LifTe 2025-1-11
北海道の「公益財団法人アイヌ民族文化財団」と「フィンランド国立サーミ博物館(SIIDA)」が連携協定を締結しました。
この協定は、先住民族の文化振興と普及を目的とし、人材交流、共同研究、展示などの分野で協力を進めるものです。
また、1984年に両組織の前身が締結した姉妹提携宣言を基に、国立組織として新たに結ばれた協定でもあります。
サーミとは?
サーミは、北欧のノルウェー、スウェーデン、フィンランド、そしてロシア北部のラップランド地方に住む先住民族で、独自の言語や文化を持ち、トナカイ飼育や狩猟を中心とした伝統的な暮らしを続けてきました。
歴史は1万年以上前にさかのぼり、現在も欧州連合(EU)内で唯一存在する先住民族です。
サーミ文化は、鮮やかな伝統衣装、ヨイク(独特な歌唱法)、自然との共生を特徴としています。
提携の背景と経緯
両者の交流は1984年、旧アイヌ民族博物館の開館時に始まりました。同年6月、フィンランド・イナリで姉妹提携宣言が調印され、その後も以下のような文化交流が行われてきました。
1988年:旧アイヌ民族博物館のメンバーが北欧で講演。
1989年:白老で開催された北方民族国際フェスティバルにサーミのミュージシャンが参加。
1998年:SIIDAの博物館開館式典にアイヌ民族の舞踊団が参加。
2000年:白老で「スコルト・サーミの世界」特別展を開催。
2004年:SIIDAでアイヌ文化の展示を実施。
2018年には旧アイヌ民族博物館が公益財団法人アイヌ民族文化財団に改組され、2020年には北海道白老町に「ウポポイ」が開業。
これまでの交流の歴史を受け、2021年から新たな協定締結に向けた準備が進められました。
今回の連携協定は、これまでの40年にわたる交流の歴史を次世代へとつなぎ、アイヌとサーミが互いの文化をさらに深く共有する新たなスタートです。
さらに、この協定を通じて、他の先住民族文化機関とも国際的な連携が進み、先住民族文化の保護と普及がより一層促進されることが期待されています。
この協定は、先住民族の文化的遺産を守りながら、世界に向けてその価値を広く発信する大きな一歩となるでしょう。
フィンランド国立サーミ博物館(SIIDA)
「SIIDA」は1960年代に野外博物館として設立され、1988年に博物館が開館しました。
「SIIDA」は博物館の通称であり、北部ラップランド自然センターや観光情報センターなども含む複合施設の総称です。
2022年、2,000点以上のサーミ関連資料がフィンランド国立博物館から返還され、改修・拡張工事を経て再オープンしました。同館は2024年に「欧州博物館賞(European Museum of the Year Award)」を受賞し、フィンランド国内でも高い評価を得ています。