福井県立美術館で開催されている特別企画展を鑑賞してきた。
入館時に手渡されたリーフには「ターナーからモネへ」とあった。
19世紀初頭、イギリス「ロマン主義」の巨匠ターナーの作品を起点とした流れが、
様々な画家の手により変遷を繰り返し、やがては国を越え、フランス「印象派」へと受け継がれたという。
その100年の時をウェールズ国立美術館所蔵の数々の作品群から紹介するというもので、
その切り口、そしてたくさんの展示作品とも大いに見ごたえがあって、
正直なところ、「地方の美術館でここまでやるか」と感心するほどの企画だった。
数ある展示作品の中で、ひときわ観客の目を惹いていたのが、
モネの「サン・ジョルジョ・マッジョーレ 黄昏」だったわけだが、
この案内リーフに部分的に使われたところだけでも、その色彩の鮮やかさをご理解いただけると思う。
「モネはひとつの目でしかない。しかしなんという目だろう!」
セザンヌによるモネ評が紹介されていたが
この言葉通り、モネの目による黄昏の色彩を感動をもって鑑賞した次第だ。
ところで...。
モネといえば決して忘れることのない思い出がある。
やがて30年も前の夏のこと、仕事で10日ほどロンドンに滞在したのだが、
スケジュールの合間に、ふと日帰りでパリへ出かけることを思いついた。
なぜ、そんなことを思ったのか、はっきりとは覚えていないが、
「せっかくのヨーロッパ、パリならユーロスターで3時間もあれば行ける。」
そんな程度の考えでしかなかったように思う。
とは言え、当初から計画になかったことで、それも初めてのパリ。
しかも、はっきりとした目的もなく日帰り。
まさに若気の至りとしか言いようのない暴挙だった。
ともあれその日の早朝、ターミナル駅のひとつウォータールー始発のユーロスターに乗りこんだ。
しばらくはロンドン郊外の長閑な風景を眺めていたが、
ドーバー海峡に潜り込むあたりから眠ってしまったらしく
あっという間にパリ北駅に着いたという印象が残っている。
まずはエッフェル塔からパリ市街を俯瞰、
これから行こうとする場所にアタリをつけて、
その後、シャンゼリゼ通り、コンコルド広場と体力に任せてパリの街をそぞろ歩いたのだが、
ヨーロッパの夏は涼しいとはいえ、さすがに疲れてどこかで休息を取りたくなった。
そのとき、コンコルド広場の脇で古風な建物を見つけ、
その佇まいから、それが美術館であることがすぐにわかった。
とりあえず、「どこか座れる場所を」とある展示室に入ったのだが、
その瞬間、円形の壁に沿って、ぐるっと室内を取り巻くように飾られた大きな絵画群に圧倒されてしまった。
すべてがモネの睡蓮で、部屋の中央に置かれたソファに座って眺めると
まるで睡蓮の池の中にいるかのようで、
その時の感動となんともここちよい気分を今でも鮮やかに覚えている。
ずっと前に、ヨーロッパのどこかの美術館にモネの「睡蓮の部屋」があると聞いていたが
偶然に入ったこの場所こそ、その美術館、オランジェリーだったというわけだ。
それ以来、絵画といえばモネ、さらに印象派の作品にも興味を持つこととなり、
印象派の作品を収めたあちこちの美術館、さらには企画展へも出かけるようになった。
さて、「黄昏」といえば、もうひとつ思い出すシーンがあって、
それがこの写真、4年前の秋に白山市の海岸で出会った風景だ。
Sony α99 Vario-Sonnar 24-70㎜ (f/4,1/60sec,ISO125)
夕陽が水平線に沈みこむと同時に雲が真っ赤に染まった。
このとき、海岸には何人もの人がいて、
空が染まった瞬間、あちこちで歓声が上がったことを思うと
この風景を眺めて感動したのは私だけではなかったようだ。
モネの記憶をたどりながら、この黄昏の風景を思い出し、そして、ふと思った。
あの夕焼けは、「モネの目」を通したら、いったいどんな色彩になったのだろうか...と。
なんとなくの選曲。
「追憶」 バーバラ・ストライザンド
Barbra Streisand The way we were
福井県立美術館の近くでお住まいでしたか。
私も30年前に福井に住んでいて
休日には、近くにあったピアというショッピングセンターに
家族連れで出かけました。
どこかですれ違っているかも知れませんね(笑)
chacha○さん
そう。
睡蓮の部屋は感動でした。
「感動」ということば、よく使いますが
あれこそ、正真正銘の感動でした(笑)
オランジェリー、ご存知でしたか。
この偶然に感謝したものです。
絵のことはあまり詳しくありませんが、
「印象派」の画家たちは好きですし、
わからないなりにも
地元の美術館で開かれる
現代美術展や二科展にも行きますよ。
hirorinさん
印象派の画家たちはいろんな影響を受けていると思いますが、
モネはターナーの影響を強く受けたと解説にありました。
モネの黄昏。
一連の睡蓮とは明らかに違いますね。
ただ、被写体の持つ色彩や光をモネ流に描くという点では同じで、
セザンヌはそれを「モネの目」と言ったのかもしれません。
しらさぎ。
いつも空いていますね。
念のためにと指定席を買いますが。
横に人が座った試しがありません(笑)
ふらっと入ったのが、大正解
これも旅の醍醐味!?
歓声が上がる夕景、美しい。
写真の事を書き忘れて居りました。
美しい夕焼け、この前後でどんどん変化するのには、
大きな感動を覚えます。
彼の地独特の景色でもあります。
モネの睡蓮は、背に津、長期休館前の神戸市立博物館で観賞してきましたが、
一見平凡、実は深く心に残るものだと。
それよりも・・・・
福井県立美術館!というのに物凄く心を打たれました!
何せ、三十数年前、近くで住んでいましたから。
付近も変わったことだろうと。
雪で埋まった頃の景色を思い出しました。
美術の大きな流れだったのでしょうね。
この「黄昏」とても鮮やかな色使いで溌溂としていてきれいですね。
モネは、淡いブルーやオレンジやグリーンのイメージがあったのですが、こういう色使いのもあったのですね。
知りませんでした。
福井県立美術館でやっているんですね。
今日、米原駅で「金沢行きしらさぎ」見て、ああ~jurakuさんとこやわあ~って思いました。
中途半端な時間なせいか、割と空いていました。
米原から近いですもんね。
モネの睡蓮‥オランジュリー美術館へ行かれた事があるのですか‥
いいな〜
東から西へ沈む‥一日の睡蓮が見れると聞いてますが‥
80歳で白内障の手術を受けてからの最期の睡蓮もあるそうですね〜〜
四年前の夕暮れ時の一枚
素敵ですね〜〜
jurakuさんは私たちのモネかもしれませんね。
私もたまにフラリと美術館へ入る事があるのですが‥
見たことがある風景が絵になってることがあるのですが‥
素敵な風景だから絵にされるのでしょうね。
同じ風景を見ても‥同じ色の絵はないのでしょうね〜〜
それが楽しいですね。