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「カムイルミナ」がクールジャパン・マッチング賞 阿寒湖のデジタルアートと森散策 魅力発信の取り組み評価

2022-07-24 | アイヌ民族関連
北海道新聞07/23 09:03 更新

阿寒湖温泉で開催されているカムイルミナ=6月20日(小川正成撮影)
 【阿寒湖温泉】阿寒湖(釧路市阿寒町)の夜の森を、アイヌ民族の伝承に基づく映像で彩り、散策を楽しむイベント「阿寒湖の森ナイトウォーク カムイルミナ」が、「クールジャパン・マッチングアワード2022」のマッチング賞を受賞した。
 同アワードは内閣府や業界団体などでつくる「クールジャパン官民連携プラットフォーム」が、2017年から実施。異業種が連携して日本の魅力を海外や訪日客らに伝える取り組みを表彰している。
 今年は九つの取り組みを表彰した。カムイルミナは、阿寒摩周国立公園内でデジタルアートと、アドベンチャーツーリズムを組み合わせた取り組みが、集客を目指す他の国立公園にとって参考事例になると評価。
 東京都内で14日、表彰式があり、運営する阿寒アドベンチャーツーリズム株式会社の大西雅之社長が賞状を受け取った。大西社長は「これからもアイヌ文化をテーマとしたデジタルアートと自然体験を通じた観光を推進していきたい」と話した。カムイルミナは11月19日まで開催している。(松井崇)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/709230

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アイヌ民族に思いはせ撮影 札幌・開拓の村で映画「カムイのうた」ロケ

2022-07-24 | アイヌ民族関連
北海道新聞07/23 05:00

北海道開拓の村で行われた映画「カムイのうた」の撮影=22日
 明治・大正期のアイヌ文化伝承者、知里幸恵の生涯を描く映画「カムイのうた」の撮影が、札幌市厚別区の北海道開拓の村で22日まで行われた。同区の中学、高校に通った菅原浩志監督(67)は、故郷で初めてという撮影に「縁を感じる」と語った。
 映画は上川管内東川町が企画、製作。道内各地で撮影しており、開拓の村では7日のクランクイン以降、計5日間行われた。22日は、小樽から移築した築100年超の旧青山家漁家住宅で、アイヌ民族が和人による強制労働に苦しんだ明治初期のシーンを撮影。当時のアイヌ民族に思いをはせながら演じるよう指示が飛ぶなど、緊張感が漂った。
 菅原監督は「貴重な建物が保存されている開拓の村は、この映画に欠かせない場所。必要な時に雨が降るなど天候にも恵まれ、撮影は順調」と話した。
 石狩管内では、石狩市でも来年1~2月に撮影を行う予定。映画は来年秋までの完成を目指す。(和賀豊)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/709185

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<ウポポイ オルシペ>44 樺太での知里真志保 専門家との調査、熱心に

2022-07-24 | アイヌ民族関連
北海道新聞07/23 05:00

調査から辞典編さんまでの流れを紹介する展示
 言語学者の知里真志保による「分類アイヌ語辞典」は、アイヌ語・アイヌ文化に関する研究や学習には欠かせない書物です。
 「植物篇(へん)」「動物篇」「人間篇」の3巻が刊行されており、それぞれ植物、動物、身体に関連する語彙(ごい)について、語の構成や採録された地域、ときには関連する文化的な情報までも盛り込んで掲載されています。これらの語彙について、各地の情報をこれだけ網羅的に扱ったアイヌ語辞典は他にありません。
 登別で生まれ育った知里は、東京で学生時代を過ごした後、女学校教員として就職するため、1940年(昭和15年)に樺太へと渡りました。そこで樺太庁博物館の嘱託技術員を兼任し、さまざまな分野の専門家と出会い、共同研究を行いました。教員時代の校長で植物学者でもある福山惟吉(これきち)とは、現地の白浜での調査をもとに植物に関連するアイヌ語の報告を43年(同18年)に共著で発表しています。これはのちに刊行される「分類アイヌ語辞典」の植物篇の土台にもなりました。
 当時の調査ノートをみると、調査で聞き取った内容がその後の報告や植物篇に反映されていることがわかります。また、医師の和田文治郎とは、身体に関連するアイヌ語の報告を同年に共著で発表し、これはのちの人間篇へとつながっていきます。
 国立アイヌ民族博物館で開かれている特別展示「CHIRI MASHIHO 知里真志保―アイヌ語研究にかけた熱意―」(8月21日まで)の第3章では、調査から辞典編さんまでの流れを、調査時のノートや論考、辞典の原稿などの展示を通して紹介しています。(文・小林美紀=国立アイヌ民族博物館研究員、写真・赤田昌倫=国立アイヌ民族博物館研究員)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/709140

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第2部 ゲノム革命の光と影/上 倫理指針 利用に固執、3年棚上げ /京都

2022-07-24 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2022/7/23 地方版 有料記事 1950文字

アイヌ民族に関する研究倫理指針案を巡って議論した日本文化人類学会の特別シンポジウム=東京都千代田区で2022年6月5日午前11時27分、千葉紀和撮影
 「3年たって、なぜまとまらないのかと素朴な疑問が出るだろう。自分たちの問題として考えてほしい」
 新型コロナウイルス禍がいったん落ち着きを見せていた6月5日、東京都千代田区の明治大。日本文化人類学会が「アイヌ民族に関する研究倫理指針(案)」に関する特別シンポジウムを開いた。全国から集まった多くの研究者を前に、同学会の元会長で、総合地球環境学研究所(京都市)の特任教授、松田素二さんが切り出した。
 議題の指針は同学会と日本人類学会、日本考古学協会、北海道アイヌ協会の代表が2018年に検討を始めた。アイヌ民族の歴史・文化を研究する上で、初の横断的な指針作りとして注目された。草案ができたのは19年2月。4学協会の手続きを経て公表し、20年1月まで研究者や市民から意見を募った。だが今も、指針は「案」のままだ。
この記事は有料記事です。 残り1596文字(全文1950文字)
https://mainichi.jp/articles/20220723/ddl/k26/040/295000c

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夏休み特別プログラム始まる 伝統儀礼特別公演や児童向けゲーム ウポポイ 

2022-07-24 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2022.07.23
白老町のアイヌ文化復興・発信拠点の民族共生象徴空間(ウポポイ)は23日、夏休み期間特別プログラム「夏はウポポイでたのしもう!」をスタートさせた。8月21日までの期間、各地のアイヌ文化の伝承者を招いた技術の実演や古式舞踊の披露を行うほか、伝統儀礼の特別公演、児童向けゲームなどを通常プログラムと合わせて実施していく。

特別公演「イノミ」の水鳥の踊り(提供)
 体験交流ホールでは、白老町、むかわ町、千歳市などの文化伝承保存会のメンバーらがそれぞれ日を替えながら交代で古式舞踊を披露。30日午後4時半からと8月14日午前11時半からは、特別公演「イノミ アイヌの祈り・歌・踊り」を行う。カムイ(神)に感謝の祈りをささげ、酒や歌、踊りでもてなし、土産とともにカムイの世界へ送り出す儀礼イヨマンテと、その精神を軸としたストーリー性のある演出で伝統を未来につなぐプログラム。各回定員303人。
 工房では午前9時~午後6時、道内各地の工芸家らが手掛けたマタンプシ(鉢巻き)16種を展示。制作過程や素材も紹介している。工房前テントでは30日と8月6日の各午後4時半から、100食限定でオハウ(温かい汁物)を提供する。
 あそびの家では午後2時から、職員によるアイヌ語学習「ピリカ!ビンゴ アキ ロ」を実施。夏休み特別バージョンのビンゴを楽しむことができ、参加者に景品も進呈している。草木の見本園近くでは午後4時50分から約10分間、職員が野草の利用方法やアイヌ語名などを伝える「野草紹介」を行っている。
 チキサニ広場では31日と8月7、10~14日の各日正午から約30分、小学生対象にアイヌ文化などをテーマとした「トゥレッポんと〇×ゲーム」を実施する。
 このほか、工芸家による伝承技術、アイヌ語教室講師による口承文芸の実演や、施設内で刺しゅうや木彫を体験した人へのペーパークラフトキット配布も行っている。
 ウポポイの広報担当者は「ペーパークラフトキットは夏休みの自由研究にお薦め。各地の伝承者による実演や体験を通してアイヌ文化に理解を深めて」と呼び掛けている。
http://www.hokkaido-nl.jp/article/25975

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虐待、病気で少なくとも186人死亡…先住民「救済」名ばかり 反省を胸に遺骨の返還進める

2022-07-24 | 先住民族関連
東京新聞2022年7月22日 06時00分

<米先住民寄宿学校・奪われた未来㊦>
 「子どもたちが家族と再会し、癒やしの道が始まったことを光栄に思う」。米陸軍墓地事務所は7月7日、東部ペンシルベニア州カーライル基地で長く埋葬されていた先住民の子ども7人の遺骨が、子孫らに返還されたと発表した。
 基地敷地内には1879年から39年間、内務省が運営した先住民寄宿学校「カーライル工業学校」があった。全米50の部族から計1万人の子どもを集め、職業訓練のほか、英語やキリスト教を教えた。
 米国の先住民寄宿学校 1819年の「インディアン文明化基金法」などに基づき、先住民の子ども数十万人を強制的に集め、英語やキリスト教のほか、出身部族の伝統とは異なる産業教育を施した。文化継承を絶って白人社会に同化させることにより、先住民の土地を奪う目的もあったとされる。政府やキリスト教会が関与した寄宿学校は400以上。身体的、精神的虐待が横行したほか、劣悪な環境による病気も流行した。2020年の国勢調査では、先住民の血を引く人口は約970万人で全体の約3%。
 設立者が掲げた理念は「うちなるインディアンを殺し、人間を救う」。独自の文化を抹消し、子どもたちを親元から離して白人社会に同化させるのが先住民の救済だと信じた。
 しかし地元非営利団体によると、実際は虐待や病気がはびこり、在学中に少なくとも186人が死亡した。こうした反省をもとに、遺骨の返還事業が6年前から始まり、今回を含め28人の遺骨が出身部族に返された。陸軍の担当者は「子どもたちを安息の地に戻せるよう全力を注いでいる」と話す。

1901年、カーライルの寄宿学校に到着した時に撮影された13歳のアナスタシア。3年後に病死した。勤勉だったとの記録が残る=スミソニアン博物館国立人類学アーカイブ提供
 「アナスタシアは寄宿学校で、どんな気持ちだったのだろう」。今回、遺骨の返還を受けた子孫のキャシー・ローランド(45)は、結核によって1904年に16歳で死亡したという曽祖父の姉を思う。
 かつて墓地の管理はずさんだったが、遺骨の9割が残り、誕生日や死亡日などの記録もそろっていたことで、陸軍が身元を特定できたという。アナスタシアはキャシーとともに、カーライルから5500キロ離れた故郷アラスカ州コディアック島に帰ることになった。
 実はキャシーとその一族は、120年近く前に世を去ったアナスタシアの存在を知らなかった。家系をさかのぼると養子縁組があったため血縁関係もない。それでも遺骨返還に駆けつけたのは「子どもは部族全体のもの」という強い思いがあるからだ。「私たちには家族を取り戻す力があるのだと自覚し、強くなる一歩を踏み出したい」とキャシー。
 同化目的の寄宿学校がなくなっても、先住民社会は今も貧困やアルコール依存症のまん延といった後遺症に苦しむ。コディアック島を愛し、先住民芸術家として活動するキャシーは「部族の言葉を話せるのは数十人しか残っていない」と文化継承の難しさにも悩む。
 政府は昨年から寄宿学校の実態調査を進め、今年7月には生存者からの聞き取りを始めた。歴史の直視を訴えるハーランド内務長官は「一夜にして癒やすことはできないが、いつかそうなる」と先住民への財政支援拡大を掲げる。

6日、遺骨返還のため米ペンシルベニア州カーライルを訪れたキャシー・ローランドさん(右)と娘のベイリーさん=杉藤貴浩撮影
 キャシーはコディアックからカーライルへの旅に、娘のベイリーも連れてきた。アナスタシアが寄宿学校に送られた時と同じ13歳だ。
 「やっと家に帰れるね」。心の中でアナスタシアに声をかけたというベイリー。故郷に帰った遺骨には、自身が習う部族の踊りをささげるという。(敬称略、ペンシルベニア州カーライルで、杉藤貴浩)
【米先住民寄宿学校・奪われた未来(全3回)】
 米国で先住民寄宿学校の歴史に光が当たり始めている。同化政策が与えた深い傷や癒やしの道を追った。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/191083

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性被害の記憶や虐待の日々がアルコールに走らせた…今も残る心身の傷

2022-07-24 | 先住民族関連
東京新聞2022年7月21日 06時00分
<米先住民寄宿学校・奪われた未来㊥>
◆少年が深夜、テントの中で…
 それは約60年前のキャンプの日の出来事だった。米中西部サウスダコタ州にあった先住民寄宿学校の出身者ロジャー・セントクレア(76)は、自分が11歳くらいだったと思い返す。

6歳ごろのセントクレアさん。9歳の時、政府のバスで故郷から約650キロ離れたサウスダコタ州の寄宿学校に送られた=本人提供
 校舎の裏手にある丘に、指導役の司祭や生徒ら10人ほどで出掛けた。日が沈み、テントを張って寝転がる。次に目を覚ましたのは深夜、闇の中で誰かが自分の体を触る感触だった。
 セントクレアは「つらすぎる記憶だ。それは性的暴行の試みだった」としか語らない。だが、その時の気持ちは今も強く覚えている。「なぜ自分がそんなことをされるのか。ひどくおとしめられたように感じた」
◆心の飢えを満たした礼拝用ワイン
 政府やキリスト教会が先住民を同化するために運営した寄宿学校。その歴史と実態を調査する内務省が5月に公表した報告書は、各校で性的虐待が横行したことを認めている。セントクレアは、体育館で映画が上映される日曜日の夜になると、聖職者の1人が女児を膝に乗せていた光景を覚えている。

米ワシントン州で6月、寄宿学校で受けた虐待を語るロジャー・セントクレアさん=杉藤貴浩撮影
 心はいつも渇いていた。同時期に在籍した兄弟たちとの交流は禁じられていた。違反すれば、棒の入ったホースでズボンを下ろした尻を打たれた。「まるで孤児みたいだった。たくさんの兄弟がいたのに」とセントクレア。
 そんな日々の慰めとなったのはアルコールだ。学校の教会の祭壇には礼拝に使うワインがある。儀式の手伝いに手を挙げ、隠れて飲んだ。「それが苦しみから逃れる唯一の方法だった。14歳のころには依存症になっていた」
 酒を断つ決心がついたのは、およそ20年後の30代半ば。「クリスマスには飲まない」という9歳の息子との約束を破り、飲酒運転で事故を起こした末のことだった。
◆がんは3倍以上、若者の自殺率2.7倍
 寄宿学校で負った心と体の傷は、多くの出身者の人生に深い影を落とした。内務省の報告書は、寄宿学校を経験した成人の健康状態が、一般と比べて著しく悪いというデータを引用している。「がんは3倍以上、結核には2倍以上なりやすい。心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病のリスクも高い」
 背景には、家庭生活や固有の言葉を奪われて育ったトラウマ(心的外傷)や卒業後の社会に適応できなかったための貧困などがある。親子の絆が断ち切られた経験は家庭崩壊の連鎖につながり、後の世代にも影響した。先住民の若者の自殺率は、全国平均の2.7倍に上るという報告もある。
 セントクレアと同様、寄宿学校で数々の虐待を受けたマシュー・ウォーボネット(76)は卒業後の10代後半、「竜巻のような怒りの感情」に悩まされ、首をつって死のうとした。だが父に止められた。「あの時、父が泣くのを初めて見た」

 その父もそれから10数年後に亡くなった。死因はつま先の壊死
の悪化。自身も寄宿学校に入れられ、極寒の大地を走って逃げた後遺症だった。(敬称略、ニューヨーク・杉藤貴浩)
【関連記事】<米先住民寄宿学校・奪われた未来㊤>海沿いの小部屋は先住民の子の「監獄」だった…
 米国の先住民寄宿学校 1819年の「インディアン文明化基金法」などに基づき、先住民の子ども数十万人を強制的に集め、英語やキリスト教のほか、出身部族の伝統とは異なる産業教育を施した。文化継承を絶って白人社会に同化させることにより、先住民の土地を奪う目的もあったとされる。政府やキリスト教会が関与した寄宿学校は400以上。身体的、精神的虐待が横行したほか、劣悪な環境による病気も流行した。2020年の国勢調査では、先住民の血を引く人口は約970万人で全体の約3%。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/190837

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海沿いの小部屋は先住民の子の「監獄」だった…生存者が語る米寄宿学校での人種差別とは

2022-07-24 | 先住民族関連
東京新聞2022年7月20日 06時00分
<米先住民寄宿学校・奪われた未来㊤>

トゥラリップの先住民寄宿学校で子どもたちへの体罰に使われた「監獄」の跡。潮が満ちると海水が押し寄せたという=杉藤貴浩撮影
 穏やかな波が寄せては返す海岸に、うち捨てられた建物の痕跡があった。水にぬれたコンクリートの基礎は、そこに小さな部屋があったことを物語る。
 米北西部ワシントン州の先住民保護区トゥラリップで先住民の権利擁護に取り組むデボラ・パーカー(51)が語る。「ここに子どもたちが閉じ込められていた」
 パーカーによると、小部屋は体罰のための「監獄」だった。「潮が満ちれば隙間から海水が入ってくる。子どもたちは夏でも冷たい海水につかり、一晩中そのままにされた」

先住民寄宿学校は同化と差別の制度だったと話すデボラ・パーカーさん=杉藤貴浩撮影
 この「監獄」があったのは旧トゥラリップ工業学校。19世紀前半から150年間、米政府やキリスト教会が各地で運営した先住民寄宿学校の一つだ。先住民の伝統文化を断ち切り、白人社会への同化を図ることを目的に、幼い子どもを親元から引き離した。
 パーカーは言う。「寄宿学校は、自身の信仰や文化は誤ったものだと思い込ませる人種差別そのものだった」
 米国の先住民寄宿学校 1819年の「インディアン文明化基金法」などに基づき、先住民の子ども数十万人を強制的に集め、英語やキリスト教のほか、出身部族の伝統とは異なる産業教育を施した。文化継承を絶って白人社会に同化させることにより、先住民の土地を奪う目的もあったとされる。政府やキリスト教会が関与した寄宿学校は400以上。身体的、精神的虐待が横行したほか、劣悪な環境による病気も流行した。2020年の国勢調査では、先住民の血を引く人口は約970万人で全体の約3%。
◆牛を追う棒で突かれ「人間とみなされなかった」
先住民寄宿学校に入れられた6歳ごろのウォーボネットさん。髪を切られ、洋服を着せられている=本人提供
 「牧場の牛を追い立てる棒で突かれることもあった。先っぽには電流が流れていて、生徒はもがき苦しんで倒れた」。米北西部ワシントン州の先住民保護区トゥラリップ周辺で暮らすマシュー・ウォーボネット(76)は、中西部サウスダコタ州の寄宿学校で過ごした8年間を振り返る。
 学校に入れられたのは1952年、6歳の時。到着した子どもたちは数人ずつ大きな浴槽で洗われた後、先住民の慣習では身内に不幸があった際にしか切らない髪を一斉に刈られた。
 1学年は100人ほど。笛の合図で毎朝6時に起こされると、教会まで行進し、キリスト教を学ばされた。英語ではなく出身部族の言葉で話しただけでも罰を受け、教師や聖職者からの虐待が日常化していた。
 ウォーボネットは「子どもを傷つけたいだけの教師もいた」と話す。銃で空き缶を撃って脅す。子どもがまっすぐ差し出した手のひらにコインを長時間置き、腕の疲れに耐えきれずに落とすと殴打した。同じ学校にいた兄は司祭に階段から投げ落とされ、腕を骨折した。「私たちは人間と見なされていなかった。もの扱いだった」

6月、米ワシントン州トゥラリップにある先住民の歴史を伝える博物館で、寄宿学校での経験を語るマシュー・ウォーボネットさん=杉藤貴浩撮影
◆50年以上顧みられなかった「国家的悲劇」
 14歳で寄宿学校を出たウォーボネットは自身の部族の言葉や文化を学び直し、先住民の権利向上に尽力してきた。連邦議会上院は公民権運動の高まった1969年、寄宿学校政策を「国家的な悲劇」と認め、同化目的の学校はその後、姿を消した。
 だが、寄宿学校の詳しい実態は長く顧みられなかった。同様の歴史を抱えるカナダで昨年、学校跡から大勢の子どもの遺骨や墓が見つかったことを機に、米国でもようやく問題化。国民融和を唱えるバイデン政権で先住民初の内務長官となったハーランド氏のもとで検証が始まり、今年5月に最初の報告書を出した。
 パーカーによると、子どもたちが海を目の前に閉じ込められた「監獄」の近くには、病気やけがをした生徒たちが運ばれる地下室もあったという。「そこに行ったまま二度と戻らなかった子どもの話をたくさん聞いている」とパーカー。
 奪われ、失われた先住民の子どもたちの命。5月の政府報告書は「今後の調査で、その数は数千、数万だったと分かるだろう」と指摘している。(敬称略、ワシントン州トゥラリップで、杉藤貴浩)
 ◇
 米国で先住民寄宿学校の歴史に光が当たり始めている。同化政策が与えた深い傷や癒やしの道を追った。3回に分けて報告する。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/190611

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新作撮影中に急逝した監督が遺したインタビュー 社会から隔絶された高地に暮らす老夫婦描くペルー映画「アンデス、ふたりぼっち」

2022-07-24 | 先住民族関連
映画.com7/23(土) 8:00配信

オスカル・カタコラ監督
 南米アンデス山脈を舞台に、社会から隔絶された高地にふたりきりで暮らす老夫婦の姿を描いたペルー映画「アンデス、ふたりぼっち」が、7月30日から公開される。本作は、ペルー映画史上初の全編アイマラ語による長編作品として注目を集め、本国で大ヒットを記録したが、オスカル・カタコラ監督が、第2作撮影中の2021年11月に34歳の若さで他界し、本作が長編初作品にして遺作となった。
 小津安二郎や黒澤明らの日本映画から影響を受け、ペルーのシネ・レヒオナル(地域映画)の旗手としての活躍を期待されていたカタコラ監督の生前のインタビューを映画.comが入手した。
 アンデス山脈の標高5000メートルを越える地で、都会に出た息子の帰りを待ちながら暮らす老夫婦パクシとウィルカ。アイマラ文化の伝統的な生活を送る彼らは、コカの葉を噛み、母なる大地のパチャママに日々の糧を祈る。そんなある日、飼っていた羊が狐に襲われ、さらにマッチを買いに行ったウィルカが道中で倒れてしまう。
――この映画を作ったきっかけは何ですか?
 大学時代、開発コミュニケーションの実習中に多くの高地の村を訪れ、高齢者の放置を目の当たりにしました。子ども達は街へ移住し、年に数回しか会いに帰りません。高齢者の方々は何らかの形で、放棄に苦しんでいました。
――では、この映画の主題は放棄だと言えますか?
 その通りです。この映画には多くのテーマが含まれていますが、主題は高齢者の放棄です。ウィルカとパクシは社会から孤立しています。ふたりは付き添い・支えてくれる存在を必要とします。
 私は高齢者の方には大変敬意を払っています。両親のおかげで、年長者は知恵の塊であり、敬意を払うべきだと学びました。 でも、ぺルーや世界の他の地域にも両親や祖父母に会いに行かない人が多くいることが事実です。多くの人は目上の人への敬意を失い、無視をしたり、いじめたりします。街や村では、高齢者は邪魔者ですが、アンデスの文化では違います。つまり、高年齢であるほど、人々は尊敬されます。
 この映画では、アンデス住民のアイデンティティの喪失についても取り上げています。アンデスの文化と言語は社会から過小評価されて来ました。今ごろになって、少し重要視されています。子どもがより良い生活を求めて、別の社会空間へ移住するというグローバル化の影響についても取り上げています。非難であり、先祖のルーツを放棄する人々への批判です。
――この映画はフィクションですが、自叙伝的です。主人公のビセンテ・カタコラは監督の母方の祖父です。この映画では、私生活から他に何を取り入れましたか?
 幼少期の一時期を標高4500メートルのプーノ地方の高地で、父方の祖父母と過ごしました。祖父母はスペイン語が話せなかったので、私は完璧なアイマラ語を話すことができます。この映画は、祖父母と過ごした日々と祖父母の父や他の子へのノスタルジアに基づいています。
 父は6、7歳時の幼い私を祖父母のもとへ送りました。兄にもそうしました。学校が休みの間の3、4カ月は祖父母と暮らしていました。今は失われつつありますが、ペルーの高地に住む人の間では、必要な習慣です。父方の祖父母は数年前に亡くなりました。映画の制作にあたってふたりを演じる俳優を探していましたが、最終的に、アイマラ族でもある母方の祖父に任せることにしました。家族のことなので、祖父はこのプロジェクトにとても協力的でした。
――パクシを演じるローサ・ニーナさんは、実の祖母でも、女優でもないのですね。彼女との撮影はどうでしたか?
 ローサさんは、彼女の芸術性と社交的な性格を知る友人が紹介してくれました。彼女の家へ行くと、彼女はすぐに映画への出演を承諾してくれました。 彼女は映画を見たこともなく、映画館へ行ったこともありませんでした。「何のことかよく分からないが、協力します」と言ったのをはっきり覚えています。私たちには信じられない返事でした。そして、ローサさんとはアイマラ語で話すことがポイントでした。
 それから6カ月、集中的に演技指導を行いました。初め、ビセンテとローサはセリフをよく間違え、アドリブでやろうとしたり、間やリズムの取り方が容易ではありませんでした。ふたりにとって新しいことでした。
――あるシーンで、パクシはウィルカに息子が帰ってくるという夢を見たと話しています。息子探しは繰り返し出る話題ですね。その息子は誰を表しますか? 観客自身ですか?
 そうです。何人かに、間接的にというより、親を放置した人への直接的な訴えだと言われました。でも、私たちの社会をも表しています。つまり、文化遺産を存続させることが出来ない子ども達です。よその地へ行ったその息子が自身の文化の知識を次世代へ伝えることが出来ないことです。生まれて来なかった子どものようです。まさに隠喩です。
――そのほか、どんな隠喩がこの映画にありますか?
 多くあります。その一つがグローバリゼーションの産物であるマッチです。先住民の村はグローバル化のシステムに依存するようになりました。だから、映画では、一連の悲劇が起きます。
 もう一つの隠喩は、最後のシーンで見せるアンデスの世界観です。そのため、<パチャママ(母なる大地)>についてよく話されます。アンデスの文化では、山々は性別があります。オス山とメス山、そして夫婦の山があります。おばあさん(パクシ)は女神、聖なる存在になる為にその山に入ります。映画に相応しい自然風景を見つけるのは簡単ではなく、撮影場所探しに長い時間を費やしました。
――山脈は映画のもう一つの主役ですね。標高5000メートル以上での撮影はどうでしたか?
 大きな試練でした。標高3800メートルにあるプーノ市に住んでいるにも関わらず、さらに1000メートル登ると、気候の違いが著しいです。零度、時にはそれ以下の気温で撮影をしました。
 でも、苦だったとは決して言いません。仕事に不満はありません。アイマラの文化では、仕事は決して神からの罰ではありません。それに、山は重要です。アンデス山脈はいい写真を撮るのに美しい風景画とされています。しかし、その山の向こうに隠されているものに気づきません。その山の裏には、ウィルカとパクシのように子どもの帰りを待つ家族や鉱山会社や他の機関の侵入により傷付けられてる文化があるかもしれません。この映画は、ある意味でその現実を暴いてます。
――この映画には政治批判の意図も込められていますね。
 はい。先住民の村々を放置する国家への批判です。国家がこのような弱者に興味が持てるように、国家に対す政治的な見方です。ペルーは多文化国家です。およそ49の言語があり、いくつかは、徐々に消えていっています。ペルー国家は近年、やっとこれらの言語の回復や保護を奨励しています。
 先住民族は何らかの形で支援を受け始めています。しかし、保護を口実に多くの人に利用され、悪用されることを恐れています。なので、慎重に取り扱わないといけないテーマだと思います。より多くの保護と支援政策はあるべきですが、慎重な対処が必要です。政府は、先住民族が政府に依存するのではなく、その後も自身で生計を立てられるような教育・保護支援をすべきです。国家はアイマラ族の人々が国家に依存することを避けるべきです。
――この映画を観る人に何を伝えたいですか?
 家族の結束が人生で最も大切だということです。自身の習慣と伝統を大切にすることを学び、自分の家族を少しでも大切にすることです。過去を見て、ルーツを振り返ることが未来へつながることです。祖母は「あなたが親に接するように、年老いたあなたに子どもが接するようになる」とよく言っていました。
――では、どんな解釈はされたくないですか?
 アイマラ族が無知で、惨めな人々だとは解釈されたくないです。アイマラ族の誉れの一つは誇りです。非常に耐える民族であり、その勇気で支配しようとしたいくつかの文明に立ち向かって来ましたから。
 7月30日から新宿K's cinemaで公開。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fe4ce95f712a2565e4cd597bf5e31ee5599d54f2

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プレミアム付き 商品券を限定販売 アイヌ民族文化財団

2022-07-24 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2022/7/23配信
 アイヌ民族文化財団は23日、白老町のウポポイ内のレストラン、ショップ、キッチンカーで使えるプレミアム付き商品券を限定5000冊(1人1冊限り)発売した。販売期間は8月28日までだが、完売次第終了する。  価格は1000円で、500円…  この続き:521文字
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https://www.tomamin.co.jp/article/news/upopoi/83217/

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