この夏、最大の読了書かな。この小説に出会ったのは高校か大学の頃だったとおもうのだが、最初で躓き、その後挑戦。
今回、やっとまともに読了。まともっていっても、うーむ。とにかく何だか面白かった。わけわからない面白さってある
のだと、改めて実感。以前、突っかかったのが嘘のようにずんんと進んだ。
舞台は降矢木算哲博士が建築技師ディグスビィに建てさせた黒死館。
屋敷は「ボスフォラス以東に唯一つしかない」と云われ、「ケルト・ルネサンス式の城館(シャトー)を見慣れた今日で
さえも、尖塔や櫓楼の量線から来る奇異(ふしぎ)な感覚ーまるでマッケイの古めかしい地理本の挿画でも見るような感
じは、何日になっても変らないのである。けれども、明治十八年建設当初に、河鍋暁斎や落合芳幾をしてこの館の点睛に
龍宮の乙姫を描かせた程の綺(きら)びやかな眩惑は、その後星の移ると共に薄らいでしまった。」と書かれている。
もうすでに、ここまでの書き出しからの1ページほどで、この小説の衒学趣味は横溢している。
これが、この迷宮のような衒学の渦が、小説の魅力であり、難読を余儀なくさせるものである。それが快感に変わるから
凄いのだが。
その屋敷で、算哲の自殺以降、連続殺人が起こる。探偵は法水麟太郎。ヴァン・ダインのうんちく探偵ファイロ・ヴァンス
を向こうに回すほどの蘊蓄・衒学探偵。本気で謎を解く気があるのかというほど、散りばめるのは占星術、呪術、宇宙論、
物理法則、詩、戯曲、神学、宗教学、心理学、精神分析学、暗号学、紋章記号学、医学、薬学、犯罪学。謎の解読に直進し
ない。黒死館殺人事件という迷宮を作るために捜査をしているようなのだ。それが、一大伽藍を形作っていく。テレーズと
いう自動人形が出てきたり、古代時計台が設えられたり、薬品室や自動噴水があったり、甲冑が移動したり、黙示図が表れ
たり、密室や墳墓が設けられたり。
ああ、小栗虫太郎はすべてをやりたいのだ。ミステリーというもののすべてを書きとめる小説を創りたいのだ。それが、ミ
ステリーを築きながら、ミステリーを逸脱していく。解明される謎よりも深く折り重なる謎のほうが心地よくなっていく。
もちろん後半100ページ程での解明への速度感は味わえる。だが、一方で、どこか、それすら、もういいような感覚も宿るの
だ。
日本三大奇書の一つといわれる小説。同時に三大アンチミステリーともいわれる、この小説。堪能しました。
ちなみに目次を記載する。
序篇 降矢木一族釈義 第一篇 死体と二つの扉を繞って 第二篇 ファウストの呪文
第三篇 黒死館精神病理学 第四篇 詩と甲冑と幻影造詣 第五篇 第三の惨劇
第六篇 算哲埋葬の夜 第七篇 法水は遂に逸せり!? 第八篇 降矢木家の壊崩
それぞれには「テレーズ吾を殺せり」や「水精(ウンディヌス)よ蜿(うね)くれ」などの章タイトルもある。
ミステリーは、小説をもっともメタ小説にできる形態なのかもかもしれない。
今回、やっとまともに読了。まともっていっても、うーむ。とにかく何だか面白かった。わけわからない面白さってある
のだと、改めて実感。以前、突っかかったのが嘘のようにずんんと進んだ。
舞台は降矢木算哲博士が建築技師ディグスビィに建てさせた黒死館。
屋敷は「ボスフォラス以東に唯一つしかない」と云われ、「ケルト・ルネサンス式の城館(シャトー)を見慣れた今日で
さえも、尖塔や櫓楼の量線から来る奇異(ふしぎ)な感覚ーまるでマッケイの古めかしい地理本の挿画でも見るような感
じは、何日になっても変らないのである。けれども、明治十八年建設当初に、河鍋暁斎や落合芳幾をしてこの館の点睛に
龍宮の乙姫を描かせた程の綺(きら)びやかな眩惑は、その後星の移ると共に薄らいでしまった。」と書かれている。
もうすでに、ここまでの書き出しからの1ページほどで、この小説の衒学趣味は横溢している。
これが、この迷宮のような衒学の渦が、小説の魅力であり、難読を余儀なくさせるものである。それが快感に変わるから
凄いのだが。
その屋敷で、算哲の自殺以降、連続殺人が起こる。探偵は法水麟太郎。ヴァン・ダインのうんちく探偵ファイロ・ヴァンス
を向こうに回すほどの蘊蓄・衒学探偵。本気で謎を解く気があるのかというほど、散りばめるのは占星術、呪術、宇宙論、
物理法則、詩、戯曲、神学、宗教学、心理学、精神分析学、暗号学、紋章記号学、医学、薬学、犯罪学。謎の解読に直進し
ない。黒死館殺人事件という迷宮を作るために捜査をしているようなのだ。それが、一大伽藍を形作っていく。テレーズと
いう自動人形が出てきたり、古代時計台が設えられたり、薬品室や自動噴水があったり、甲冑が移動したり、黙示図が表れ
たり、密室や墳墓が設けられたり。
ああ、小栗虫太郎はすべてをやりたいのだ。ミステリーというもののすべてを書きとめる小説を創りたいのだ。それが、ミ
ステリーを築きながら、ミステリーを逸脱していく。解明される謎よりも深く折り重なる謎のほうが心地よくなっていく。
もちろん後半100ページ程での解明への速度感は味わえる。だが、一方で、どこか、それすら、もういいような感覚も宿るの
だ。
日本三大奇書の一つといわれる小説。同時に三大アンチミステリーともいわれる、この小説。堪能しました。
ちなみに目次を記載する。
序篇 降矢木一族釈義 第一篇 死体と二つの扉を繞って 第二篇 ファウストの呪文
第三篇 黒死館精神病理学 第四篇 詩と甲冑と幻影造詣 第五篇 第三の惨劇
第六篇 算哲埋葬の夜 第七篇 法水は遂に逸せり!? 第八篇 降矢木家の壊崩
それぞれには「テレーズ吾を殺せり」や「水精(ウンディヌス)よ蜿(うね)くれ」などの章タイトルもある。
ミステリーは、小説をもっともメタ小説にできる形態なのかもかもしれない。
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