中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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コミュニケーション呪縛

2013年12月02日 | コンサルティング

昨日、2015年春の就職を目指す大学3年生らの就職活動がスタートしました。

報道によると、「円安や株高による景況感の改善を受けて、採用を拡大する企業が増える見通し」で、学生にはやや広き門になるとのことです。

 毎年この時期になると思うのは、コミュニケーション呪縛のこと。

 経団連が企業の大卒等新卒者の採用選考活動を総括し、次年度に向けた動向を把握することを目的に1997 年度より実施している「新卒者採用に関するアンケート調査集計結果」では、採用選考時に重視する要素の第1位は9 年連続で「コミュニケーション能力」となっています。

2位以降の「主体性」、「チャレンジ精神」、「協調性」、「誠実性」は年により順位の変動が多少ありますが、上位5つの項目自体には変化はないです。

そして、この調査の結果を意識しているのか、就職試験で自分にはコミュニケーション力があるとアピールする学生が多いようです。

でも、先日お会いしたある製造業の人事部長は「採用の面接時にコミュニケーション力が高いことが強みと答えた学生を採用したつもりだったが、入社後に見ていると決してコミュニケーション力があるとは思えない。面接ではコミュニケーション力があることが強みだと言っていたのに・・・」とおっしゃっていました。これが、まさにコミュニケ―ション呪縛の一例だと思います。

企業の研修においても、コミュニケーションスキルアップに基づく内容は一昔前は新入社員を中心に若年層が対象でしたが、ここ数年は管理職研修でもコミュニケーションを行ってほしいとの依頼を受けることが多くなったように感じています。

このような話を見聞きするたびに、ではコミュニケーション力が高い人とは一体どういう人なのだろうか?と思います。

Facebookの友達の数が多い人? 「いいね」を押されることが多い人? 初対面の人ともすぐに打ち解けられる人? 冗談が上手い人のこと?

これらがコミュニケーション力が高い条件かというと、ちょっと疑問ですね。

先日、平田オリザさんの「わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か」 (講談社現代新書)を読みました。

そこには、日本のコミュニケーション教育は多くの場合、「わかりあう」ことに重点が置かれていたとして、わかりあえない中で、少しでも共有できる部分を見つけた時の喜びについて書かれていました。

私は、仕事におけるコミュニケーション力とは社内・社外にかかわらず意見が対立した時に「何でわからないんだ」とか、「どうせ、言ってもわからないだろう」とあきらめてしまうのではなく、そういう中でも意見を交換し、双方が納得できる合意点を見い出せる力のことだと思っています。

異なる価値観の人と共に仕事をする時に、物おじせず卑屈にも尊大にもならず、粘り強く共有できる部分を見つけ出していくことには大変なエネルギーが必要です。

私自身社会人になって20数年たっても、なかなか簡単なことではないと感じています。

なおのこと採用時にそれを求めるのは難しいことだと思いますし、そろそろこうしたコミュニケーション呪縛を解くことを考える必要があるのではないでしょうか。

(人材育成社)