無名橋という名の名もない橋。
全国には、この無名橋が数え切れないぐらい存在しています。
そのなかのひとつ。
北川村小島の国道493号(旧道)にある小さな橋。
この無名橋を架けかえる仕事がはじまります。
着手前の調査をする現場技術者を見ながら
曽野綾子『無名碑』の一節が思い浮かびました。
「あなたが、あそこにダムを作るのね」
「僕も作る」
「名前は書かないのね。あなたの仕事は」
「そうだよ、小説家とは違う」
竜起は思い出して笑った。
「書かないのがすてきだわ。名前は残らないほうがいいの」
「僕の仕事は一生どんなにいい仕事をしても個人の名前は残らない」
「でも、私たちの子供が覚えていてくれるでしょうね。私、子供に教えるつもりよ。このダムはね、お父さんが作ったのよ、って」
「それで充分じゃないか」
(『無名碑(上)』曽野綾子、講談社文庫、P.128)
無名橋という名の名もない橋を架けかえる無名のひとたち。
「この橋はね、お父さんがつくったんだよ」
ぜひ、そう自慢してやってくださいな。
(みやうち)
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