はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

素晴らしい生命

2008-07-30 22:45:41 | はがき随筆
 7月に入り我が家の玄関が再びにぎやかになりうれしい。ツバメのひなが5羽かえったのだ。
 3月下旬、私が待ち望んでいた(たぶん)昨年のツバメが再来し、6月までの間に7羽の大家族となり巣立った。しかし数日後、また1羽のツバメがやってきて住み着いたので毎日、不思議に思っていた矢先のこと。
 昨年の夏採った種をまいて育てた朝顔やヒマワリ、ホウセンカなどが今きれいに咲いている。こうして生命を次世代につないでゆくのを見るにつけ感動する。体調不良の今の私にも生きる気力のようなものがふつふつと沸いてくる。
   鹿屋市 田中京子(57) 2008/7/27 毎日新聞鹿児島版掲載 特集版-4

インタビュー

2008-07-30 22:37:51 | はがき随筆
 5月31日。私のはがき随筆「60歳の恋人」がMBCラジオの「二見いすずの土曜の朝は」という番組で放送された。朗読と私へのインタビューだった。
 本番当日、電話の前に腰掛けてお呼びを待つ。朗読が終わるとすぐインタビューである。受話器をしっかり耳に当て白い壁と向き合い、顔の見えない二見さんとの会話となった。少しあがり気味の私をうまくリードされる話術はさすがである。お陰で順調にいった。いつか機会が与えられたら、白い壁ではなく二見さんと直接対話したいものだ。
 二見さんお世話になりました。
   鹿児島市 川端清一郎(61) 2008/7/27 毎日新聞鹿児島版掲載 特集版-3

長女の受賞

2008-07-30 22:31:17 | はがき随筆
 「お母さん、入選したよ」と長女から電話があって、しばらくしてある季刊誌が送られてきた。
 「第10回ペイントクラフト賞発表!」とある。掲載されている長女の絵はバラの花をモチーフにしたトールペイントで、ピンクのバラの濃淡が美しい。
 きれい過ぎる感じで、評価されにくいのではと思われる絵だが技術賞を頂いている。父親譲りの細やかな筆づかいだ。お父さんがいてはったら、どんなに喜びはるか……と言いつつ泣けてくる。電話の向こうで長女も涙声だ。
 教える身ながら果敢に挑戦したことに拍手を送りたい。
   霧島市 秋峯いくよ(68) 2008/7/27 毎日新聞鹿児島版掲載 特集版-2

シンニョンクロ

2008-07-30 22:20:36 | はがき随筆
 アユ掛け針にシンニョンクロが掛かった。懐かしいやら驚くやら。「よくぞ達者で……」と絶句。
 米ノ津川にごまんといたシンニョンクロは、私が中1の時のアユの放流に交じったカマツカに席巻された。餌が共通で、石の陰で餌を待つ魚と、川底で自在に捕食する魚とは、後者が増殖するのももっともであった。
 背は黒く、黄色の腹の中央に丸い吸盤が付いて、ひょうきんさたっぷりの魚だ。木綿糸釣りや素手のつかみ取りと、小学生時代の格好の遊び相手。絶滅の危機にあるシンニョンクロと、たそがれた自分が重なる。
   出水市 道田道範(58) 2007/7/27 毎日新聞鹿児島版掲載 特集版-1

アイタタタッ

2008-07-30 22:11:46 | はがき随筆
 多少の雨でも朝の散歩には出かける。細い山道が終わった所で妻と別れてダラダラと坂を下る。「雨だから滑らないよう気をつけて」の妻の言葉を聞いたはずなのに、側溝のグレーチングに左足を取られ転倒した。
 「アイタタタッ」左ひざをさすりながら右足でピョンピョン跳ねる。ズボンをめくってみると皮がむけ赤紫に腫れ上がり血もにじんでいる。愛用のつえは役にたったかどうか怪しいものだ。若いころなら柔道のお陰でとっさに受け身も出たのに。齢を重ねる現実を実感した。
 明日からは「何事にも用心深く慎重に」が我が座右の銘。
   霧島市 久野茂樹(58) 2008/7/26 毎日新聞鹿児島版掲載