はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

涙腺

2008-07-05 13:09:04 | はがき随筆
 雨雲の広がる空を気にしながら病院へ。今日は夫の3ヶ月検診の日だ。大病から1年半になろうとしている。2人で1人と寄り添う生活にも終わりが来ることを突然知らされた。夫の病で人生観が変わった。日々の暮らしに感謝する。待合室は混み合い、白衣の人も小走りだ。検査が済みほっとする。予約時間はとうに過ぎ、不安を募らせていると名前を呼ばれた。先生の笑顔と「今のところ良好です」の言葉に、全身の力が抜ける。
 遅い昼食を取り、買い物を済ませ帰路につく。夫の「ありがとう」の言葉に、なぜかじんときて思わず涙腺がゆるんだ。
   出水市 井尻清子(58) 2008/7/5 毎日新聞鹿児島版掲載

厳しい自然

2008-07-05 12:49:05 | はがき随筆
 これまでアゲハの幼虫の食害で、盆栽のヤエクチナシの白い花はほとんで楽しめなかった。今年は多くの花がじっくり眺められ、最高にうれしい。
 かつてオニヤンマ、シオカラトンボ、キアゲハやクロアゲハ、アオスジアゲハなど庭を存分の飛び回り、昆虫の楽園を自負したころが懐かしく思い出される。最近、幸いに野菜作りや鉢替えの度に甲虫の幼虫に出会い、遠くのアカショウビンの元気な鳴き声に楽しみを覚える。
 だが緑と花いっぱいの庭にも昆虫の姿が激減し、厳しい環境には心の痛みを覚える。地球は人間だけのものではない。
   薩摩川内市 下市良幸(78) 2008/7/4
 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はkiraraさん