私の町は隣の区の町に接しており、その町にGBが強い部がありました。私がGBを始めたとき、その隣町の部からGBの上手な人が週1回私達のGB練習試合に参加していました。私はM部長から打撃は彼を見習うといいと言われました。
その隣の区のGB場は私の家から歩いて10分ぐらいのところにあり、森林や梅林に囲まれていました。地主が町の老人会に理解があり、古い家とその前の広場を町の老人会に貸してくれたそうです。その老人会に所属していたGB部は広場をGB専用のコートとして利用してきました。
私は、毎火曜日、私の町の別の自治会に所属する人のGB部の練習試合に参加していましたが、その人が病気で長期入院してしまったので暇ができ、隣の区のGB場に行くようにしました。
隣の区の選抜チームはGB全国大会に出場したことがありますが、何と毎火曜日、選抜チームのメンバーが上記のGB場に集まって練習していました。選抜チームメンバーは非常にGB上手で、私は充実したGB練習ができました。
今日お話しするのはその選抜チームのメンバーのことではありません。GBを愛し、緑に囲まれたGB場をしっかり管理してきた前部長T氏のお話です。T氏は80代半ばでした。GB上手でしたが、高齢のため区の選抜チームには入っていませんでした。
T氏はGB場の管理に非常に熱心で、早朝一人でGB場にコートブラシをかけたりしていました。部員がGB場に行くと、そこには枯れ葉ひとつ落ちていない清浄なコートがありました。その平面性は私たちの公園広場よりいいと思いました。ほかの部員はラインテープを張り、ゲートなどを立てればいいだけの状態になっていました。
もう一つT氏について驚いたことはGB場周辺や周りの森林の中の道の草刈などをT氏がやっていたことです。水の入ったバケツを持ち、水の中には砥石を入れ、手に研ぎ澄まされた刈込ばさみや鎌を持って草刈りなどの作業をやっていました。使っている間にはさみなどが切れなくなるとすぐ研いで使っていました。よく研ぐのでその刃は名刀を見るように冷たく光っていました。
T氏は地主に感謝し、配慮しているだけでなく、手抜きのない仕事人という印象でした。この町にはすごい人物がいると思いました。非常に印象的な人で、私は師を見た思いがしました。
このGB場は練習試合のためだけではありませんでした。緑豊かで非常に気持ちがいい環境だったので練習試合が終わると、部員たちは、木の下にテーブルを置いて、お茶菓子をいただきならがら長い時間GB談義などを楽しみました。
そんなGB場でしたが、数年前、地主が家を新築すると言ってきたので返還しなければならないことになり、GB部はほかの場所(町の公園)にGB場を移しました。
そして悲しいことですが、つい最近、T氏は、私が病気で自宅療養している間に亡くなってしまいました。非常に元気だったのに大切にしてきたGB場を返還することになり、張っていた気がゆるんでしまったのでしょうか。