はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

熊野へ

2007-07-04 18:38:44 | アカショウビンのつぶやき















七越から見た一大パノラマ、幾重にも重なる山並みと熊野川


その名も川湯温泉、河原を掘った珍しい温泉。傍らを流れる水は冷たいのに川底の石からは温かみが伝わってくる不思議な大塔川でした。


東京を発つまで体調が心配だったMさん、すっかり元気に


道端には「ささゆり」が楚々と咲いていました

 
 11年前に出会った「蔕の会」の友人6人が久しぶりに熊野に集い、世界遺産の熊野古道をチョットだけ歩いてきました。
「蔕の会」ちょっと怪しげな… とお思いになるかも知れませんが、そう、どこに行っても怪しまれ「どういうグループですか」と聞かれます。
年齢は70代から40代まで様々なので同窓会ではなさそうだし、お国言葉も北から南まで色んな言葉が飛び交い、共通点があるようでないような…と。
 
 私たちは強い絆で結ばれた、その名も「蔕の会」。
 配偶者を失うという大きな試練の中で出会いました。ショックと寂しさ哀しみから立ち直るために支援する「ほほえみネットワーク」の「グリーフワークセミナー」の同期生なのです。

 11年前、北は東京、南は鹿児島から、当時東京都板橋区にあった「ほほえみネットワーク」の小さな事務所に集まりました。愛する人の遺影を胸に、同じ辛い体験をした友人と思いのたけを語り合い共に涙しました。5日間の集中セミナーのプログラムで立ち直ったと言うよりも、セミナー終了後、同期会と称して度々集まり、そこで絆が強められたように思います。
 浜松、屋久島、開田高原、伊豆、京都、箱根、沖縄、そして遂に中国と海外まで楽しい旅のプラン続き、今年の旅は、名古屋と熊野に半分づつ住むメンバーのお誘いで、世界遺産熊野古道になりました。

 素晴らしい旅を満喫しました。
 熊野古道は祈りの参詣道と言われますが、深い山々の懐に抱かれた奥熊野の旅は身も心もリフレッシュされ、いつものように元気をもらって帰ってきました。
行きは伊丹空港で迎えてくれた友人と新宮、川湯温泉まで素晴らしいドライブ、帰りは紀伊半島を一周して名古屋空港セントレアから帰りました。
 かつて夫が訪ねた「吉野熊野国立公園」など、素通りでしたがちょっぴり味わうこともできました。

逃げろ逃げろ

2007-07-04 15:49:42 | はがき随筆
 歩道上で女の子が泣いていた。私は「大丈夫」と声をかけた。女の子はきょとんとした表情を見せた後、より強く泣き出し逃げるように走り去った。子供を取り巻く事件の多い現代社会。親は子に「変なおじさんを見たら逃げろ」と教えているのか。厚意で声掛けをしようと思っても難しい世の中になった。親はもちろん地域の大人からも子供は大切に丁寧に取り扱われていた時代もあった。「子は宝。皆で大切にそして厳しく」は死語になってしまったのか。世の中が変わっても、子供を愛する心だけは失いたくはない、と女の子の後ろ姿を眺めながら思った。
   鹿児島市 吉松幸夫(49)2007/7/4 毎日新聞鹿児島版掲載