北村薫の『いとま申して』3部作の2作目。
北村薫の父が残した日記から掘り起こした、
1920年代後半から30年代への時代のある一場面。
一場面と書いたけれど、それもちろん一場ではなくて、いくつもの場面が織りなされながら、
どんな時代でも
そこに生きている自分自身の生活があって、それが時代の中での
実感を伴った「私」の生活であって。
それを評伝のように、日録のように記述していく。
時は世界恐慌から満洲事変、日中戦争へと流れていく。
不景気と不穏な空気。
それはそうなんだ。
けれども、
紛れもなく、こんな青春が、そこにあった、ということが、ふくよかに伝わる。
小説の魅力だ。
小説の主人公である作者の父が慶應でであった折口信夫、
すごかったんだろうな。
でも、そこに多様な価値はからまり。
うん、それに出会えたかけがえのなさもあって。
作者北村薫が何を慈しもうと思ったかが、直截に伝わる。
父の日記と作者が対話するように進む筆致が
いいな。
そして、日記の記述の背景を探る面白さは、著者の「私」シリーズをたどっている。
さあ、第3部に行こう。
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