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WEBニュース特集 歴史に見るアイヌ民族とサケ #アイヌ #サケ

2019-11-13 | アイヌ民族関連
NHK 2019年10月28日(月)午前11時20分 更新

「民族共生象徴空間」=ウポポイのオープンまであと半年。今回は、アイヌ民族とサケについて考えます。 「儀式に使うサケぐらいは自由に」というアイヌの人たちの願いの一方、サケ漁は今もなお、道の許可が必要な状態が続いています。先住民としてのサケ漁の権利をどうするのかは意見が分かれています。この問題、取材を進めると、十勝に興味深い史料が残されていました。記されていたのは明治初期の一時期、アイヌの人たちと入植してきた和人が協力し合ってサケ漁に取り組んでいた歴史でした。(2019年10月24日 放送)
【“神の魚” アイヌとサケ】
北海道は秋になると多くのサケが川に遡上してきます。アイヌの人たちにとって、サケは特別な存在です。アイヌ語でカムイチェプ「神の魚」とも呼ばれ、伝統の儀式にも使われてきました。かつてサケとともに暮らしていたアイヌの人たち。しかし、明治以降、自由に漁をすることはできなくなりました。その状況はことし5月にアイヌ民族を「先住民族」と明記した新たな法律「アイヌ施策推進法」が施行されても変わっていません。この現状について、元北海道ウタリ協会理事長の笹村二朗さんは、「法律で先住民族として認めたのだから、儀式に使うサケぐらい自由にとらせるべきじゃないのか」と話しています。
【アイヌと和人がともに…十勝組合】
アイヌの人たちが今では自由にとることができなくなっているサケ。しかし、かつて十勝では、アイヌと和人が協力しあってサケ漁に取り組んでいました。その場所は十勝川の河口に近い豊頃町大津。十勝開拓が始まった「十勝発祥の地」とされています。「北海道殖民状況報文 十勝国」という公文書には、当時の状況について、「『アイヌ』と共同して十勝組合を設く」「其名義は和人六名『アイヌ』七名なり」と記されています。明治8年に結成されたのがアイヌと和人による漁業組合「十勝組合」でした。組合は40か所以上の漁場を経営。その利益はアイヌと和人で分け合っていました。
【消えたアイヌのサケ漁】
しかし、こうした状況は長くは続きませんでした。政府が、多くの利益が出るサケ漁を和人にも広く認めるため、十勝組合は解散に追い込まれたのです。さらに明治16年には、資源保護を理由に十勝川でのサケ漁は禁止になりました。道内各地で行われていたアイヌのサケ漁はこの時期に消えていったのです。
【アイヌ社会を変えたサケ漁禁止】
突然、先住民としての権利を奪われたアイヌの人たち。生活の糧だったサケを失い、困窮を極めました。帯広市に当時の状況を伝える文書が残されていました。十勝に入植した開拓団「晩成社」の記録です。
幹部の日記には、「飢餓の状を見回る」「救助願をしたためまた米を与う」という記述がありました。道内各地のアイヌの集落が飢餓に苦しみ、死者も出たといいます。サケ漁の禁止は、狩猟や採集で暮らしてきたアイヌの社会を大きく変えることになります。アイヌの人たちは雇われて農作業などにあたるようになったのです。帯広百年記念館の大和田努学芸員は、「金銭で雇用されるような近代の体制に組み込まれていってしまった。元来はどこに行って何をとろうと自由な人たちだったが、いろいろ制限される中で伝統的な生活が難しくなっていった」と話しました。
【どうなるウポポイの展示】
「ウポポイ」の準備室では、これまで全道各地からアイヌに関する資料を収集してきました。しかし展示方法については「アイヌ民族の視点で」とされているものの、具体的な内容はまだ明らかになっていません。
先住民の権利に詳しい鹿児島純心女子大学の廣瀬健一郎准教授はウポポイの果たすべき役割について、「なによりもアイヌ民族と和人の関係の歴史を正確に発信する場であってほしい」と話しています。
歴史には多くの見方があり、アイヌの歴史をどのように記述するかは、先住民としての権利につながるだけにデリケートな問題です。しかし、ウポポイの完成を控えた今だからこそ、その議論をできるだけオープンにして、アイヌの歴史や先住民としての権利について認識を深めていくことが重要ではないでしょうか。
(帯広放送局 佐藤恭孝記者)
https://www.nhk.or.jp/sapporo/articles/slug-n0400a963673c?fbclid=IwAR27qRlhZN9RW8IQXCLS_ph-DOl4IZVocIjGBI4rg0pjLux3P9NtqrtJNb0

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ウポポイ「知ってる」道外5% 道民も35%

2019-11-13 | アイヌ民族関連
北海道新聞 11/13 05:00
 道は12日、来春に胆振管内白老町で開業予定のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の認知度調査の結果を公表した。ウポポイを知っている道外在住者はわずか5・2%。道民でも35・4%にとどまった。
 調査は8月上旬に道内と三大都市圏で約千人を対象にインターネット上で実施。ウポポイに行きたいと思う人は道民が54%、道外在住者は52・8%だった。
 一方、内閣府が昨年6~7月に実施した全国世論調査調査でウポポイを知っている人は9・2%だった。認知度は依然低迷しており、アイヌ政策課は「さらなる認知度向上とウポポイの魅力発信に取り組む」としている。(安倍諒)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/364155

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観光ガイド養成へ講座 12月から白老町 ウポポイ開業に向け 連絡組織設立し体制づくり

2019-11-13 | アイヌ民族関連
北海道新聞 11/12 05:00
 【白老】町内で整備が進むアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の来年4月開業に向けて、町は12月から、町内の観光スポットを案内するガイドの養成講座を開く。6回連続の内容で行い、修了した人を対象にした連絡組織を本年度中に設立し、ウポポイを訪れる観光客を町内でもてなす体制づくりを進める。
 政府がウポポイの年間来場者100万人を目標に掲げる中、町は町内の観光入り込み客数を2018年度の2倍の300万人に増やすことを目指している。希望する町民を観光ガイドとして養成することで、ウポポイ来場者を町内の他の観光施設に誘導し、地元の自然やアイヌ文化の魅力をPRする狙いだ。
 講座は町コミュニティセンター(本町1)を会場に12月12日から来年2月6日まで行い、6回とも午後6時半から1時間半。苫小牧駒沢大の岡田路明客員教授が町の歴史や地元アイヌ文化の基礎知識について、町内の関連観光スポットの概要とともに講義する。ウポポイの運営主体となるアイヌ民族文化財団(札幌)の職員は、ウポポイの理念や施設について説明する。
 講座の修了者は新設する連絡組織で登録し、白老観光協会などが主体となってウポポイ開業後、ガイドとして活動してもらいたい考えだ。町経済振興課は「将来は有償でガイド活動ができるような体制を整えていきたい」と話している。
 講座は無料で、全6回参加できる人を募集する。定員30人。希望者は22日までに町ホームページに掲載されている申込書に記載し、町経済振興課に提出する。問い合わせは同課(電)0144・82・8214へ。(金子文太郎)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/363930


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知事、20団体と意見交換 18日以降 官民連携強化狙う

2019-11-13 | アイヌ民族関連
北海道新聞 11/12 05:00
 鈴木直道知事は、道内の経済や福祉など計20の団体のトップらと初の意見交換を行う方向で調整している。鈴木カラーでもある官民連携を強化するのが狙い。知事にとって初の本格的な予算編成に向け、重点政策を検討する参考にすることも想定している。
 知事は9月に、来年度に向けた政策検討の考え方として「官民連携に向けたあらゆる可能性の検討」を指示しており、民間団体のトップとの交流を通じて各界とのパイプも太くしたい考えだ。18日の週に2回開く予定で、10団体ずつ行う。各団体が5分ずつ発言し、その後に約30分間の意見交換を行う方向だ。
 経済関連では道経連や北海道商工会議所連合会、北海道観光振興機構、北海道IT推進協会などが出席。1次産業関連ではJA北海道中央会や道漁連、保健福祉関連では北海道医師会や北海道社会福祉協議会が参加する。このほか、北海道女性協会や北海道アイヌ協会、道市長会、道町村会も予定している。
 関係者によると、同様の意見交換は高橋はるみ前知事は当初は行っていたが、近年はなかったという。(村田亮)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/363801

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アイヌ工芸品の魅力紹介 デザイナーらが15日フォーラム

2019-11-13 | アイヌ民族関連
北海道新聞 11/12 05:00
 デザイナーやアイヌ工芸家らがアイヌ工芸品の魅力の伝え方などを語り合う初の「アイヌデザインフォーラム」(道主催)が15日午後2時から、札幌市中央区北1西4の札幌グランドホテルで開かれる。
 牛乳やガムのパッケージデザインで知られるグラフィックデザイナーの佐藤卓さんが「デザイン×文化の継承」と題して基調講演。衣料品・雑貨販売のビームス(東京)のディレクター北村恵子さんらが釧路市阿寒湖温泉の若手アイヌ工芸家と服飾品や雑貨を開発したことなどを紹介する。
 パネルディスカッションでは、日高管内平取町のアイヌ工芸家の関根真紀さんらが工芸品の価値向上や販路拡大について議論。同日午後1時から札幌駅前通地下歩行空間の北大通広場東では、工芸品の展示即売会が同時開催される。
 参加無料で、事前申し込みが必要。詳細はhttps://ainuforum.jpへ。問い合わせは事務局(電)011・613・3633へ。(村田亮)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/363763

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“アイヌ文化×デジタルアート”で灯す希望の光 坂本大輔(JTBコミュニケーションデザイン) × 於保浩介(WOW) 【連載】テック×カルチャー 異能なる星々(11)

2019-11-13 | アイヌ民族関連
エキサイトニュース 2019年11月12日 20:00
加速する技術革新を背景に、テクノロジー/カルチャー/ビジネスの垣根を越え、イノベーションへの道を模索する新時代の才能たち。これまでの常識を打ち破る一発逆転アイデアから、壮大なる社会変革の提言まで。彼らは何故リスクを冒してまで、前例のないゲームチェンジに挑むのか。進化の大爆発のごとく多様なビジョンを開花させ、時代の先端へと躍り出た“異能なる星々”にファインダーを定め、その息吹と人間像を伝える連載インタビュー。
マンガ『ゴールデンカムイ』や2020年東京五輪の開会式など、今熱い注目を集めるアイヌ文化。その宇宙観とデジタルアートが融合した作品「阿寒ユーカラ『ロストカムイ』」が、北海道・阿寒湖のアイヌコタンで上演されている。アイヌ史上初にして革新的な試みは、いかなる背景の下に実現したのか。企画を主導したクリエイティブディレクターの坂本大輔(JTBコミュニケーションデザイン)と映像演出を手がけたWOWの於保浩介が語る、制作の舞台裏と知られざる世界、日本人とアイヌ民族を巡る新たな光明のストーリー。
聞き手・文:深沢慶太 写真:増永彩子
坂本大輔(さかもと・だいすけ)
コピーライター、 プランナー、 クリエイティブディレクターとしてアーティストのブランディングや映像制作、グラフィック、インスタレーションなど、枠にとらわれないフィールドで活躍中。 北海道・阿寒湖アイヌコタンで開催されている阿寒ユーカラ「ロストカムイ」、「KAMUY LUMINA」の企画・原作・クリエイティブディレクションを担う。JTBコミュニケーションデザイン所属。JTBコミュニケーションデザイン
於保浩介(おほ・こうすけ)
ビジュアルデザインスタジオ「WOW」クリエイティブディレクター。多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業後、大手広告代理店を経てWOWに参加。広告を中心とした映像全般(CM、VI、PV)のプランニング及びクリエイティブディレクションを手がける。近年は空間を意識した映像表現に力を入れ、様々なインスタレーション映像のディレクションを国内外で手がけるなど、活動領域を広げている。WOW
注目を集めるアイヌ文化、その前に知っておくべきこと
—— 「阿寒ユーカラ『ロストカムイ』」は、アイヌ古式舞踊をデジタルアートと融合させた初めての試みとして、今年3月に上演が開始されました。折しもマンガ『ゴールデンカムイ』が人気を呼び、その主要キャラクターが大英博物館で開催された「Manga展」(2019年5~8月)のキービジュアルに抜擢されるなど、アイヌ文化への注目が高まっています。伝統を受け継ぐ阿寒湖アイヌコタン(アイヌ民族の集落)発の革新的な試みとして話題を集める『ロストカムイ』ですが、お二人はどんな経緯でプロジェクトに携わることになったのでしょう?
https://www.youtube.com/watch?v=d1j1awgFcKs&feature=emb_logo
「阿寒ユーカラ『ロストカムイ』」のトレーラー映像。
坂本:阿寒の観光協会やホテルが立ち上げた、観光で地域振興を図るための事業会社「阿寒アドベンチャーツーリズム」から依頼を受けたのがきっかけです。僕は元々はコピーライターで、制作会社を経て外資系の広告代理店で「レッドブル、翼を授ける」キャンペーンなどを手がけた後、電通の系列会社でプランナー、クリエイティブディレクターとしてBoA、東方神起、EXOなど、韓国系の子を中心にエンターテイメントの仕事に携わりました。でもずっと広告の世界に共感が持てず、特に「メディアがあるからクリエイティブが食える」という仕組みに違和感があり、社会の中でクリエイターやクリエイションの価値を底上げしたいと考えるようになったんです。現在は、阿寒アドベンチャーツーリズムの出資元でもあるJTBグループのJTBコミュニケーションデザインに所属しつつも、社内ではほぼ一人でアイヌとのプロジェクトに関わっています。
於保:坂本さんの言う“広告嫌い”というマインドなら、僕も一緒です(笑)。その点は、今回のプロジェクトに関わる上でも大きなポイントかもしれませんね。WOWの活動は元々は映像制作が中心でしたが、空間的なインスタレーション作品から日本の地場産業とのものづくりまで活動領域を広げています。その中でも本作はこれまでとはまったく性質の異なる、“仕事”という意識さえも超えたプロジェクトになりました。

ヨシダナギ撮影『ロストカムイ』のキービジュアルより。©︎nagi yoshida
坂本:作品について触れる前に、まずはアイヌ民族の置かれた立場についてお話ししなければなりません。僕自身、札幌で生まれ育ったこともあり、アイヌ文化には安易な気持ちでは関われないことは知っていました。住む場所を追われ、漁労採集生活を禁じられてきた彼らが日本の法律上、先住民族だと明記されたのは今年4月に至ってのことですし(アイヌ新法)、就職や結婚などで差別されることを恐れて出自を明かさない人も多い。彼らにはれっきとした固有の文化がありますが、アイヌから見た僕ら日本人こと「和人(わじん)」が彼らの伝統文化をいわば見世物にして、搾取し続けてきたわけです。そうした背景もあって、僕もアイヌの方々と深く関わるのは初めてでしたし、最初に阿寒湖アイヌの方々と話した時はすごく距離感がありました。
於保:僕らが制作に参加したのは、坂本さんが書き上げたストーリーをどう具現化していくかという段階からですが、その時点ですでに坂本さんが約1年もの時間をかけてしっかりと信頼関係を築いてくれていた。それでもやっぱり、最初は緊張感がありましたね。
坂本:制作スタッフを呼んでからも、何を考えているのか、どんな姿勢で来たのかを見定めている感じがありました。何回かの打ち合わせ後に一緒にお酒を飲んだら一気に打ち解けて、心を開いてくれた。実は僕が阿寒に呼ばれた最初のプロジェクトは、カナダのデジタルアート集団のモーメント・ファクトリーが阿寒湖畔でこの7~11月にかけて開催したナイトエンタテイメント『カムイルミナ』だったんですが、僕にとってはアイヌ古式舞踊を取り入れた『ロストカムイ』の方が、初めは一人で彼らと接していたこともあり、打ち解けるきっかけになりました。
デジタルアートで「カムイ」の姿をビジュアライズする
—— 『カムイルミナ』は阿寒湖畔の森の中にプロジェクションされたコンテンツを訪ね歩く作品ですが、一方で『ロストカムイ』は、阿寒湖アイヌシアター「イコㇿ」の公演作品として、アイヌ古式舞踊と現代舞踊、音響やデジタルアートを融合させた作品になっています。阿寒アイヌ工芸協同組合で理事を務め、イコㇿの舞台監督として本作品に関わった床州生(とこ・しゅうせい)さんも、先日のWOW主催の現地訪問ツアーの際に、「集まってくれたスタッフの本気度がわかって初めて、『彼らに自分たちの踊りを預けても大丈夫だ』と思えた」と話していました。
阿寒湖アイヌシアター「イコㇿ」舞台監督を務める床州生氏。WOW主催の現地訪問ツアーにて。 Photo: Tomoaki Okuyama
坂本:イコㇿではもともと、阿寒湖アイヌコタン(居住地)の人々による古式舞踊や人形劇などの演目が上演されていました。そこで新しい演目をやるにあたり、最初はアイヌの叙事詩である「ユーカラ」から題材を取ろうと思っていたのですが、それでは彼らの文化の盗用になってしまう。アイヌと和人が手を取り合って作り上げることに意味があると思い、彼らのカムイ(神/精霊)の中でも高位の存在だったエゾオオカミ(ホㇿケウカムイ/狩猟の神)をテーマに、新たな物語を書き下ろしました。実はエゾオオカミは和人のせいで絶滅してしまったのですが、その事実すら知られていない。先住民であるアイヌと向き合い、新しい時代へ進むにはどうするべきかを考えるきっかけを作りたいと考えたのです。
キャスティングにあたっては、キービジュアルはヨシダナギさんで決めていたのですが、アイヌの世界観をビジュアル化するにはWOWさんしかいないと思い、東京と札幌に拠点のある映像機材会社のプリズムを通じて連絡を取りました。プリズムの深津修一社長の奥様は、札幌大学でアイヌの研究をされている本田優子先生で、その流れからのお話だったことも関係しています。
於保:深津さんとは僕らも長い付き合いになりますし、「まずは話を聞いてみよう」ということになった。それで阿寒湖を訪れたのですが、その時点ではまさか、ここまで深く関わることになるとは思ってもみませんでしたね。よくよく話を聞くうちに、「これは生半可な気持ちでは済まされない」という実感が湧き上がってきて。
ーー アイヌにとっていわば“神”である存在を表現する以上、相当な緊張感があったのではないでしょうか。床さんのお話では、他の地域のアイヌ部族から「何故アイヌがデジタルアートをやる必要があるんだ?」という声も上がったとか。
於保:確かに、僕も当初はかなり心配でした。というのも、アイヌは文字を持たない民族のため、カムイとはいわば口伝の存在で、誰もその姿を具現化したことがない。そこで、阿寒湖アイヌの方々にそれぞれのイメージするカムイ像について話を聞き、それを元にオーラをまとった姿や動きの表現を決めていったのですが、「オーラなんてなかった」という人もいれば、「目を青くしちゃダメだ」という意見もあり…。でも床さんが「誰もカムイを形にできていない以上、そこは自由のはずです」と背中を押してくれたんです。
坂本:床さんも「他の地域と比べて、僕らは相当オープンだ」と言っていました。実は阿寒湖アイヌは、北海道各地から移住してきた人々の子孫で、それだけに様々な土地の風習が集まっている。一方で歴史的なコタンの場合、「自分たちの文化はこうあるべきだ」という決まりが根強くて、必ずしも新しい形で表現する必要性を感じていないのかもしれません。でもアイヌ文化に限らず、伝統を守ることを重要視し過ぎると、外の人が興味を持ちにくくなってしまう。同じことが今、日本全国の祭りや伝統工芸などで問題になっていますよね。
於保:WOWとしても、会社のルーツである仙台をはじめ、東北地方の民俗芸能をモチーフにした作品『BAKERU』などを手がけた経験はありました。それと同じく阿寒湖アイヌの人々にも、風光明媚な阿寒湖の眺めや温泉を訪ねて来る若者たちがアイヌの古式舞踊を見に来てくれないという悩みがあった。であれば、みんなが興味を持ってくれるような形に落とし込むのも、文化を守る方法になるはず。カムイの姿を可視化することで、そのメッセージが子どもや外国人にも伝わりやすくなるのであれば、大きな意味があるはずだと考えました。
東北地方に古くから伝わる祭りや伝統行事をモチーフにした、WOWの体験型インスタレーション作品『BAKERU』。今年7~10月にJAPAN HOUSE LAで展示された際のトレーラー映像。
積年の問題を、クリエイティブの力で突破する試み
ーー アイヌには先住民族を巡る日本の政治的・社会的な問題があり、それをメディアが取り上げようとしないこともまた、彼らの存在を見えにくくしている。それに対してこのプロジェクトは“クリエイティブ”というフィルターを通してアプローチすることで、人々がアイヌ文化について知り、関心を持つことができる新たな経路を切り拓いたのではないでしょうか。
坂本:その意味では、ヨシダナギちゃんの写真のインパクトは大きかったですね。でも撮影は本当に大変でした。衣装にしても、明治時代以前のアイヌが来ていたようなものは北海道全体でも数着しか残っていなくて、各地を回って頼み込んでも、博物館に入っているものは貸してもらえないし、1着作るのにも1年以上かかる。オヒョウという木の皮をお湯に何度も浸けて柔らかい繊維にして、それを編んでいくんです。サケの皮を使った靴も、スーパーで売っているものではダメで、産卵のために川を遡上して皮が厚くなったサケを探すところから始めたり。
於保:坂本さんはプロジェクト全体に携わっている立場だから、いつも駆け回っている様子を見るにつけ、大変だろうな……と思っていました。
坂本:大変だったけれど、楽しかったですね。問題はアイヌではなく、その周りにいる和人たちとのしがらみです。実はこのプロジェクトは5年計画の構想で、まずはアイヌと和人が協力し合ってコンテンツを作り、メッセージを発信する。その第1弾が『ロストカムイ』です。そして、その先に見据えているのがアイヌのクリエイターの地位向上。というのも、彼らがユーカラ劇を1公演やったとしても、出演料は微々たるもの。伝統的な木彫りの作品だってそう。僕が今着けているペンダントだって、こんなに精緻な彫り物が3千円とかで売られていて、本当にあり得ない。彼ら自身の文化であり、彼らにしかできないことをやっているのに、正当な評価がまったくなされていない。でも、アイヌの人たちはそれを声高には言えない立場に置かれているから、「この状況を変えよう、自分たちから変わっていこう」と言い続けてきたわけです。
於保:僕たちがこの作品にコミットした理由も、まさにそこです。お金ではなく、自分たちや関わる人すべてにとっても前向きなものがあるからこそ、力を注ぐことができた。これまでのように、文化を安く買い叩いて搾取するようなプロジェクトであれば、僕らも絶対に参加しなかったと思います。
坂本:WOWさんをはじめ、ダンサーで振付師のUNOさん、サウンドデザイナーのKuniyuki Takahashiさんなどとも直接会って話をして、まずは共感をしてもらうところから始めました。というのも、コマーシャルワークに根っこまでどっぷり浸かっている人には決して務まらない話だと思ったから。スタッフ全員の共感をベースに、ギャランティを度外視して生まれた作品だからこそ、阿寒湖アイヌの人々や、見てくれる方々の心に響く作品になったと実感しています。
ブームを超え、“日本人”として共に生きる社会へ
ーー こうした努力が実り、今年3月の上演開始から半年で公演の入場客数が1万人を突破するなど、これまでアイヌ文化と接点がなかった人々の間で大きな話題を呼ぶ作品になりました。マンガ『ゴールデンカムイ』のブームをはじめ、世界的な少数民族の地位向上の流れを背景に、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の開会式でもアイヌ舞踊を披露する計画も進んでいます。こうした動きも追い風になっているのではないでしょうか。
坂本:ところが……これでアイヌ文化がまた見世物にされて、ブームが終わってしまっては元も子もない。一部で「アイヌバブルが来た」と言われている一方で、当のアイヌの人たちが貧しいままなのは明らかにおかしいですよね。だからこれを機に、アイヌ文化専門のコンサルティング会社を設立して、アイヌの人々が自分たちで補助金などを管理できるよう、仕組み作りのサポートをしているところです。
於保:そう考えればこそ、他の地域から『ロストカムイ』を観に来て「自分もこのステージで踊りたい」と手を挙げるアイヌの若者が出てきたのは、彼らにとって大きな意味があることですね。床さんも話していましたが、演者たちにきちんとした報酬を払う仕組みが整ったなら、表現のレベルや外からの評価もさらに高まって、文化的にも経済的にも好循環が生まれていくはずだと思います。
ーー 床さんはこの作品の目的について、「決してアイヌ文化の考え方を押し付けるつもりはない。最後に演者とお客さんが一緒に輪になって踊ることで、まずは何より楽しかったと感じてもらうこと、そこから興味を持ってくれる人が少しでも出てくれば」と話していましたが、まずはクリエイティブ表現として楽しめるものになっていることが大切ですね。そしてそれが、自分たちが何気なく考えている“日本人”という概念や、アイヌ民族と彼らのいう和人ーー大和民族とのよりよい関係を考えるきっかけになればいい。『ロストカムイ』はそのための第一歩ということですが、今後はどのような展開を予定していますか。
坂本:ぜひ上演を続けていきたいという声が上がっているので、まずは内容をさらに磨き上げたいと思っています。映像化もしたいし、阿寒湖の自然の中で上演するなど発展形のアイデアも温めているところです。それ以外にも来春には、阿寒湖の氷の上でアイヌの音楽家と和人のアーティストたちが一緒にアイヌの音楽を拡張する、新しいお祭りのプロジェクトが進行しています。そこから先は、地域や社会の構造を変える話になる以上、もちろん一筋縄ではいかないと思いますが……WOWさんも、今後もぜひ参加してくれたらいいなと(笑)。
於保:もちろんです(笑)。僕らにとってもクライアントと下請けの関係ではなく、人間同士の信頼関係から新たな境地を切り拓いていけるような場所をまた一つ、見つけることができたと感じています。ぜひここから、新しい未来につながる大きな動きを起こしていけたら嬉しいですね。
「阿寒ユーカラ『ロストカムイ』」
期間:開催中~2020年3月(予定)
開催場所:阿寒湖アイヌシアター「イコㇿ」
住所:北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4-7-84
公演時間/毎日21:15~の1公演(2019年11月~2020年2月)
上演時間/約40分観覧料/大人¥2,200、小学生¥600(当日)
https://www.akanainu.jp/lostkamuy/
https://www.excite.co.jp/news/article/Finders_1425/

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「八幡商人」活躍の足跡 4商家に焦点、彦根で企画展

2019-11-13 | アイヌ民族関連
中日新聞 2019年11月13日

八幡商人の商いや暮らしについての史料が並ぶ会場=彦根市馬場で
 彦根市馬場の滋賀大経済学部付属史料館で、企画展「八幡から商う 八幡で暮らす」が開かれている。近江商人の中でも、日野商人や湖東商人に先駆けて活躍した八幡商人を特集。四つの商家を取り上げ、それぞれの商いや生活の様子を紹介している。二十二日まで。
 八幡商人は、八幡(現・近江八幡市)出身の近江商人の総称。江戸をはじめ、東北や九州地方など各地に進出して商売していた。
 北海道で活躍していたのは、西川伝右衛門家や岡田弥三右衛門家ら。アイヌ民族の人たちとの交易や漁業経営などをしていた。
 西川家の史料によれば、蝦夷地で採れたナマコの加工品や昆布を長崎へ出荷。長崎の支配方が中国や琉球へ輸出していた。輸送に携わっていたのはアイヌの人々で、北海道の現地でも労働力としてアイヌの人たちを雇用。商いを通したアイヌとの深い関わりが分かる。
 岡田家の史料からは、八幡や大阪などへ品物を発注し、松前(現・北海道松前町)の店で販売していた記録も。八幡には、東近江市の「政所茶」や、岐阜県の美濃紙などを発注。現在に続く特産品を、いち早く取引していた。
 西川家、岡田家のほか、東日本で活躍した谷口家と市田家の史料も展示。商いに関する史料のほか、当時の生活が垣間見られる文書も並ぶ。祝儀の際は、タイやスルメのほか、湖魚のモロコを贈るといった近江ならでは風習や、現在も継承され続ける左義長まつりに関する記録など、当時の暮らしを伝えている。
 青柳周一館長は「近江八幡市には、近江商人が活躍した当時の風情を伝える街並みや、一般に公開している商人屋敷もある。企画展を見た上で散策すると、商人の歴史をより身近に感じられるはず」と来場を呼び掛けている。
 午前九時半~午後四時半。十四、二十二日午後〇時半から、青柳館長のギャラリートークを開く。土、日、祝日休館。(安江紗那子)
https://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20191113/CK2019111302000029.html

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大日本帝国時代の歴史を、樺太=サハリンに生きる人々の目を通して綴る、壮大な歴史小説

2019-11-13 | アイヌ民族関連
エキサイトニュース 2019年11月13日 06:00

『熱源』(文藝春秋) 著者:川越 宗一
◆「文明」の侵略、丹念に描く
1910年(明治43年)、白瀬中尉が探検隊を率いて南極点を目指したとき、隊には樺太犬の犬ぞりを担当した二人の樺太アイヌがいた。山辺安之助と花守信吉。アイヌ名はヤヨマネクフとシシラトカ。小説は、南極探検隊の話ではないが、二人は最重要人物で、物語は明治の初め、彼らの少年時代に始まり、1945年(昭和20年)の日本の敗戦直後にまで及ぶ。
明治維新を起点とした近代日本の前半部分、大日本帝国時代の歴史を、樺太=サハリンに生きる人々の目を通して綴る、壮大な歴史小説なのである。
ヤヨマネクフとシシラトカは、樺太・千島交換条約でロシア領となった生まれ故郷樺太から北海道の対雁(ついしかり)に移住させられ、日本語を教え込まれる学校で出会う。もう一人の友人は千徳太郎治。和人の父とアイヌの母を持つ頭のいい級友は、のちに樺太アイヌ自身による初めての著作『樺太アイヌ叢話(そうわ)』を書く教育者となる。小説は、これら実在の人物を大胆に活躍させつつ、「文明」によって侵略された大地の子たちの生きざまを、丹念に描き出していく。
彼らと絡むいま一人の重要人物は、ブロニスワフ・ピウスツキというポーランド人だ。ロシア皇帝暗殺を謀(はか)った罪でサハリンに流刑になった男。流刑地で、樺太アイヌ、ギリヤーク、オロッコなどネイティブの文化・民族資料を収集し、残した。ポーランド独立運動にも関わり、弟のユゼフ・ピウスツキはポーランド共和国の初代国家元首となった。実際に、樺太アイヌの女性と結婚し、千徳太郎治やシシラトカ、ヤヨマネクフと交流した人物である。
ほかにも、刑死したレーニンの兄、金田一京助、知里幸恵、二葉亭四迷らの運命が、樺太=サハリンをキーワードにつながるのは、史実を元にしたフィクションの醍醐味だろう。
本書が追いかけるテーマは「文明」だ。明治の初めにアイヌに「文明」を押しつけた日本人じたい、黒船とともにあらわれた「文明」にからめとられてそのころまだ青息吐息だった。幼いヤヨマネクフの「文明」とは何かという本質を突く問いに、育ての親のチコビローはこう答える。
「馬鹿で弱い奴は死んじまうっていう、思い込みだろうな」。
弱い者は「文明」に呑み込まれるしかないのか。「同化」するか「滅亡」する以外選択肢はないのか。そもそも弱いとはなにか。知恵をつけることは「文明」の側に与(くみ)することになるのか。登場人物たちはそれぞれの場でその難問にぶち当たる。
ピウスツキその人も、大国ロシアに呑み込まれたポーランド、そもそもはその隣国だったリトアニアの出身で、自分の名をロシア風に「ピルスドスキー」と呼ばれると胸に灼(や)けるような反感が渦巻く。名前、言葉、風俗。個別の文化を持つ人々がそれらを奪われる、あるいは風化の中で失う悲しみ。100年前、「文明」に組み敷かれた人々だけではなく、現代を生きている難民や、少数民族の現状も脳裏をよぎった。
とはいえ小説はその重たい題材を、ときにユーモラスに、ときにスリリングに語って、読者を離さない。
女たちの奏でる五弦琴(トンコリ)、鮮烈な痛みとともに口元に彫り込まれるアイヌの証の入れ墨の描写が胸に残る。時代の中で、私たちは多くを失い、変化させざるを得ないが、何かをとどまらせる意思を持つのも、人間だけなのだと小説は熱く訴えてくる。
【書き手】
中島 京子
1964年東京都生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。出版社勤務を経て渡米。帰国後の2003年『FUTON』で小説家デビュー。2010年『小さいおうち』で直木賞、2014年『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞、2015年『かたづの!』で河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ作品賞、柴田錬三郎賞、同年『長いお別れ』で中央公論文芸賞、2016年日本医療小説大賞を受賞した。他に『平成大家族』『パスティス』『眺望絶佳』『彼女に関する十二章』『ゴースト』等著書多数。
【初出メディア】
毎日新聞 2019年10月13日
【書誌情報】
熱源著者:川越 宗一
出版社:文藝春秋
装丁:単行本(426ページ)
発売日:2019-08-28
ISBN:4163910417
https://www.excite.co.jp/news/article/AllReview_00003910/

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日本カジノの利権を握るであろう運営会社はどこが濃厚なのか?

2019-11-13 | 先住民族関連
ライブドア 2019年11月12日 15時30分 HARBOR BUSINESS Online
 前回は、日本の政治家が取らぬ狸の皮算用をしている「カジノ利権」について、本当に甘い汁を吸えるのは誰なのかを考察したが、今回はカジノ候補地とその運営会社としてどこが濃厚なのかを考えたい。
◆世界における2大カジノの収益性
 2大カジノといえば、ラスベガスとマカオである。
 ラスベガスを含むネバダ州では、カジノの売上高に課税して税収を確保するために1931年にカジノが合法化された。ネバダ州に限らないが、先住民族(インディアン)に対する恩恵としてカジノの営業を認めているケースもある。
 ラスベガスを含むネバダ州には2017年時点で272のカジノ施設があり、総売り上げは2.9兆円となっている。その総売り上げの42%がカジノそのものの売上である。
 一方で1999年に中国に返還されたマカオではポルトガル統治下の1847年にカジノが合法化されていたが、戦後のカジノ利権はスタンレー・ホー率いる澳門旅游娯楽有限公司が独占していた。
 スタンレー・ホーは香港の裕福な家庭に生まれたが後に没落し、若い頃は苦労したようである。苦学して香港大学に入り、広東語のほか英語、日本語、ポルトガル語を流暢にしゃべるようになる。第二次世界大戦中は単独で中立地だった(カトリックの借用地だったから)マカオに渡り、日本人が経営する貿易会社に勤務する。その会社の危機を救って得たボーナスで香港に建設会社を設立し、戦後の建設ブームで会社は大盛況となる。
 スタンレー・ホーはその利益でマカオのカジノの権利を取得し、リスボアなど主要ホテルや香港との間の高速船なども独占して巨万の富を得る。ただ、その富を決して独り占めせず、多額の納税を続けた。その結果、30万人のマカオ市民は今も教育費や医療費の大半が免除されている。
 1999年にマカオが中国に返還されたあとには、中国政府がカジノの収益性に目をつけライセンスを6つだけ発行して直接管理に乗り出す。現在98歳のスタンレー・ホーはさすがに第一線を退いているがライセンスの1つを今も確保してカジノビジネスを続けている。中国政府との関係は良好のようである。中国政府が発行した6つのライセンスとは、米国のサンズ、Wynn、MGM、香港のギャラクシーとメルコリゾーツ、それにスタンレー・ホーのSJM(現社名)である。
 マカオのカジノは2017年時点で40施設あり、総売上高はラスベガスを上回る3.7兆円である。またラスベガスとは大きく違い、総売り上げの92%がカジノそのものの売上である。マカオが発展した大きな理由は、中国共産党幹部への賄賂の支払いや中国人のマネーロンダリングに利用されていたからであるが、最近の綱紀粛正と米中貿易戦争による中国経済の減速に伴い、その成長は鈍化するものと思われる。
 現在、全世界では130か国以上でカジノが合法化され、4000以上のカジノ施設があり、その総売上高は10兆円を超える。しかし、日本におけるパチンコ産業の売り上げは、合法化されているとは言えない中で1892社(2018年時点)。総売り上げは減少し続けているが、いまだ15.8兆円もある。
 つまり、日本1国のパチンコ産業の総売り上げが、世界中のカジノの総売り上げの1.5倍以上もある。カジノカジノと騒ぐ前に、この問題を直視しなければならない。
◆日本におけるカジノ運営会社はどこに?
 そんな世界のカジノ情勢であるが、主要なカジノ運営会社のなかから日本のカジノ運営会社に名前が挙がっている会社だけご紹介しておきたい。
 まずはラスベガス・サンズ。シェルドン・アゼルソン(85歳)のカジノ運営会社である。アゼルソンはウクライナ出身のユダヤ人であり、トランプというより米政界の(共和党も民主党も)大スポンサーである。その目的はカジノではなく、シオニストとして世界のユダヤ人を支援しているため、当然、ユダヤ人が影響力を持つ米国経済にも大きな発言力を持つ。
 アゼルソンがカジノ業界に進出した時期は意外に遅く、1995年に保有するコンピューター関連展示場のコムデックスを8.6億ドルという法外な値段でソフトバンクに売却してからである。アゼルソンはその資金で、ラスベガスで老朽化していたサンズ・ホテルを会社ごと格安で入手し、爆破解体して1999年にベネティアン・ホテルとして開業している。
 サンズはラスベガスでは後発だったため海外進出に注力し、2004年にはサンズ・マカオ、2007年にはベネティアン・マカオ、2010年にはシンガポールでマリーナ・ベイ・サンズを開業し、世界の最大手カジノ運営会社となる。
 つまり、アゼルソンはコムデックスを売りカジノホテルと入れ替えて成功したわけであるが、その理由は同じラスベガスにあるコムデックスの巨大展示場に来るコンピューター関係者はカジノなどに興味がなく、ホテルが儲からないため宿泊を断られるケースが多発していた。そこで、コンピューターではなくカジノに興味を持つ人々を対象にしたホテルの建設を思いついたそうである。片やソフトバンクが高値で買ったコムデックスはその後間もなく倒産している。アゼルソンはその恩返しとでも思ったのか、(たぶん)孫社長を通じて安倍首相をトランプに引き合わせたはずである。こうして、アゼルソンは安倍首相に恩を売り、日本におけるカジノ運営の1つ(しかも最大のもの)を確保したと考えられる。
 アデルソンはつい最近まで大阪でのカジノ運営に興味を示していたが、ここにきて横浜あるいは東京(ともに港湾局が関係していることを忘れないでほしい)のカジノが具体化しそうになると、さっさと乗り換えてしまった。乗り換えるということは、アゼルソンの日本における政治力からして横浜港か東京湾のどちらかにカジノが設置されることが「確定」となる。
 それでは横浜港と東京湾のどちらなのか?であるが、双方の港湾利権をどう振り分けるのかという話である。現時点ではどちらとも言えないが、どちらかがカジノ利権を取り、どちらかが双方の港湾利権を取ることになるはずである。あえて予想すると、空港(羽田)が近い東京湾がカジノ、港湾設備を拡充して場所も広い(米陸軍の借用地まである)横浜港が港湾利権だと思う。
 横浜港のカジノについては、これまで何の発言もしなかった林文子市長が、横浜を地盤とする菅義偉官房長官の意向を忖度して突然に公表してしまったため、横浜港のドンである藤木幸夫会長が激怒している。スジを通せばよかっただけである。
 このサンズと並んで、日本のカジノ利権に食い込んでいるのがMGMリゾーツ・インターナショナルである。サンズに去られた大阪も、次の候補だったMGMリゾーツに乗り換えたようである。GMの大株主としても知られ、世界の自動車業界の再編にも大きな影響力のあったカーク・カーコリアンを総師に、ミラージュやベラッジオなど経営不振となったカジノホテル(どちらもスティーブ・ウィンのコーディネート)を傘下に収めて大きくなったカジノ運営会社である。
 このMGMとサンズは日本のカジノ運営に「当確」していると考えていいだろう。問題は残りの有象無象である。
◆官邸(菅官房長官)に近いハードロック・インターナショナル
 官邸(菅官房長官)主導である北海道(苫小牧)のカジノ運営会社として名前が挙がっているは、ハードロック・インターナショナル。名前の通りあのハードロックカフェを運営している会社だ。カジノホテルも運営しているが、規模は小さく実力は未知数である。つまり北海道(苫小牧)もハードロックもまだまだ「当確」ではない。
 ちなみにその苫小牧のカジノ予定地の隣には、森トラストが広大な土地を保有している。その政治力が、いまだカジノ誘致を検討しているにすぎない北海道・苫小牧を有力候補に押し上げたと考えられる。
 一部の週刊誌が、東京オリンピックのマラソンと競歩が突然に北海道に移されたのは、このIR誘致と関係があるように書いているが、カジノは米国資本、オリンピックは欧州貴族の利権で何の関係もない。
<文/闇株新聞>
【闇株新聞】
‘10年創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者・経済記者などから注目を集めることに。2018年7月に休刊するが、今年7月に突如復刊(「闇株新聞」)。有料メルマガ配信のほか、日々、新たな視点で記事を配信し続けている。現在、オリンパス事件や東芝の不正会計事件、日産ゴーン・ショックなどの経済事件の裏側を描いた新著を執筆中
https://news.livedoor.com/article/detail/17369093/

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アイヌ伝統 手工芸学ぶ

2019-11-13 | アイヌ民族関連
室蘭民報 2019-11-12 10:23
 白老町主催のアイヌ手工芸担い手養成講座(初級)が9日から町コミュニティセンターで始まり、初日は町内外の女性38人がアイヌ文様刺しゅうと編み方に取り組んだ。
 岡田育子さんが講師を務めたアイヌ文様刺しゅうコースには女性18人が参加。藍色の布に糸を縫い込んでいた。初級コースは12月14日まで計4回開かれる。
 アイヌ文様刺しゅうの上級は12月13日、20日、来年1月24日、31日の全4回開かれる。
 おもてなしガイド講座は12月12日、19日、来年1月16日、23日、30日、2月6日の全6回。会場はいずれも同センター。受講は無料。国の地方創生推進交付金を活用した事業。
 受講申し込み、問い合わせは町経済振興課観光振興グループ、電話82局8214番へ。(富士雄志)
https://www.oricon.co.jp/article/990270/

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白老 アイヌ手工芸担い手育成講座始まる

2019-11-13 | アイヌ民族関連
苫小牧民報 2019/11/12配信
 民族共生象徴空間(ウポポイ)の来春オープンを控える白老町で、町主催のアイヌ手工芸担い手育成講座が9日、町コミュニティーセンターを会場にスタートした。観光客向けの商品作りなど、ウポポイ開業後の白老観光を支える人材育成の事業。刺しゅうと編み方…
この続き:645文字
ここから先の閲覧は有料です。
https://www.tomamin.co.jp/article/news/area2/6257/

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河治和香さん受賞 中山義秀文学賞

2019-11-13 | アイヌ民族関連
福島民報 11/12(火) 10:45配信
 優れた時代・歴史小説を顕彰する第二十五回中山義秀文学賞の公開選考会は十日、白河市の白河市立図書館で開かれた。受賞作に河治和香さん(東京都在住)の「がいなもん 松浦武四郎一代」(小学館)が選ばれた。
 中山義秀顕彰会(会長・鈴木和夫市長)の主催、福島民報社など後援。「がいなもん 松浦武四郎一代」は蝦夷(えぞ)地を何度も踏査した探検家・松浦武四郎を描いた作品。アイヌと深く関わり、北海道という名を考案したとされる。選考委員からは松浦を取り上げた新鮮さと、巧みな組み立てなどが評価された。
 今回は二十八作品の応募があり、一次、二次選考を経た「がいなもん 松浦武四郎一代」と「麒麟児(きりんじ)」(冲方丁著、KADOKAWA)、「酔象の流儀 朝倉盛衰記」(赤神諒著、講談社)の三作品が最終の公開選考会に残った。作家の高橋義夫さん、中村彰彦さん、朝井まかてさん、文芸評論家の清原康正さんが選考委員を務めた。会場には文芸ファン約二百人が訪れ、選考委員の鋭い、辛口の批評に聞き入った。
 一次、二次選考委員は福島民報社の安田信二取締役論説委員長ら三人が務めた。
 河治さんは「『私の小説は文学じゃなくてただの歴史読み物?これじゃ駄目なのかな?』と自信のないまま書き続けてきたので、受賞はとてもうれしかったです。読者の皆さまや、いつも周囲で支えてくださる方々に改めてお礼を申し上げます」とコメントを寄せた。
来年2月1日に文学賞の贈呈式
 文学賞の贈呈式は来年二月一日、白河市立図書館で行う。賞金百万円と義秀の古里白河市大信産のコシヒカリ一俵が贈られる。河治さんが記念公演する。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191112-00000017-fminpo-l07

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