はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

梅雨の思い出

2007-07-11 08:13:25 | はがき随筆
 それはもう随分以前の出来事ではあるけれども毎年、梅雨の雨の日になると、つい昨日のことのように思い出されて胸が熱くなる。大雨の日の夕方であった。法事を済ませて帰宅の途中、前方のタイヤがパンクしてどうにもならない。車を道路の端に止め法衣を着たまま傘をさして思案していた。衣を脱いでスペアタイヤに替えようと意を決したその時、ダンプが止まり運ちゃんが声をかけた。降りてきて「どら」と一言。降りしきる雨の中、タイヤを取り換えてくれてさっさと立ち去ってしまった。あのときの運ちゃんの後ろ姿は菩薩様に思えて合掌した。
   志布志市 一木法明(71) 2007/7/11 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はkenさんからお借りしました。