北海道新聞07/14 05:00

教育旅行の子どもたちや観光客でにぎわうウポポイ。2年間の総来場者数は50万人を突破した
【白老】12日で開業から2年がたった国のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が地域との連携を模索している。先月から町と話し合いの場を設けているほか、白老観光協会の取り組みにも積極的に参加。地域の伝承者との交流も深める。一方、白老のアイヌ文化の伝承には課題を残す。
今年6月、町と白老観光協会、ウポポイの職員計10人による会議が行われ、道外の誘客プロモーションや町内のイベントで連携を図ることを初めて確認した。町内への誘客促進やリピート率向上を狙い今後も毎月、情報を交換する予定だ。
ウポポイは2020年に国の施設として開業。管理法人として政府に指定されたアイヌ民族文化財団が運営する。財団のある職員は「何か新しい取り組みを始める時には必ず国に申告しなければならず、時間がかかる」と吐露する。
これまで白老観光協会がフェイスブックでウポポイのイベントを発信する例はあったが、3者での会議は珍しい。町役場の中にはウポポイでのイベント開催を町の広報で初めて知る職員もいたという。同協会の職員は「情報共有がうまくできていなかった」と明かした上で「地元を盛り上げたい気持ちは同じ。積極的に協力し合いたい」と話す。
戸田安彦町長は「現場レベルでは間違いなく連携が深まっている。アフターコロナを見据え、町外や海外にPRするため密に情報交換したい」と展望を語る。
ウポポイの総来場者数は52万人を突破。大型連休中の5月4日には1日の来場者数が過去最高の3271人に達した。教育旅行のバスが連日、駐車場に並ぶ。
町内では行政や観光協会が周遊効果を高める施策を進め、ウポポイも連携を探る。昨年10~12月には、町内の宿泊料を助成する観光協会のキャンペーンに参加。宿泊者向けクーポンを園内でも使えるようにした。今年6月に町が始めたふるさと納税「旅先納税」では、返礼品の電子クーポンがウポポイの入場券や特別展の観覧料に利用できる。
8月6日にはウポポイで地域と連携してイベントを開く。白老アイヌ協会によるチェプオハウ(サケ汁)の提供や、町内でアイヌ語教室を主宰する大須賀るえ子さんのアイヌ語教室、白老民族芸能保存会によるアイヌ古式舞踊の披露も検討中だ。ウポポイ運営本部の斉藤基也本部長(60)は「ウポポイは白老の人に支えられている。だからこそ地域との取り組みを拡大しなければ」と力を込める。
ウポポイ開業に伴い18年、民間が町内で運営していた旧アイヌ民族博物館が閉館。地域独自のアイヌ文化の伝承が課題だ。旧アイヌ民族博物館の元館長で、同財団の野本正博文化振興部長は「徐々に地元との交流が活発になっていると感じる。白老の貴重なアイヌ文化を伝承するため、町内の関係者と今後も相互連携を図りたい」と述べた。
一方、地元からはウポポイが各団体や個人に直接声を掛けることに疑問の声も。白老アイヌ協会の山丸和幸理事長は「白老のアイヌ文化を伝承するのならば、白老アイヌ協会に交通整理までやらせてほしい。いわゆる『一本釣り』では、特定の人にしか光が当たらなくなる」と課題を挙げた。(小林彩乃)
(注)記事中の「チェプオハウ」の「プ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/705358

教育旅行の子どもたちや観光客でにぎわうウポポイ。2年間の総来場者数は50万人を突破した
【白老】12日で開業から2年がたった国のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が地域との連携を模索している。先月から町と話し合いの場を設けているほか、白老観光協会の取り組みにも積極的に参加。地域の伝承者との交流も深める。一方、白老のアイヌ文化の伝承には課題を残す。
今年6月、町と白老観光協会、ウポポイの職員計10人による会議が行われ、道外の誘客プロモーションや町内のイベントで連携を図ることを初めて確認した。町内への誘客促進やリピート率向上を狙い今後も毎月、情報を交換する予定だ。
ウポポイは2020年に国の施設として開業。管理法人として政府に指定されたアイヌ民族文化財団が運営する。財団のある職員は「何か新しい取り組みを始める時には必ず国に申告しなければならず、時間がかかる」と吐露する。
これまで白老観光協会がフェイスブックでウポポイのイベントを発信する例はあったが、3者での会議は珍しい。町役場の中にはウポポイでのイベント開催を町の広報で初めて知る職員もいたという。同協会の職員は「情報共有がうまくできていなかった」と明かした上で「地元を盛り上げたい気持ちは同じ。積極的に協力し合いたい」と話す。
戸田安彦町長は「現場レベルでは間違いなく連携が深まっている。アフターコロナを見据え、町外や海外にPRするため密に情報交換したい」と展望を語る。
ウポポイの総来場者数は52万人を突破。大型連休中の5月4日には1日の来場者数が過去最高の3271人に達した。教育旅行のバスが連日、駐車場に並ぶ。
町内では行政や観光協会が周遊効果を高める施策を進め、ウポポイも連携を探る。昨年10~12月には、町内の宿泊料を助成する観光協会のキャンペーンに参加。宿泊者向けクーポンを園内でも使えるようにした。今年6月に町が始めたふるさと納税「旅先納税」では、返礼品の電子クーポンがウポポイの入場券や特別展の観覧料に利用できる。
8月6日にはウポポイで地域と連携してイベントを開く。白老アイヌ協会によるチェプオハウ(サケ汁)の提供や、町内でアイヌ語教室を主宰する大須賀るえ子さんのアイヌ語教室、白老民族芸能保存会によるアイヌ古式舞踊の披露も検討中だ。ウポポイ運営本部の斉藤基也本部長(60)は「ウポポイは白老の人に支えられている。だからこそ地域との取り組みを拡大しなければ」と力を込める。
ウポポイ開業に伴い18年、民間が町内で運営していた旧アイヌ民族博物館が閉館。地域独自のアイヌ文化の伝承が課題だ。旧アイヌ民族博物館の元館長で、同財団の野本正博文化振興部長は「徐々に地元との交流が活発になっていると感じる。白老の貴重なアイヌ文化を伝承するため、町内の関係者と今後も相互連携を図りたい」と述べた。
一方、地元からはウポポイが各団体や個人に直接声を掛けることに疑問の声も。白老アイヌ協会の山丸和幸理事長は「白老のアイヌ文化を伝承するのならば、白老アイヌ協会に交通整理までやらせてほしい。いわゆる『一本釣り』では、特定の人にしか光が当たらなくなる」と課題を挙げた。(小林彩乃)
(注)記事中の「チェプオハウ」の「プ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/705358