はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

志賀高原横手山

2006-07-11 23:08:40 | はがき随筆
 芽吹きそめた白樺の林が終わって天界がひらけ、残雪とリフトに景に変わった。雪に絶えた笹原がたわんだままで続く。2100㍍の横手山に降りたって、足もとに雪渓をみおろす。
 空気さわやか清浄。ひんやりと肺腑へ流れる。なんだか「清い」ひとときである。この4、5年、入院、足の神経痛、狭隅角の手術、胆のう摘出とまとめて体は疲弊し切ったので「今ここに……」と感慨深む。背後には美しい山肌の白根山が望めるし、囲繞(いじょう)する山々は私の足もとの高さであるのが快い。今夜は300㍍下って1800㍍の万座に泊まる。
   鹿児島市 東郷久子(71) 2006/7/11 掲載

父の日に思う

2006-07-11 21:52:39 | はがき随筆
 私は先天的に身体に障害を持ち、この世に生を受けました。小学校1年生の時、遠足が行われましたが、どうすることもできません。参加したくて家の中をリュックサックをかるって、あっちに行ったり、こっちに行ったりしていると、父は見るに見かねたのでしょう。「よし、遠足に行くぞ。準備ばせえ」と、言って私をおぶって現場まで歩いて連れて行ってくれました。その時の父の背中の大きかったこと、温かかったことは今も忘れることはありません。その父は平成8年に他界しました。父の日が来る度に、あの優しかった父の姿を思い出し涙するのです。
   鹿児島市 川端清一郎(59)  2006/7/9 掲載