初夏の風を人はわざわざ薫風と呼び愛でる。ところが、これを疎んじる者もいる。
風の感触は人並みに良い心地なのだが、一度鼻に達すると、くしゃみが止まらぬ。かゆいところを一度かき出すと止まらなくなるように。額にはうっすらと汗にじませ、目をウサギのように真っ赤にし、涙は牛のよだれのようにべたつき、鼻水は蛇口が壊れた水道よろしく間断なく落ちる。耳の穴もかゆくなる。
鼻のむずがゆさは、芥川の「鼻」の禅智内供もかくありなんと妙に親近感を覚える。
やがて、この厄介な現象も梅雨の到来とともに消える。
肝付町 吉井三男(66) 2008/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載
風の感触は人並みに良い心地なのだが、一度鼻に達すると、くしゃみが止まらぬ。かゆいところを一度かき出すと止まらなくなるように。額にはうっすらと汗にじませ、目をウサギのように真っ赤にし、涙は牛のよだれのようにべたつき、鼻水は蛇口が壊れた水道よろしく間断なく落ちる。耳の穴もかゆくなる。
鼻のむずがゆさは、芥川の「鼻」の禅智内供もかくありなんと妙に親近感を覚える。
やがて、この厄介な現象も梅雨の到来とともに消える。
肝付町 吉井三男(66) 2008/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載