腰椎圧迫骨折患者のX線写真を撮った。「まだ痛むね」と私。「まだ炊事をする時に、お尻の上が痛かね」と、お年寄りが言う。「奥さんの手伝いをやっちょっと、良か父ちゃんじゃが」と私。その直後、お年寄りの顔が悲しみの表情へと変わった。「家内は8カ月前に死んだ。医者からは男寡は辛かで、おはんが先に逝けば良かったな」と言われた由。励ますつもりの声掛けが、再びお年寄りを深い悲しみの淵へと誘い込んでしまった。「この人は心の底から奥さんのことを思う、心優しい人なのだ」と感じた瞬間に、お年寄りの双肩を抱きしめていた。
鹿児島市 吉松幸夫(48) 2006/7/22 掲載
鹿児島市 吉松幸夫(48) 2006/7/22 掲載