武器の一種。この武器で財貨を力づくで求めること。また転じて、とがめる意となる。現代字は、篆文の上部・朿⇒龶 に変化した責になった。なお、甲骨文では、財貨を集積する意があるが、これは音符にあらわれる。
意味 (1)せめる(責める)。力づくで求める。とがめる。「叱責シッセキ」「自責ジセキ」「呵責カシャク」(呵は、しかる意。しかって責めること)(2)なすべき仕事。つとめ。せめ。「責務セキム」「責任セキニン」「重責ジュウセキ」
イメージ
「財貨を求める」(責・債)
出された財貨を 「つみかさねる」(積・癪・績・漬・簀・蹟)
音の変化 セキ:責・積・績・蹟 サイ:債 サク:簀 シ:漬 シャク:癪
音符「責セキ」を参照。
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