漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「燕エン」<つばめ>と「嚥エン」「讌エン」「臙エン」

2023年10月14日 | 漢字の音符
  増補しました。
 エン・つばめ  灬部


ツバメの飛翔(野鳥写真図鑑「ツバメ」より)
解字 甲骨文字は、つばめの飛ぶ姿の象形。尾が二本に分かれているのが描かれている。篆文は「廿(あたま)+北(両翼)+口(胴体)+火(尾の形)」に変化した。現代字は篆文の火⇒灬に変化した「燕」になった。また、宴エンに通じて、酒盛り(宴会)、偃エン(いこう・やすむ)に通じて、くつろぐ意がある。
意味 (1)つばめ(燕)。ツバメ科の渡り鳥。つばくろ。ツバメのような。「燕雀エンジャク」(ツバメやスズメのような小鳥。度量の小さい人物)「燕窩エンカ」(アナツバメが海藻を唾液で固めて作ったまるい巣。中華料理の高級材料となる=燕巣エンソウ)「燕尾服エンビフク」(男性の洋装礼服の一種。上着の後ろが燕の尾に似ているから)(2)さかもり。「燕楽エンラク」(酒宴を開いて遊興する)(3)やすんじる。くつろぐ。「燕居エンキョ」(くつろいで家ですごす)(4)国名。地名。「燕エン」(紀元前1100年頃 - 紀元前222年に中国の周代・春秋時代・戦国時代にわたって存在した国)「燕支山エンシザン」(甘粛省にある山脈) (5)「燕子花かきつばた」とは、アヤメ科の多年草。 (6)「燕麦エンバク」とは、イネ科カラスムギ(烏麦)属の1年草。食用になるが、主に馬の飼料として用いられる。名前の由来は、カラスムギ(烏麦)が雑草で、その実は食べられないのに対し、燕麦は食用となるので、烏より上等という意味で燕麦と名付けたとされる。 

イメージ
 「つばめ」
(燕)  
 「形声字」(嚥・讌・醼)
 「地名」(臙)
音の変化 エン:燕・嚥・讌・醼・臙 
 
形声字
 エン・のむ・のど  口部
解字 「口(くち)+燕(エン)」の形声。エンは咽エン・イン(のど)に通じ、嚥は、口からのどを通ってのむこと。
意味 (1)のむ(嚥む)。のみこむ。「嚥下エンカ」(のみこむ。エンゲとも。=咽下エンカ)「誤嚥ゴエン」(食べ物や異物を気管内に飲み込んでしまうこと)「嚥下障害エンゲショウガイ」(食べ物や水分を飲み込むのが正常に機能しなくなること) (2)のど(嚥)。「嚥喉エンコウ」(=咽喉インコウ
 エン  言部
解字 「言(ことば)+燕(エン)」の形声。エンは宴エン(くつろぐ。たのしむ)に通じ、くつろいで話すこと。また、さかもり・宴会をいう。
意味 (1)くつろいで語り合う。くつろぐ。「讌語エンゴ」(くつろいで語る) (2)さかもり。宴会。「讌楽エンラク」(酒盛りして楽しむ)「讌飲エンイン」(さかもり。宴会。飲は酒を飲む意)
 エン  酉部
解字 「酉(さけ)+燕(エン)」の形声。エンは宴エン(くつろぐ。たのしむ)に通じ、酒を飲みながらくつろぎ楽しむこと。
意味 酒盛りをする。うたげ。「醼飲エンイン」(酒盛りで飲む)「游醼ユウエン」(社交の酒盛り)

地名
 エン・べに  月部にく
解字 「月(脂肪)+燕(地名)」の形声。燕は甘粛省にある山脈の燕支山エンシザンを表す。この山のふもとで採れるベニバナの花を用いて、その汁を脂あぶらに練りこんだ化粧用の赤色系の「べに」が作られたからといわれる。のちラックカイガラムシの体表から分泌される暗紫色の物質を用いたものなども含めて言う。また、嚥エン(のど)に通じて、のどの意がある。
意味 (1)べに(臙)。古代中国のベニバナから製したべに。「臙脂虎エンジコ」(臙脂べにで化粧した虎。嫉妬深い女をいう)「臙脂虫エンジむし」(カイガラムシ科の昆虫。体に多量の紅色色素を含み、臙脂色染料の原料になる) (2)紫と赤を混ぜた絵具。「臙脂エンジ=燕脂」(ベニバナを原料とした赤色系顔料)「臙脂色エンジいろ」(濃い紅色)「臙脂墨えんじずみ」(臙脂に墨を交えた赤黒色の絵具)(2)のど。「臙喉エンコウ」(のど)

臙脂色(「伝統色のいろは」より)


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