はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

双子ちゃん

2008-07-12 13:03:29 | 女の気持ち/男の気持ち
 長男の第2子は、双子ちゃん姉妹です。
 顔はうり二つで服もおそろい、不思議と仕草までそっくりです。名前も「桃」「柚」だからややこしいことこの上ありません。最近は言葉も増えて、双子の漫才コンビのまねまでして、私たちから大うけをとっています。
 「今度は双子らしい」と息子に聞かされた3年前、自分も二卵性の双子だった私は妙な気持ちになりました。
 半世紀前はミルクも十分無い時代で、私も少なからず苦労しました。テレビの歌番組で「ザ・ピーナッツ」が活躍していたころも、私は負い目を感じていましたが、朝のドラマ「ふたりっ子」を見て吹っ切れました。外見の興味だけでなく、人格までしっから描いていたように思えたからです。
 最近、私は双子ちゃんウォッチングにはまっています。存在感があってサプライズの連続。「桃」が眠ると「柚」も眠る。体にかすり傷を作る場所まで同じ。離れてお絵かきしても中身は一緒。
 思えば、他の同級生より初孫が遅かった私は「孫の守なんて」とうそぶいていました。でも、今では「孫さまさま」の体です。
 双子ちゃんが、末は歌手か漫才コンビかと、途方もない夢を見ている爺がここにいます。
   鹿屋市 上村 泉(67) 2008/7/12 毎日新聞鹿児島版【男の気持ち】掲載
 

オニユリ通り

2008-07-12 07:32:46 | はがき随筆




 いま種子島で野の道を行くとあちこちでオニユリに出合う。市街地を離れて車でほんの5分も行ったところに、まるで「オニユリ通り」とでも名付けたくなるような道に出る。
 西之表市は坂が多い。その場所も坂を上り詰めたところにある。毎年オニユリの咲くのを楽しみにしているカミさん。この日も買い物を済ませた帰り道、雨がぱらついている中、車を降りてカメラを構えた。通りかかった車の中から運転していた女性が「きれいですね」と声をかけてきた。「見事でしょう」。カミさんは自分が育てたような顔をして言葉を返していた。
   西之表市 武田静瞭(71) 2008/7/11 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真は武田さんより
タネガシマ発-ネタガマシ日記


あと1年

2008-07-12 07:25:50 | はがき随筆
 末の息子は就職して名古屋にいる。1年ぶりの帰省は昨年の2月だった。うれしくて、迎えの車の中でも私の顔はほころんでいた。「お母さん、僕末っ子だからかわいいでしょう」「あたり前じゃない。どうしたの」「車が欲しいから○百万、出してもらえないかなあ」
 年金暮らしの親にお金の無心とは! 車ごと3㍍位ぶっ飛んだ気がした。「大学までが親の努め。返済計画を書いてみて」
 名古屋から封書が届く。ボーナス併用の24回払いで2年がかり。甘えを捨てた大人の自覚が読み取れた。自立しなくちゃね。
 1年が過ぎ、支払いは順調。
   いちき串木野市 奥吉志代子(59) 2008/7/10 毎日新聞鹿児島版掲載