北海道新聞07/06 16:00

函館市指定有形文化財「アイヌ風俗十二ケ月屏風」(7~12月)。12月(左端)は「イオマンテ(熊送り)」の儀式を描く。カムイ(神)であるヒグマをもてなし土産を持たせてカムイの国へと送り返し、再び人間の世界に肉や皮をもたらしてもらえるよう祈る
【函館】アイヌ民族の風俗や人物を和人が描いた「アイヌ絵」。江戸時代後期から明治初期にかけて函館で活躍したアイヌ絵師、平沢屏山(びょうざん)(1822~76年)の生誕200年に合わせ、企画展「平沢屏山とその時代」が市立函館博物館(函館市青柳町)で開かれている。市指定有形文化財「アイヌ風俗十二ケ月屏風」(同館所蔵)など道内でも多くのアイヌ絵がある函館市などの所蔵作品から約70点を展示し、それらを生み出した時代背景も紹介する。
■民族の生活丁寧に描く
同館主催。岩手県花巻市出身の屏山は、20代で函館に移り、船絵馬を描いた。豪商、杉浦嘉七に見いだされ、杉浦の漁場だった十勝地方や日高地方幌泉郡などを訪問。時にアイヌ民族と生活をともにし、風俗を描いた。器物や文化、人物への観察眼と、精緻で丁寧な描写は現代まで、アイヌ文化を読み解く鍵として重要な役割を果たしている。
和人の勢力が増していく幕末から明治期。アイヌ民族の首長らが手をつなぎ腰をかがめて歩く姿を描いた「ウイマム図絵馬」は松前藩主への謁見(えっけん)の儀礼の一場面。「日高アイヌ・オムシャ之図」は1858年(安政5年)に日高の会所で開かれた「オムシャ」で、正装した役職あるアイヌ民族が拝伏する姿が描かれている。
屏山が晩年に描いたとされる「アイヌ風俗十二ケ月屏風」はアイヌ民族の生活を12カ月に当てはめた。狩猟や漁猟、イオマンテ(熊送り)など伝統的なアイヌ民族の暮らしを描く一方、鳥居をくぐる姿や漁場で使役される様子、和船など、アイヌ民族の生活に影響を及ぼす和人の存在が垣間見える。
会場には英国の貿易商ブラキストンが屏山に制作を依頼した「地引網図」「漁業全景図」や、下絵や模写の手控えとされる墨絵も。明治期の同化政策でアイヌ民族の伝統的な生活や文化は急速に失われていくが、屏山の死後、屏山のアイヌ絵を手本に描いたと見られる作品も並ぶ。
同館の奥野進学芸員は「博物館で150点以上、中央図書館と合わせて300点以上のアイヌ絵があり、函館が誇る財産。屏山を知ることで当時の北海道が見えてきます」と紹介する。
10月16日までの午前9時~午後5時(入館は同4時半まで)。月曜と7月19日、8月11日、9月20日、同23日、同30日、10月11日は休館。入館料は一般300円、大学・高校生200円、中・小学生100円。(野長瀬郁実) ◆「ウイマム図絵馬」のムは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/702312

函館市指定有形文化財「アイヌ風俗十二ケ月屏風」(7~12月)。12月(左端)は「イオマンテ(熊送り)」の儀式を描く。カムイ(神)であるヒグマをもてなし土産を持たせてカムイの国へと送り返し、再び人間の世界に肉や皮をもたらしてもらえるよう祈る
【函館】アイヌ民族の風俗や人物を和人が描いた「アイヌ絵」。江戸時代後期から明治初期にかけて函館で活躍したアイヌ絵師、平沢屏山(びょうざん)(1822~76年)の生誕200年に合わせ、企画展「平沢屏山とその時代」が市立函館博物館(函館市青柳町)で開かれている。市指定有形文化財「アイヌ風俗十二ケ月屏風」(同館所蔵)など道内でも多くのアイヌ絵がある函館市などの所蔵作品から約70点を展示し、それらを生み出した時代背景も紹介する。
■民族の生活丁寧に描く
同館主催。岩手県花巻市出身の屏山は、20代で函館に移り、船絵馬を描いた。豪商、杉浦嘉七に見いだされ、杉浦の漁場だった十勝地方や日高地方幌泉郡などを訪問。時にアイヌ民族と生活をともにし、風俗を描いた。器物や文化、人物への観察眼と、精緻で丁寧な描写は現代まで、アイヌ文化を読み解く鍵として重要な役割を果たしている。
和人の勢力が増していく幕末から明治期。アイヌ民族の首長らが手をつなぎ腰をかがめて歩く姿を描いた「ウイマム図絵馬」は松前藩主への謁見(えっけん)の儀礼の一場面。「日高アイヌ・オムシャ之図」は1858年(安政5年)に日高の会所で開かれた「オムシャ」で、正装した役職あるアイヌ民族が拝伏する姿が描かれている。
屏山が晩年に描いたとされる「アイヌ風俗十二ケ月屏風」はアイヌ民族の生活を12カ月に当てはめた。狩猟や漁猟、イオマンテ(熊送り)など伝統的なアイヌ民族の暮らしを描く一方、鳥居をくぐる姿や漁場で使役される様子、和船など、アイヌ民族の生活に影響を及ぼす和人の存在が垣間見える。
会場には英国の貿易商ブラキストンが屏山に制作を依頼した「地引網図」「漁業全景図」や、下絵や模写の手控えとされる墨絵も。明治期の同化政策でアイヌ民族の伝統的な生活や文化は急速に失われていくが、屏山の死後、屏山のアイヌ絵を手本に描いたと見られる作品も並ぶ。
同館の奥野進学芸員は「博物館で150点以上、中央図書館と合わせて300点以上のアイヌ絵があり、函館が誇る財産。屏山を知ることで当時の北海道が見えてきます」と紹介する。
10月16日までの午前9時~午後5時(入館は同4時半まで)。月曜と7月19日、8月11日、9月20日、同23日、同30日、10月11日は休館。入館料は一般300円、大学・高校生200円、中・小学生100円。(野長瀬郁実) ◆「ウイマム図絵馬」のムは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/702312