はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

生きている伝説

2006-10-15 17:04:28 | はがき随筆
 種子島の東側の海岸に馬立(魔立)の岩屋という洞穴がある。関東から来た妻の友人を案内した。遠目では平凡な洞穴に見えるが、近づいて見ると意外と大きな口をあけており、中は不気味に薄暗い。その友人は突然「入れない」と言い、さっさと車に戻ってしまった。十代島主幡時がこの洞穴で首をはねられたのではないか、という伝説は伝えてなかったのだが「入ってはいけない」という考えが強く働いたそうだ。帰ってから史跡の本を調べたら、その日は幡時の命日8月17日だった。幡時の霊が彼女に「来るな」と告げたのだろうか……。
   西之表市 武田静瞭(70) 2003/10/15 掲載